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『遺体 ~明日への十日間~』 (2012) / 日本

2013-03-05 | 邦画(あ行)


監督: 君塚良一
出演: 西田敏行 、緒形直人 、勝地涼 、國村隼 、酒井若菜 、佐藤浩市 、佐野史郎 、沢村一樹 、志田未来 、筒井道隆 、柳葉敏郎

公式サイトはこちら。



間もなく東日本大震災から2年が経つ今、本作を公開したことはタイミングとして良かったのではないかと思う。この2年間は混乱と同時に日本も大きく変わった。端的に言うとより悪い方にシフトしたとも言うべきだろうか。
計画停電、電力不足、モノ不足、ガソリン不足、そんなことで不安になった2年前。そして毎日が元に戻ったように感じている現在。だが本当にそうなのだろうか。その裏側には、いつの間にか震災などなかったかのように、いろいろなことが仕組まれている。そして被災地の方々の復興は遅々として進まない。あの日の苦しみもきっとまだ薄まってはおられないと思う。

そんな中、本作が2月23日に公開された。石井光太氏のルポルタージュ本を原作とし、『容疑者 室井慎次』や『誰も守ってくれない』の君塚良一監督がメガホンを取った。
映画の舞台は岩手県釜石市、海側の街が津波で壊滅状態になったところである。震災発生から度々外国映画で地震や津波のシーンがあるものが日本公開打ち切りや不可になったりということがあったが、本作には津波のシーンはない代わりに、震災発生から10日間の遺体安置所での出来事が描かれる。




釜石地区の民生委員である相葉常夫(西田敏行)は、葬儀社関連の職についていた経験を生かして、遺体安置所のボランティアとなった。次から次へと運びこまれてくる遺体を前に途方に暮れる関係者に対して、彼は遺体への接し方を教示する。「これは死体ではない、『ご遺体』だから」と諭す彼は必ず、「遺体であっても生きている人と同じように接する」ことを実行していく。


正直な所、実際の遺体安置所の方が恐らくもっと殺伐としていただろうし、携わる方々の側も様々な想いが去来していたはずである。震災発生から10日間と言えば余裕もなく、街の様子や室内ももっと荒廃していたはずだし、登場人物たちだって映画的ではなかったはずだ。怒号や諍い、絶望、慟哭、そんなものが飛び交う光景だったのかもしれない。綺麗事だけではなかったかもしれない。
そう言われることを承知で本作を作ったとしたならば、それはその混乱の中でも交わされた「優しさ」を伝えたかったに他ならない。そういう意味で西田敏行を主役に据えたのは成功している。彼の持つ独特の語り口調が本作には必要だった。彼のモットーである「生きている人と同じように接する」ことこそ、津波で流された死者にとって最も納得のいく言葉なのだろう。 ある日突然、思いもよらなかった日常の中で死を義務付けられてしまった人々の無念を鎮めたい、そして人としての尊厳を取り戻してあげたい。そんなひたむきな相葉の活動は、殺伐とした風景の中でも人の心を打ったのだろう。


遺体に対しての接し方もだが、相葉が遺族に対する声かけは時に優しく時に厳しい。しかしながら最後はやはり彼に声をかけてもらってよかったと思える場面が殆どなのではないだろうか。
死に直面した人に語りかけるのは本当に難しい。大抵の人は「ショックで言葉もない」からだ。しかし遺族に対して沈黙よりも敢えて語りかけることを選ぶ主人公の相葉の中には、死を受け入れてこれから生きて行ってほしいという願いがあった。どんなに死者を悼んでも別れの時は訪れる。遺体安置所を出発する=出棺の時、さしたる混乱もなく遺族が死者を送りだしていけるのも、安置所にいた期間の相葉の姿勢に寄る所も大きかったのではないか。彼はその人の状況に合わせてどんな対応をしたらいいか考えている。それは遺体だけではなく生きている人にも同じように寄り添った結果だった。
初めはこの状況になす術もなかった市役所職員、消防団員、その他応援の市民たちが、映画の進行と共に次第に変わっていく。それは「何かしてあげたい」「何かしなければ」という焦りにも似た気持から、では混乱時に物事をどうすればいいかを判断する基準として、「寄りそうこと」だと気がついていくからだろう。


