映画鑑賞感想文

濫観っていうか、乱観っていうか・・・ポリシーないですけど(^^;

『エデンより彼方に』 '02 米

2006-05-09 16:48:36 | Weblog
監督★トッド・ヘインズ
キャスト★ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド、デニス・ヘイスバート

【ストーリー】
1950年代、ブルジョア家庭の良き妻良き母親の見本のようなキャシーは、何不自由なく幸せに暮らしていた。だが、夫にはキャシーにも世間にも隠している秘密があった。彼は同性愛者だったのだ。キャシーにそれを知られた夫は、なんとか自分を世間の価値観にあわせようと努力する。キャシーもそれに協力し、辛抱強く献身的に励ます。だが、それによって夫はさらに追い詰められていく。そんなおり、キャシーは黒人の庭師レイモンドとの時間に安らぎを見出す。レイモンドもまたキャシーに惹かれていく。だが世間は二人の関係を許さなかった。白人社会、黒人社会の双方から強いバッシングを受け、二人は遠ざかっていくしかなかった。

【感想】
 映像美を追求するのか、社会テーマを追求するのか、どちらかにした方がよかったんじゃないかなぁというのが、最初の正直な感想かなぁ。とにかく『色』それも原色系の色の組み合わせに拘った『鮮やかな色の映像美』が一つの大きなモチーフなんだろうとは素人目にも判るんだけど、それと人種差別や性嗜好差別というマイノリティー問題を組み合わせると、どうなんだろうって。二兎を追うものは・・・になっちゃったかなぁ。
 人物の作り方も映像美的で、ジュリアン・ムーア演じるキャシーも、デニス・ヘイスバート演じるレイモンドも、人格が彫刻のように美しいの。立派なの、立派すぎるの。それがねぇ・・・また、逆に物足りなさになる気がする。役者さんが巧いだけに、逆に欠けたところが際立って見えるのかもしれない。
 好みの問題かもしれないけど、キャシーという出来すぎの妻を、もっともっと叩きのめして地獄に落として、そこに出口を見せる、つまりは有り得ないレイモンドとの道を選ばせるみたいなのが、わたしは良かったな(爆)。キャシーって、本当に出来すぎた女でしょ。ダンナが同性愛者だと知って、しかも情事の現場を目撃するという形で知って、それでもダンナを受け入れて「一緒にやり直しましょう、あなた頑張ってね」っていうのは、もう出来た女房を通り越してウザイでしょ。その上、50年代アメリカのブルジョワ階級にいて、まったく人種差別意識がない。ほんとに立派過ぎて嫌味なんだよね。
 だからまずは、彼女が良い人間でいられたのは、彼女が多数派社会の中の成功者だからなんだということを、彼女自身が嫌というほど思い知る必要があると思うのね。夫を失い、友達を失い、お金を失い、社会的地位を失い、それでも彼女は善い人でいられるのか。タイトルに聖書のモチーフを使ったのなら、いっそ彼女をヨブのように試練漬けにするくらいのことはして欲しかった。その上で、彼女に何かを見つけさせて欲しかった。ジュリアン・ムーアなら、それくらいの芝居は出来る人だしね。

 ちなみに、わたしは『エデンより彼方』というタイトルを、彼女がそれまでいた場所を「夢見心地のエデン」だと解してたんだけど、一般的に説明されているのは「理想の世界としてのエデン」なのね。だから、彼女はエデンの園にいたつもりだったけど、実はそれは幻だったって。だけど、自分で言うのもなんだけど、内容から見ても、わたしの解釈の方がよくない?世の中の暗部を知らずに無知だからこそ社会に庇護されていたキャシーの生活がエデンなんだと思う。だけど、彼女が自分で考え行動した(りんごを食べた)ら、彼女はそのエデンの園にはいられなくなった。様々な苦や悪が溢れる世界で自分の力で生きていかなくてはならなくなった。でも、そこで見つける真実こそが、きっと本当の真実なんだろう・・・ってね。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。