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【フランス映画祭2013】『母の身終い』 (2012) / フランス

2013-06-24 | 洋画(は行)


原題: Quelques heures de printemps 
監督: ステファヌ・ブリゼ
出演: ヴァンサン・ランドン 、エレーヌ・ヴァンサン 、エマニュエル・セニエ

映画『母の身終い』 公式サイトはこちら。(2013年秋 公開)

フランス映画祭2013『母の身終い』 ページはこちら。



48歳のアランは、長距離トラックのドライバーだったが、麻薬の密輸に加担したため服役し、出所したばかりだ。彼は母親が一人暮らす実家で人生のやり直しをしようとしている。だが几帳面な母親とは昔から折り合いの悪いアランは、なかなか希望しているような仕事につけない焦燥感もあり、事あるごとに母親とぶつかり合う。ボウリング場で知り合い一夜を過ごした女性ともちゃんとした恋愛関係を深める事ができない。しかし、ある時アランは、母親の脳腫瘍が進行しており、母親がスイスの会社と契約を交わし尊厳死を実行しようとしていることを知る・・・。(フランス映画祭2013 公式サイトより)



原題の"Quelques heures de printemps" 、直訳だと「春の数時間」。確かに春の数時間の出来事なのだけど、映画を観終わった後ではこれほど重たいタイトルもないくらい、この内容がひしひしと迫って来る。邦題は「母の身終い」とついてしまいましたけど、これだとかなりネタばれ。何かスマートなものがなかったのかとも思うけど。

48歳になっても仕事も私生活もうまくいかないアラン。1つ1つの行動や言動が粗野なために他人との関係をうまく築けない。こういうタイプと正反対な母親のイヴェットとは当然折り合いは悪い。そりゃそうだろう。毎日の暮らしを潤わせたいと丁寧にしたり、人との関係を大切にしたいと思っている人にとって、全てを気楽に雑に考えて後先を考えないタイプの人間ほど苦手なものはないからだ。
がしかし、最も苦手なタイプの人間が自分の家族で扶養義務だとか同居せざるを得ない時、つまりその人が自分の生活に入ることが避けられない時、どちらにとっても言いようもない苦痛が始まってしまう。

実の母と娘の関係は遠慮がない分難しいとはよく聞くが、母と息子の関係というのもそれにも増して厳しい時もある。劇中イヴェットがそれまでの結婚生活を振り返って、亡き夫をについて「とにかく気難しくて大変で・・・」と語っているが、この亡き夫の姿をアランが踏襲してしまったが為に、アランと2人きりになった時点で再度その「気難しい人」を相手にする生活が始まってしまった。
どんなに些細なことを言っても最後には喧嘩になる、顔も合わせたくない。結婚以来そんな人生を送って来て、余生を静かに過ごしたいと思っていた矢先に再度その生活が始まってしまうのは、老いた身にとっては苦痛以外の何物でもない。
かと言ってそこは血の繋がった息子のことだから、夫よりは当然可愛いし情もある。アランの言動に心を痛めながらも、ちょっとした仕草の1つ1つに息子を気遣っているイヴェットの気持ちは手に取るようにわかる。アランはそんな母のことをわかってないんだろうな・・・。自分の気遣いが相手に伝わらない時が一番しんどくなるから。

老いても尚しんどいだけの人生、そして老い先も考えてイヴェットが出した結論、それはあまりにも潔いのかもしれないけど、同時に哀しいことでもある。自分の人生に自分で引導を渡すのは『愛する人』を思い出させるのだけど、イヴェットもまた強すぎる女性に見える。本当は弱音を吐きたいのにそれをしないで自分で全て背負い込むタイプの女性。始末をつけるのはいいとしても、そのつけ方が思い切りが良過ぎちゃって、そんなに強い勇気は自分だったら持てないだろうなと自分の弱さを知らされてしまう。
何でもできる人だから身の周りの整理もきちんとしていて、人に迷惑をかけたくない気持ちは伝わるけど、もしもアランがもう少しイヴェットと上手くやって行けたなら、思いやりのある言葉をかけてくれていたなら、こういう始末を選んだだろうかとも思う。人は優しさが周りにないと生きていくことの希望を失ってしまう。イヴェットは未来に見切りをつけていたのではないのだろうか。だとしたらあまりにも悲しすぎる。

人との関係がうまくいかなかったアランは、そんな母を見て自分の中で何か変わったことはあったのだろうか。無言のラストの中では彼は変わったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。でも母の行動に衝撃を受けたことは確かだし、クレメンスに本当の自分をさらけ出せたことでも、きっかけとなったことは間違いないだろう。自分の背中を見せて教育するのは親の務めだけど、これはあまりにも切なすぎる話でもあった。
淡々と、うららかな春の日の数時間に進む出来事。それを選んだことに微塵の後悔もないイヴェットだが、その表情の中に一抹の寂しさや不安をアランは見出だせたはず。たった1人の肉親の重みをわかっていてほしいと思わずにはいられないが、その顛末は劇中でハッキリとは描かずに、観客に想定させるような決着の付け方でもあった。