これを観て「リアリティが足りない」と思う向きもあるだろうし、「あくまで映画だから」と言う人もいるだろう。しかしながらあれから2年が経とうとしている今、あの日あの時に寄り添う気持ちは薄れてはいないだろうか。
人が人として生を全うすることとは一体何なのか、そのために残された者は何をすればいいのかを思い起こさせてくれる作品である。ただそれだけでも本作の存在価値がある。


★★★★ 4/5点




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16 Comments

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おくりびと (ノルウェーまだ~む)
2013-03-08 11:35:43
roseさん☆
実際に遺族の方には、まだまだ傷は深いので辛すぎる映画じゃないかしら・・・とも思いましたが、冷たく寒い体育館なのに何故か温かい空気が流れていく、これは遺族の方にも,いつかは是非見てもらいたいなぁと感じました。
ノルウェーまだ~むさん (rose_chocolat)
2013-03-08 12:19:50
まだ2年です。地震や津波の映像がなくても、遺族の方はこれはこれで十分お辛いと思います。
ですがいつか、無理せずに観ていただければ、と思います。
私たちも、思い出して行かないといけない訳ですからね。
こんにちは~ (kira)
2013-03-08 13:01:30
>あの日あの時に寄り添う気持ちは薄れてはいないだろうか
>そのために残された者は何をすればいいのか

全く同感ですね。
記事を読みながらでも、幾つかのシーンが蘇り、決壊しました。。。
映画を観ただけでこれだもの。あの日、を経験された方はいかばかりか・・・
これは映画にする限界なのではないかという気がします。
それでも、こうして映像で、永く語り継いでいかなければ。ですよね。
kiraさん (rose_chocolat)
2013-03-09 16:32:51
>これは映画にする限界なのではないか
震災から2年間、直接的な津波だとか地震の描写が入っている作品は公開見送りだったりしましたね。
こちらは違う側面から震災を考えていて、いい作品だったと思います。
直接じゃなくてもちゃんと訴えてくるものがある訳ですから。
語り継がないといけないですね。
 (とらねこ)
2013-03-10 03:06:46
まだ2年前なんですよね。終わった訳ではないとは言え、いつまでも後ろばかりを見ている訳にもいかないという。
私にはまだ向き合う勇気が持てませんので、この作品を見に行くことは出来かねてしまいます。
遺体が並んでいた体育館、寒かったなあ…。思い出します。釜石市の役場なんかも、まさに行きましたよ。
とらねこさん (rose_chocolat)
2013-03-10 21:47:11
実際にあの時被災地にいらした方には、この映像はたぶんお辛いと思います。
西田さんがとても温かかった。
いつか観れるようになったらぜひご覧いただきたいです。
風化は出来ない (q 従兄弟のお嫁ちゃんの実家)
2013-03-11 22:46:42
何かする、したい。でも・・・何も出来ない
私にあるのはただ1つ。私は、風化は出来ない
今。私には、あの少しの時間の事は
現実に起きて今、糧となりつつある
まだ長い時間 1人でいると不安になる
地震情報テロップの音に
ドクン、ゾクっとしてしまう 怯えだけど
従兄弟のお嫁ちゃまの実家が
福島の原発10㌔圏内でね
彼女のパニックはとにかく酷かった
彼女のパパって、釣りの世界では有名なの
よくnhkとかテレビや雑誌に
 浪江。富岡。宮の森
被災のその後の色々を話す
これ。遺族の方達には観るのに
時間がかかるだろうな
でもさ。人って凄く辛くても「時の薬」があって
10年。20年して観てみたくなるかもしれないし
どんな人であれそれぞれの「糧」になって
 だって! 過去は背負って生きてるけれど
過去は ふり返って生きていないもの
 ゆっくり時の薬が効くはず そう思いたい
隣の県に (sakurai)
2013-03-14 07:50:48
いて、ほとんど被害がなかったので、いろんなものを見ました。
がれきを引き受けたのも一番早かったし、火葬もどんどんとやった。
3月中に石巻に物資を届にも行ったなあ。
日付けが出てくるたびに、あの時の日々が、まざまざとよみがえってきました。
作った意義が重要な作品でしたけど、西田さんじゃなくっちゃ!西田さんでよかった、西田さんにありがとう!でしたわ。

