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『氷の花火 山口小夜子』 (2015) / 日本

2015-11-13 | 邦画(か行・さ行)


監督: 松本貴子
出演: 山口小夜子 、ザンドラ・ローズ 、下村一喜 、セルジュ・ルタンス 、高田賢三 、高橋靖子 、富樫トコ 、富川栄 、松島花 、丸山敬太 、山本寛斎 他

映画「氷の花火~山口小夜子」オフィシャルサイト

1970年代からファッションモデルとして世界的に活躍し、「日本人の美しさ」を世界に広めた山口小夜子のドキュメンタリー。2007年に57歳で急逝するまで、モデルだけでなく、映画、演劇、ダンスパフォーマンス、衣装デザインなど、さまざまなジャンルで常に時代の先端を走り続けた山口の今なお多くの謎に包まれた人生を、彼女と親交のあった人たちの証言、本人の貴重な映像群により紐解いていく。(映画.comより)





これ予告で出てたのを見て、絶対行かなきゃいけないとって思いました。 山口小夜子さんの映画って!
山口小夜子さんは私が子どもの頃に活躍されてたという印象で、70年代に資生堂のCMに必ず彼女がいた記憶がある。資生堂のCMと言えば、私の中では夏目雅子さんと山口小夜子さん。
母がずっと資生堂の化粧品を使っていて、リバイタルとかクインテスという言葉が懐かしい。あのクリームの香り。幼いころに母のドレッサーを見て、内緒で手に取って、その香りの強烈さに「大人ってこんなに強い匂いを付けるのか」と思ったあの日が甦る。

山口小夜子 - Wikipedia


現役モデルの頃もとてもミステリアスな印象しかなくて、一体この人ってどんな人?と、昔はネットなどないので調べることもできず、彼女はいつの間にかモデルを退いていた。そして復活したと思ったら57歳での急逝。最後まで素顔を一般に明かさなかった人だなあ・・・と思っていた。
モデルを休んでいた期間のこともわかったけど、前衛的な演劇やパフォーマンスのことは当時は限られた人にしか知られなかったと思う。それを考えると今はSNSがあるので、人の行動が良きにつけ悪しきにつけ、瞬く間に拡散されていくインプレッションは凄いけど。

若い頃の、まだモデルになる前の話から始まって、やはりこの人は天から与えられし才能を生かすためにこの世に生を受けた人なのだなと確信する。高校生で、当時は珍しかったであろう読者モデルのスカウトを受け、その当時の写真も全く新鮮で色褪せてなく、そこから専門学校での卒業写真に行っても一際輝きを放っていた小夜子さん。栴檀は双葉より芳し、である。

モデルのお仕事をしながら、いやたぶんその前から、彼女の中では「自分を如何にして表現するか」がずっと心の中にあり、そしてそれが生涯を通して彼女の真理となっていった。自分を表現する道としてモデルを選ぶ、モデルであるからには服飾のことをわかりたい、だから専門的に学ぶ。彼女の論理は明快であり一直線だ。目的を捉えたらそこに向かってひたすら走っていく。

そしてひた走りした先が世界的なモデルとしての大ブレイクで、そこから押しも押されぬスーパーモデル時代が到来する。小夜子さんほど鮮烈な印象を世界中に残す日本人モデルは、後にも先にも出ないような気がする。それは彼女のオリエンタル的なイメージが浸透してしまったというのもあるのだろうけど、それ以上に重要なことは、そのスタイルは「小夜子さんがとことん自分を突き詰めていった結果」であることだろう。戦略としての売り出し方も当然あっただろうけど、「黒髪おかっぱ」は彼女が前からやっていたことで、後から付け足したものではないということ。その彼女のスタイルが圧倒的に印象深く残り、支持された。誰も真似できないことをする、唯一無二の自分を造る、そこが彼女の原点である。

ドキュメンタリー映画なので当然として大部分はいい面を取り上げているが、それでもところどころトップモデルであることの苦悩も垣間見える。「美しいことは、苦しいこと」・・・  美しければ憧れの対象にもなる、しかしそれを維持しながら、自分自身の表現を追求することの難しさも当然あったはず。ずっと仕事をしてきた山本寛斎との決別の経緯も少し語られるが、名声よりもあくまで自分の中の「心の声」に従いたいという彼女の気質が見えてくる。

自己実現に関してはしっかりとした一線がある一方で、周囲の話からは気さくな人柄も見えてくる。昔から大事にしてきた人や物、数々の服飾のコレクションについてや、若い世代との積極的な交流、新しい分野への興味も紹介され、コレクションやCMではクールな印象がメインだった小夜子さんの一面が人間的でほっこりとしてくる。今のように、隣に歩いている人が媒体にすぐ出るような時代とは違って、昔はモデルは世間から隔離したようなイメージを持たせていたけど、そうではない自分も小夜子さんは見せたかったようにも思えてくる。

50代で資生堂のモデルに復帰した姿は、若い頃のような気負いが取れてふんわりとしていた。表現者としての姿勢を貫き、仕事に対しても徹底的に「山口小夜子」であり続け、走った先に、肩に入った力が抜けていい感じの齢の重ね方になっていったのが何よりである。彼女のコレクションを見ればわかるように、とことんモデルの仕事を愛し、そして服飾を愛した、ある意味情熱的な一面も、後に続く人たちから憧れ慕われる理由だろう。「小夜子再生プロジェクト」をしたいという声が出てくるのも自然なのかもしれない。松島花さんに小夜子さんの魂が乗り移った瞬間をしっかりとスクリーンで観ることができるが、それは単に人を見て研究するだけではなく、そこから自分自身としてどう昇華していくかができたからのプロジェクト成功だったと思う。慎みや研鑽を忘れないモデルや表現者を久しく媒体で見ていないこの頃、小夜子さんの足跡は大切なことであり、時代を超えて残せるものであることを改めて思う。人の生き方は何を突き詰めていくかが勝負であること、そしてそれを貫き通した小夜子さん。もっと生きていただきたかった。


★★★★☆ 4.5/5点







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2 Comments

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本当に・・・ (ひろちゃん)
2015-12-11 13:55:23
久しぶりのコメントですみません(汗)

ところで、山口小夜子さんって、お亡くなりになってたんですか!
それさえも知らなかった・・・

私より上の世代のかたですが
私の世代でも、強烈なイメージで
残っているかたです
そして、容姿と同じで、プライベートも
ミステリアスなかたでしたよね。。。

こういう素敵な女性ですから、年老いてからの人生も見たかったです・・・

映画は堪能できたようですね♪
ひろちゃん (rose_chocolat)
2015-12-13 16:45:21
ひさしぶり~
すっかりあちらの世界の方になっていてびっくりしました!

そうなんですよね。結構前に亡くなられてます。
美人薄命と言いますが、まだお若かったですよね。
小夜子さんの普段の姿が見られて、いい作品でした。

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