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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『めぐり逢わせのお弁当』 (2013) / インド・フランス・ドイツ

2014-09-29 | 中国・香港・アジア映画、その他の映画


原題: Dabba
監督: リテーシュ・バトラ
出演: イルファン・カーン 、ニムラト・カウル 、ナワーズッディーン・シッディーキー
鑑賞劇場: アートフォーラム(盛岡市)

公式サイトはこちら。


大都市ムンバイのオフィス街では、昼時にダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人が、慌ただしく複数の弁当箱を配って歩く。ある日、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕をふるった4段重ねの弁当が、男やもめのサージャンのもとに誤って届けられる。イラは空っぽになって戻ってきた弁当箱を見て喜ぶが、その弁当を食べたはずの夫からは何も反応がない。不審に思ったイラは翌日、弁当に手紙を忍ばせるが……(映画.comより)


何故盛岡で鑑賞? なんですけど、所用で出かけた時に空き時間で観てきました。銀座だと混んでて行き辛いのでこの際にと思って。
アートフォーラムさんは椅子がとてもいいですね。シアター内部もとても綺麗に保たれています。
映画を愛する盛岡の人たちが、とても大事にしている映画館といった雰囲気。




エラー率わずか0.00000625%、驚異のインド式昼食配達システム「ダッバーワーラー」

まず驚いたことは「弁当の配達」って職業がちゃんと存在していること。ダッバーワーラーというそうです。日本だと弁当の配達は、お弁当屋さんに注文してそれを時間に届けてもらうってことだけど、インドでは何と自宅で作った弁当を職場に配達してくれる!これはすごいよ。弁当って自分で作ったら自分で持ってくもんじゃないだろうか・・・ と思ってはいけないらしい(笑) インドの弁当箱は5段重ねくらいあって、豪華だけど重そうだし場所も取る。インドの通勤電車も超満員で、みんなが弁当を持って乗ったら大変なことになるからそんな商売が生まれたのだろうか。
自宅で作った弁当を、配偶者の職場に届けてもらったり、あるいは仕出し弁当屋から職場に配達してもらう方法もあるようだけど、とにかくおびただしい数の弁当が街から回収され(牛乳屋さんが空き瓶を回収しにくるようなイメージ?)、それが到着場所によって分けられ、駅にまとめられ、電車に載せられてちゃんと職場に届く。まるで郵便とか宅配便を見ているようだけど、荷札も伝票も宛先も書いてある訳じゃないみたい。弁当を包む袋だけが見分けるサインだとしたら、寸分の配達間違いを出さないようにするなんて至難の業だと思うのに、それって一体どんなシステムなんだろう? 摩訶不思議インドよもやま話である。

そんなシステムがまさか映画になってしまうなんて、これもまた驚きなんだけど、お弁当をラブレター的に考えてそこから淡い恋心に発展させてしまうアイデアがいい。サージャンも普段食べている仕出し屋の弁当とは味が違う、心がこもっている弁当だということに気が付き、イラもどうやらこの弁当は夫ではない人の元に行っているようだと気が付き、そこから始まる2人の手紙でのやりとり。
お互いに顔も知らないまま、いつの間にか素性を打ち明ける間柄になっていく。

心が通じ合わない夫婦ほど不幸なものはないし、パートナーに疑念を抱かなくてはいけないまま暮らすほど辛いこともない。ふとしたことから夫への不信感を抱いてしまったイラにとって、自分の弁当が届いていないのにそれすら気にかけていない夫というのは果たしてどんな存在なんだろうかと考えざるを得ない。毎日きちんと一緒に暮らしているようで、心はお互い遠く離れたまま。真意が定かでない相手に愛情を保とうとする気力はなくなっていく。

よく言われるのは「愛の反対は無関心」だけど、イラの家庭内とは逆に、サージャンとイラの互いの関心は強まっていく。人を好きになるきっかけはたぶん互いへの興味だったり関心だから、顔も知らない、素性もわからない人でも好意を寄せることができるのだろう。イラの想いはどんどん募るのに対して、サージャンは自分の経験から非常に慎重だ。そしてイラのこともそうだが、孤児出身の部下であるシャイクの件でもとても冷静に行動している。シャイクがどんどん積極的に相手に踏み込んでいけば行くほど逆に戸惑うサージャン。過去の出来事から目をそらすようにひっそりと過ごしてきたサージャンにとって、シャイクやイラの行動力だったり若さだったりは眩しすぎた。それでも次第にそれまでの自分を変えようとサージャン自身が変化していく様は、バイタリティを取り戻していくかのようだ。

そして物語は意外な結末に向かっていく。サージャンと相対するかのようにイラもまた大きな決断をしていく。先のことはわからない、幸せになれるかどうか保障もないけど、それでもここではないどこかに向かって足を踏み出す勇気。見えない影に向かって歩き出す様子は、従来明るくハッピーなロングダンスの延長続きでいささか食傷気味のボリウッドとは全く異なる解釈だ。この不確定要素は、インド映画ではなくむしろフランス映画のようなシュールさを伴って終了する。またいつものインド映画?と侮ることなかれ、この結末は多くの人にいろんな問いかけをして行っている。


★★★★ 4/5点






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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (margot2005)
2014-10-05 20:59:18
とても素敵な映画でした。
これほどインド映画ぽくないドラマは初めてかと思いますね。

>まず驚いたことは「弁当の配達」って職業がちゃんと存在していること...
全く同感です!
margot2005さん (rose_chocolat)
2014-10-07 07:44:29
そうそう。いつものインド映画じゃなかったですね。
こういう作品が増えてほしいです。
元気かな^-^ (latifa)
2015-03-16 18:21:32
roseさん、こんにちは。
今日は雨ですが、それほど厳しい寒さは無いみたい・・・
早く春が来て欲しいな。
花粉はイヤだけど。

これ、レンタル開始になったので早速借りて来ました。
全体的な雰囲気は、かなりツボで、賑やかなインドじゃない、しっとりしたこんな映画も作るんだなあーという嬉しさ?もありました。
latifaさん (rose_chocolat)
2015-03-21 23:35:21
元気ですよ~
忙しすぎてブログ書けないw
4月は更に忙しいーー

ボリウッドっぽくないインド映画はすごい歓迎です。
もっとできないかなと思いますよ。

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