壮麻 陣 blog

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日本経済新聞社 論説委員 塩谷喜雄氏の放言

2008-07-22 | 『42歳〜49歳の日常』


7/20日曜日の日経紙に、大見出し「反論まで周回遅れ」、小見出し「温暖化巡る日本社会の不思議」と題された”中外時評”と言う短稿に違和感を感じたのは、私だけではないはずだ。冒頭、いきなり

科学的には決着している地球の温暖化について、ここに来て、「温暖化と二酸化炭素(CO2)の排出は無関係」といった異論・反論が日本の一部雑誌メディア等を騒がせている


で始まる、この短稿の問題点を指摘したい。


塩谷氏は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、昨年第四次報告書で人為的温暖化の進行を「断言」した。これまでに慎重に科学的な姿勢を貫き、断言を避けてきた組織が、ついに結論を世界に示したのだ。


と、断じた上で自論を構築しているのだが、IPCCがいつ「断言」したのか?と、私はハンマーで頭を殴られた気がするぐらいの衝撃を受け、直近に開催されたIPCC総会概要を検証してみた。財団法人 地球産業文化研究所による原文翻訳が、ここにある。引用すると…




In the words of UNFCCC Executive Secretary Yvo de Boer,the IPCC has been “an engine that drives the climate change policy process.” In 2007, the IPCC’s Fourth Assessment Report(AR4) conclusively put to rest the skepticism about climate change. Its outcomes are globally acknowledged to have played a crucial role in creating momentum for the breakthrough at the historic Bali climate change conference in December,and all indications are that the work of the IPCC will be even more important to spur the commitments and actions generally perceived to be needed in the future.

(翻訳pdf p17)
UNFCCC事務局長のYvo de Boerの言によると、IPCCは、「気候変動政策プロセスを動かすエンジンのような」ものであった。2007年のIPCC 第4次評価報告書(AR4)は、気候変動に関する懐疑論に終止符を打った。その業績は世界的に認められ、12月のバリでの歴史的な気候変動会議では、打開を図るモーメンタムを引き出す上で重要な役割を果たした。

With the AR4 clearly stating that some degree of adaptation will be necessary given that the accumulation of greenhouse gases has already “committed” the earth to a certain level of warming,and with the Bali Action Plan moving adaptation on a par with mitigation, work on adaptation is widely expected to increase exponentially.

(翻訳pdf p19)
現在すでに起きている影響に適応するため、緊急に行動する必要があるとの認識が各国間で高まる中、取り組み方は大きく変化している。AR4では、温室効果ガスの蓄積により、一定の地球温暖化がすでに「約束されている」現在、ある程度の適応は必要であると論じており、バリ行動計画でも緩和と並行して適応への動きも示されていることから、適応に関する作業の急激な増加を予想する見方が一般的である。



塩谷氏もこの翻訳リリースを読んだのかもしれない。確かに「懐疑論に終止符を打った」「一定の地球温暖化がすでに約束されている現在」の文言は、塩谷氏による「ついに結論を示した」という文言を補強するような形に見えるのだが、"conclusively put to rest the skepticism about climate change."の一句、そして、その翻訳は「CO2が温暖化の原因だ」と断定するだけの意を表したものだろうか?

池田信夫氏のblogによると、第4次評価報告書(AR4)にある原文は


Most of the observed increase in global average temperatures since the mid-20th century is very likely due to the observed increase
in anthropogenic greenhouse gas concentrations. (p.10、イタリックは原文)

とあり、塩谷氏のいう「断言」とは印象が違う、逆に慎重を期す表現になっていると断じられている。


私も池田氏の見解を支持したい。英語表記における「断定」というものは、もっと確実で逃げようのない文言表示を取るものだ。例えが適切でないかもしれないが、ジョージブッシュの対イラク戦争での演説「断定表現」用例は、以下でも分かるように"is clear"、もっと直接的で明快な表現だ。この言い回しに比べてIPCCの表現は果たして「断定」だろうか?(参考Web siteThe White house

The lesson of this experience is clear: The terrorists can kill the innocent, but they cannot stop the advance of freedom.






専門家が素人を相手に一説を論じる時、「どうせ素人は、この程度の事すら知らないだろう」との考えで、大前提となる事実をいい加減にダマくらかして自説を正当化する為、程良く”捻じ曲げる ”ことがある。塩谷氏も、私のような一介の小市民から上記のような反論を喰らったら"very likely due to"であれ、"must be "であれ大意に差異はない、のような、更に失笑を買うダマくらかしでも言って逃げを図るのだろうか?


従って、意図的か否か分からないが「断定された」とした「誤った前提」を基に、いくら論を展開しても、その説得力及び結論には大いに疑問が残る。


塩谷氏は「地球温暖化」についての異論、反論は「全く門外漢の学者の言説である」とも断じているが、少なくとも、私が拙logでよく引用するtechnobahnでの「地球温暖化について疑義」ありとする論文作者は、門外漢どころか専門家集団であることは明白である。まぁ、こう言っても「日本での異論、反論…」と、本質的なところを又、はぐらかすんだろうけど…




追記1


興味深いのは、翻訳で言うところの「バリ行動計画でも緩和と並行して適応への動きも示されていることから、適応に関する作業の急激な増加を予想する見方が一般的である。」とされている行だ。読みようによっては、将来「二酸化炭素排出が原因でなかったとしても、目の前にある”気象変動”には適応せねばならん」と、理解できるような一節がある。

「決着している」「断定」とは、程遠いように思うのは私だけなのか。。。



追記2

http://www.gispri.or.jp/kankyo/ipcc/ipccinfo.html
地球産業文化研究所「IPCCに関する動向」〜組織と目的 〜によれば
(1) 政府間パネルとの名であるが、参加者は政府関係者に限られず、世界有数の科学者が参加している。
(2) 参加した科学者は新たな研究を行うのではなく、発表された研究を広く調査し、評価(assessment)を行う。
(3) 科学的知見を基にした政策立案者への助言を目的とし、政策の提案は行わない。

とあり、特に(2)(3)を読む限り、今後ドンデン返しの結論を持つ学説を高評価することは否定できず、更に「助言」を目的とする以上、異論並記的な姿勢にならざるを得ないはずだ。

又、このIPCCは主に三つの作業部会に分かれており
・気候システム及び気候変動の関する科学的知見を評価する部会
・気候変動に対する社会経済システムや生態系の脆弱性と気候変動の影響及び適応 策を評価する部会
・温室効果ガスの排出抑制及び気候変動の緩和策をそれぞれ評価する部会

それぞれの部会には、地球科学や気象学以外の塩谷氏が言う「門外漢」スタッフが必要とされているのは明らかであり、このIPCCの組織そのものに対する塩谷氏の見識、理解の度合も疑わざるを得ない。




ジャンル:
社会
キーワード
地球温暖化 地球産業文化研究所 温室効果ガス 気候変動の影響 気候システム 気候変動に関する政府間パネル イラク戦争
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