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特別版セイネンキゼロ/ポリシー(4)

2017-05-15 11:40:48 | 特別版セイネンキ・ゼロ/ポリシー
クロールの選手でも追いつく事ができないスピード、それも背泳ぎで。
この3種目の選手がいなければ、市町村の水泳大会に参加する事はできなかった。
しかし、この直也が背泳ぎの選手になった事で、通う小学校は市町村の大会に参加する事ができるようになる。
それだけではない、直也の存在は他の選手へも影響を及ぼした。
『ライバル意識』という観点で、他の選手もスピードを上げていく。
市町村小学生水泳大会で、初出場で優勝を果たすのだ。
この時をもって、直也の存在が教師達の中で見直される事になったばかりでなく、特別学級の生徒へのいじめもなくなり、直也は喧嘩をする事がなくなったのだ。
直也の素質を知ったのは、まず春樹と久美子、次に由子、真一、仲間達、教師達の順だろう。
直也の周りには常に仲間達がいた。
中学へ入学すると、他の小学校からの生徒も仲間に入る。
直也は慕われる存在として見られるようになり、中学に入ってから大切なものを失う事が多くあったが、それに耐える力を持っていた。
この頃の中学では、先輩達からの『暴力』や『カツアゲ』等、様々な問題があり荒れに荒れた時代の中、直也の存在は先輩達から仲間達を守る事、他のクラスの同級生をも守ろうとしていた。
直也の素質とは何か、それは中学を卒業した時に、周囲の人達は知る事になる。
『直也とは何者か』と・・・

ボクシングジムの会長やコーチは、直也の過去を理解し知る事によって、直也の持った悲痛や苦痛、怒りや憎しみを知り、直也の『心の更生』を考える。
共に、ボクシング試合で『優勝』から『心の更生』というものに賭けてみようとしたのだ。
直也はボクシングを始めて日は浅い、しかし試合までの間、約3か月間でどれだけの成長をするのだろうか?
直也は必死に生きていた時期でもあった。
11月下旬、中学生市町村ボクシングトーナメントまで、あと1週間。直也は孤独となり、心にある『悲痛と苦痛』と『いじめと暴力』に対して戦いを挑んでいく事になる。
9月下旬には、ボクシング試合の日時と場所と条件が決められていた。
市町村からは、中学生16名の出場が決まり、条件を満たせなければ出場停止となる。
その条件とは、体重は55キロから60キロ以下、身長には条件はなかった。
直也には、この『身長には条件がない』事が有利と思われたのだが、直也の身長は、1メートル70センチ、体重は69キロ。
やせ形であったが、さらに体重を9キロから10キロ減量しなければならなかった。
10月に入ると、減量とトレーニングのスケジュールプランが新たに作られていた。
減量とトレーニングのスケジュールプランは厳しいものだったが、直也にとっては有りがたい事だった。
『必死になれる、何もかもが忘れられる・・・』

直也は心の中にある剣を隠し、必死に無心の中でプランをこなしていく。
ジムへ通う他の訓練生達は、直也を見ながらも、近寄る事も声をかけようとはしなかった。
由子も同じく、直也の姿を見ながらベンチに座っているだけだった。
汗を流しながらの減量、リングへ直也が上がれば由子はリング下で直也を見つめる。
直也はジムの隅で減量の為、汗をかきながら、微かな声で何かを口ずさむようになっていた。
『1試合3ラウンド、試合は4回戦・・・4回戦で優勝・・・』
狂い始めたかのように見えた直也は、優勝すると心の中の決意が、自然と口に出ていたのだ。

『頑張って・・・直也!』由子は、優勝と口ずさむ直也に、微かな声をかけていた。
11月上旬、スケジュールプラン通りに進み、体重五十九キロまで減量した。
毎日毎日、早朝マラソン、学校、ジムでのトレーニングが続く。
直也は、いつもTシャツを着ていたが、減量が終わると、Tシャツを脱ぎリングの上での本格的にヤスシとのスパーリング。
そして他の年上の訓練生達とのスパーリングが、毎日ヤスシと訓練生の1人の2人と3ラウンドずつ行われた。
試合が終わるまではジムでの生活、就寝は21時、リング上に布団を敷き眠る。
朝5時に起きて10キロマラソン、少し休むと学校へ通う。
試合まであと3日となった時、会長はモノクロのポスターを直也に見せた。
優勝候補とされる選手は、大きく載せられ、直也は4センチ角の小さな枠に映っていた。
コピーで作られたポスターに、直也が写っているとは誰も思えないようだった。
『直也!お前はちっちゃいなー』