しかし、忙しい3月で、遅々としてブログは進みませんわ。
今日は家電とスーツ買いに行ってきます。あぁぁ、お金が飛んでいく。。。。
qちゃん (rose_chocolat)
2013-03-16 12:44:04
目に見えない原発の恐怖、その土地に住まいしないとわからないものだと思います。
こうして津波関連の映画が出てきたけど、関わった方たちにとってはまだ辛い映像だと思います。
それでも語り継ぐことは必要だと思うし、直接被災していない我々にも、こうして知ることが必要だと思いました。
sakuraiさん (rose_chocolat)
2013-03-16 12:45:42
>西田さんじゃなくっちゃ!西田さんでよかった
あの優しさが必要だったんでしょうね。
震災から2年、忘れてしまっている人、そして毎日がせわしなく潤いがない人、この優しさが沁みるんじゃないかなと。

3月忙しいですね。私もブログ構ってられなくて(苦笑)
日本独特 (まっつぁんこ)
2013-03-16 22:27:31
この映画は観たがあえて記事はアップしなかった。
御巣鷹山の事故の時と同様、遺体への強度のこだわりは日本独自の価値観だと思う。非国民まっつぁんこの感覚とも合わない。よって本音を書くことあたわず(笑)
「人が人として生を全うすることとは一体何なのか、そのために残された者は何をすればいいのかを思い起こさせてくれる作品」は全くその通りだと思います。
リアリティ (ふじき78)
2013-03-17 01:13:56
> これを観て「リアリティが足りない」と思う向きもあるだろうし

私は被災地に行く事もなく、TVから情報を得ました。今回の映画では被災現場は描かれず、ほとんどが体育館が舞台なので、日常生活の延長みたいで、自分の事のように思えて、逆にリアルでした。
まっつぁんこさん (rose_chocolat)
2013-03-17 09:31:42
いやぁ、ぜひ感想書いて下さいよ。
それは個人の感じ方なので全く問題ないと思います。
だってこれはドキュメンタリーではなく、あくまでも「事実に基づいた話」なんだから。
ふじきさん (rose_chocolat)
2013-03-17 09:39:42
私も被災地には行っていません。都内で少しボランティアをしただけなので、いつか現地で何かのお役に立ちたいとは思っていますが。
たまにいろいろと探してはいますが、割と条件がついてしまうので(住み込みでとか長期間とか)、難しいんですよね。

震災当時は、当然なのですが人も物資も輸送が制限され、現地の様子まではわからなかった。救助活動や、それらに付随する対応については専門家や現地の方で行うしかなかった。
そういうことが一体どんなことなのか。それを被災していない私たちはわからない。こうして映画でもいいので、実際はこうだったと知らせてくれる取り組みはいいことだと思います。

ただ、これを見てそこから何をどうしたいのか。自分はこれから何かできるのか、どうすればいいのか。
映画を観た方は、そこで終わりにせず、少なくともそれを考えていって欲しいと思います。
少なくとも私はそれが亡くなった方に対しての供養であり、礼儀だと思うからです。
こんばんわ (にゃむばなな)
2013-03-21 21:35:44
個人的にはこの映画を見てショックを受けたかったんです。
自分の知りえない現場ではこんなに悲惨だったんだ。でもそこでこんなにも頑張っている人たちがいたんだと。
ですからこの作品は素晴らしいのですが、映画としては物足りないんですよね。
もっと観客に衝撃を与えてもよかったのでは?
この題材だからこそ、あえて要求も高くなってしまったからかも知れませんが。
にゃむばななさん (rose_chocolat)
2013-03-23 10:06:31
>この映画を見てショックを受けたかった
思うのですが、「ショックを受けたかった」「こんなにも頑張っている人たちがいた」、それは映画でなくても他のドキュメンタリー映像でもわかるように思います。
そこを感じることは既に震災から2年経過して、ほとんどの震災を知る人の中にあるのではないでしょうか。どんな作り話よりも事実は人の心を打つ側面があります。
問題は、そう感じてから次にどうするかってことでしょうね。

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