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【第二回 新・午前十時の映画祭】『オズの魔法使』 (1939) / アメリカ

2014-04-09 | 洋画(あ行)


原題: Wizard of Oz
監督: ビクター・フレミング
出演: ジュディ・ガーランド 、フランク・モーガン 、レイ・ボルジャー 、バート・ラー 、ジャック・ヘイリー 、ビリー・バーク 、マーガレット・ハミルトン 、テリー(犬)

【第二回 新・午前十時の映画祭】『オズの魔法使』 ページはこちら。


カンサスの農場に住む少女ドロシー(ジュディ・ガーランド)はある日愛犬トトが近所のミス・グルチからいじめられたといって泣きながら帰ってきたが、誰も相手にならないので、トトと家出して、田舎道を歩いていると家出を見破った占師マーヴェル(フランク・モーガン)から伯母さんが心配して病気になったといわれて、家へ帰ると、折から大龍巻が襲来して農場は大騒ぎ、こわくなってベッドにうつぶせになっていたところを、風で外れた窓が彼女の頭をしたたか打った。(映画.comより)

おなじみの『オズの魔法使』、午前十時でやってきたので行ってみました。
普段あまり古すぎる作品って観ないんですが、興味を惹かれたものはチェックしてます。今回のこれはやっぱりジュディ・ガーランドへの興味に尽きますね。彼女の作品は『スタア誕生』だけは鑑賞していて、その時中学生だったんだけどこの映画の持つ重みっていうのが伝わって来たのを覚えています。小さいころは知らなかった彼女の人生、生涯の暗部を知るにつけ、機会があったら作品をちゃんと観てみたいと思ってまして。絶好のチャンスですね。

ジュディ・ガーランド wiki

公開当時大ブレイクして揺るがない名声を築いたジュディ。しかしながらMGMと契約したのが彼女の人生を良くも悪くも決めてしまったのでしょう。13歳にして映画の裏の世界、キャスティング・カウチ(プロデューサーとベッドを共にした女優に役を与えること)の意味を知り、さらにはダイエットのためにアンフェタミン(覚せい剤)に加えてセコナル(睡眠薬)まで経験させられてしまっていた彼女は、スクリーンからは到底窺い知れない闇の部分を持つ少女だった。果たしてその陰の部分がどんなことになっているのかそれを観てみたかった。

映画自体はよく知られている通り、ファンタジーの草分け的存在。現実としてのカンサスのシーンがセピア色なのに対し、夢の国のオズの部分は特に色彩豊かに見える。
マンチキン人たちがあふれてくるシーン、一瞬嘘かと思ったけど全員小人症なんですね。このために世界中から小人症の芸人たちが集められたそうで、だから演技もそつがなく整合性が取れているのがすごい試み。
昔からグリム童話なんかでも、ほのぼのとしたシーンだけじゃなくてオカルト的な、寓意的な要素もありますが、どことなくファンタジーのなかにも全てを信じきれない雰囲気があるのも、そういう謎解き要素があるからでしょうか。このあたりのところは詳しい人に任せるとして。

ジュディの様子ですが、もちろん映画内ではオズの国で目的を果たそうとするけなげな少女そのものなんですが、
「『オズの魔法使』を含む、すべてのMGMミュージカルでジュディは元気一杯で歌い踊っているように見えるが、実は覚醒剤の使用により「ハイ」の状態で歌っていた。」(Wikipediaから)ということなんですね。ちょっと信じがたい映像なんですがそれが現実だったんでしょうか。
覚せい剤も睡眠薬も、その害をわからないままハリウッド側が俳優たちに使わせていたということで、今読むと胸が痛みます。それがもとでジュディの人生は大きく狂ってしまったわけで、何も知らぬまま薬漬けにされた人生をどうしてくれるのかと言いたかったのかもしれません。
『スタア誕生』での彼女は成長して、人気女優ならではの苦悩、愛に敗れる苦しみを演じていましたが、その様子なんかも今思えば、この幼いころからの薬物常習が影響していたのでしょう。そんなことを考えながら観ていました。

"Discover your courage"
"Follow your heart"
などのスローガンに彩られた本作ですが、製作した大人たちの思惑にまみれてしまったというのが本当のところでしょうか。それでも当時は大ヒットした訳で、夢を作り上げる代償として俳優たちが犠牲になったとも言える。

有名なセリフ、"There is no place like home..." も本当に皮肉に聞こえてしまう。オズに行く前と帰ってきた後のカンザスのシーンがセピア色なのは、現実はしんどいことしかないのでせめて映画の中では夢を見ましょうという宣伝に見えなくもない。そして彼女の実人生の悲劇を暗示しているようでもある。俳優ではなく夢を売らない時間、プライベートの私生活の空しさはその後人々の知るところとなりますが、時を経て隠された真相を知るとより一層本作は悲劇的にも感じる。いろいろな出来事を知ってしまうと、全てが示唆されたような作品に感じてしまうんですが、それもまた映画が生み出した負の側面なのでしょう。


★★★★ 4/5点






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