ジムの会長は笑いながら直也をからかうように見えるが、直也の心の中の『闘争心』に火をつけようと声をかけていた。
試合に必要なのは、『怒り』ではなく『無心の闘争心』だけで良かったのだ。
試合まであと3日、直也の眼の色は、これまでの直也の眼ではなくなった。
もの静かな瞳に『怒り』というものは感じられなくなっていた。
会長は『闘争心』を持たせる為に声をかけていたが、この時の直也には闘争心を抱く事はなかった。
もの静かで冷静さの見える直也は、いつ闘争心を抱く事ができるのだろうか?
ボクシングトーナメントのポスターは、公民館に貼られていた。
偶然か?それとも必然か?そのポスターを見て、直也に気づいた『ヤツ』がいた。
直也にとっては『竹馬の友』だった。
ポスターを見ながら、久美子の作った『ドリームキャッチャー』を握りしめ『直兄ちゃんを、守ってあげてね・・・』
『ヤツ』は、久美子のお守りを握りしめ、久美子がヤツの家に行き渡された時の事を思い出していたようだ。
そして3日後、中学生市町村対抗ボクシングトーナメント当日となる。
日時場所は、11月月22日、時間は9時30分から11時30分の2時間、場所は○○市体育館、控室は公民館2階にある一号室と二号室。
トーナメントは、出場者16名、控室には8名ずつ。
計量時間は、8時30分からとなり、16名の出場が決まった。
直也は計量が終わるとすぐに、控室へ戻る事はなかった。
『少し走ってくるから』
直也に余裕があったのか、それともプレッシャーがあったのかは誰にもわからない。
会長やコーチ、由子は声をかける事なく、直也の言葉にうなずくだけだった。
直也以外の選手は、控室で軽く運動を始めると、同室者は凄い熱気に包まれているように感じていた由子だった。
走ってくると言って出て行った直也は、遮断機のない踏み切りを見つめ、久美子を思い出し『ドリームキャッチャー』を握リしめる。
直也は、自分の決意というものを久美子に伝えに行っていたのだ。
由子は控室で直也の事を思うと、踏み切りに行っているのを感じていた。
控室で暇な由子は、1人でリングのある体育館に足を向け、体育館に入ると応援団らしき観客の熱気で包まれていたが、そこには直也の応援団はいなかった。
ジムに通うプロテスト前のヤスシを含め、訓練生6人は控室で直也が返ってくるのを待っている。
直也がフードをかぶり控室に戻ってくると、同室の選手達は不思議そうに直也を見ている。
フードをかぶったままの直也は椅子に座ると、コーチが直也の肩や首へのマッサージをする。

『勝とう等と思うな、自分を信じて前へ進めいいからな』
会長は直也の耳元で囁きかけるが、直也はフードをかぶったまま、身動きする事もなく床を向き、決して顔を見せようとはしなかった。
『そろそろ時間だ、直也、信じるものだけを見つければいい』
直也は控室で同室者には、決して顔を見せる事がなかった。
こんな直也に同室者達は、どう思っていたのだろうか?

いよいよ、トーナメント会場へ16名の選手達が向かう。
会場へ入ると、盛大な拍手が湧いていた。
直也以外は、中学一年生の時には皆、リング上に立っていた選手だった。
『頑張ってー頑張れー・・・』
特に盛大な拍手で迎えられたのは、中学一年生の時、1位と2位の選手、そう優勝候補者だった。
選手16名はリングに上がり紹介されるが、直也はフードをかぶったまま、自分のアピールをする事はなかった。
紹介された後は、静かにリングから降り、ボクシングトーナメントが始まった。
直也の1回戦は8番目、リング下にいて椅子に座っていたが、まだフードをかぶったままで床を見つめているだけで他の選手の試合を見る事はなかった。
直也には戦う相手は誰でも良かった、戦う相手は自分自身だと思っていた。
試合前までのヤスシとの激しいスパーリングの中で、自分の『心』と向き合う必要性に気づいていた。
応援団達サポーターの声は、直也にプレッシャーをかけていたが、微かな声で直也は・・・。

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