★★★★ 4/5点






************************************************************************



上映後、トークショーがありました。
登壇者はステファヌ・ブリゼ監督と主演のエレーヌ・ヴァンサン。



トークショーの内容ですが、ネタばれになる可能性があるので、公開直前に再度更新します。

ただ、監督は「こんな遠い国でこの映画が上映されることが本当に嬉しい」と仰せでしたね。
エレーヌさんは「この脚本を読んだ時はまさに自分が心に秘めていたものがあると確信し、この役を是非やりたいと思った。ヴァンサン・ランドンとの共演は大変上手くいった。彼は理想的な共演者で、心の暖かさを全てつぎ込む役者さん。尊敬しています。」とのことでした。




そして運よくこの回のサイン会の順番が取れましたので(今回ことごとく諦めてましたので嬉しかったー)、行って来ました。
お2人なのでちょっとお時間かかりましたけど、お2人ともとても丁寧に嬉しそうに応じて下さいました。

 


間近で俳優さんの生き生きとした表情が見れるのは本当に嬉しいことです。こちらも心が浮き浮きしてきました。








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ズッシリ来ました (maru♪)
2014-01-02 01:11:08
これはズッシリ来ました・・・
自分は母親ではないので、どうしても子供目線で見てしまって、
イヴェットの衝撃的な選択よりもむしろ、
淡々と家事をこなす感じや、病院に通う姿が自分の母親と重なって切なかったです。

重いテーマを淡々と見せられたことで、よりズッシリ来ましたが、
見てよかったと思っています。
maru♪ちゃん (rose_chocolat)
2014-01-02 10:48:12
>淡々と家事をこなす感じや、病院に通う姿が自分の母親と重なって切なかった
そうだよね。
うちもこのお母さんと自分の母が同世代っぽいので、それは考えちゃう。
今は元気でちゃきちゃきしてるんだけど、もし体調崩してしまったらたぶんその姿が重なっちゃう。観てて切ないのもすごいわかります。
親の介護とか看取りっていうのも避けられない問題だからねえ。。
いい映画でした。考えさせられる。。 (真紅)
2014-01-28 20:53:54
rose_chocolatさん、こんにちは。
トークショー&サイン会、いいですね!! 映画祭でご覧になっていたのですね~。

さて映画ですが、とっても身につまされました。
ウチも息子(しかも一人)なんですが、微妙な関係なので(汗)。
あのお母さんの辛い気持ち、わかるなぁ、、なんて思いながら観ていました。

でも、私は彼女のように命に自ら区切りをつけることってできないですね。
息子が7歳頃だったかな、「100歳まで生きる」って約束したんですよ。
って結局親バカ(爆)。
真紅さん (rose_chocolat)
2014-01-29 07:02:20
そうなんです。フランス映画祭でした。
エレーヌさんの笑顔はとっても素敵でした。はじけるような笑顔。今でも覚えています。
監督はサインの後にウインクしてくれまして(!)、そういうところはフランス人なんだなーと。外見はフツーのおじさま(失礼)なのに可愛らしいというか、私そういうのに実は弱いんです(笑)

>微妙な関係なので
わかります。子どもって、親が掌握しているように見えて、でもすればするほど反発しますしね。
特に息子なんて全然今なんて当てにならないでしょう?
娘の方が情が厚いというか、でもそれでも母と娘も難しいって言うし。結局核家族化が進んでるから薄情になっちゃう。
この映画の親子関係も切なかったですよね。というか、こんな思いする母だったら悲しくてしょうがないのに、それでも決然とした姿勢がまた切なさを誘われました。
トークショー&サイン会 (latifa)
2016-01-02 18:31:20
roseさん、監督さんやヒロインの女優さんにもお会いできたんですねー。
映画の中でも、お年を召されていても、小奇麗にしていて、綺麗な女性でしたよね。
映画を見る前は、彼女が自ら尊厳死?を選ぶ内容だと思っていたのですが、実際見てみると、母と息子の関係も軸にあって、そちらも考えさせられました。
latifaさん (rose_chocolat)
2016-02-13 06:02:23
この監督さんがとっても、とーってもセクシー(わたしの基準ではね。笑)でした。
ウインクしてもらっちゃったーん。
日本の男性ってそういうのしないでしょ。笑
そこか!って言わないで~

映画はとても深かったですよね。

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