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特別版セイネンキゼロ/ポリシー(6)

2017-05-25 14:56:06 | 特別版セイネンキ・ゼロ/ポリシー
1回戦目と同じようにフードをかぶり試合会場に入ると、直也には最初に感じていたものとは違う感じがした。
2回戦目から、選手8名で控室に戻る事はない。
1回戦目は『極度の緊張感』がある事から控室で休憩をしたが、2回戦目からはリング下で自分の順番がくるまで、リング上を見つめる事になる。
極度の緊張は、思春期頃の選手であれば知らず知らずに誰もが持つものだった。
ボクシングトーナメント試合のルールでは『極度の緊張』に配慮したルールになっていた。
2回戦目から試合が終わったとしても、次の試合までリング下で椅子に座りリング上を見つめる事になる。
控え室にいては、思春期頃では控え室にいれば『不安感』『恐怖感』『緊張感』が増す可能性がある為、リング上の試合を見る事で減少されると思われていた。
選手達の『安心感』を与える思考や意識を変える事が考慮されていた。
『強い、強いな・・・』『次の相手になるのは誰だ・・・』と、選手達は考え次の試合の事を考え集中する。
2回戦目となると、それぞれが自分の体力を考え、1回戦目とは違うと思っていた直也や他の選手達は、次の相手の選手を見つめていた。
『あの野郎、笑ってやがる・・・くそっ!・・・』
直也は、前回3位の次の相手を見ながら思っていた。
次の相手の笑う姿によって再び『緊張』だけでなく『闘争心』に火がついた様に心の中で動き始まった直也の心である。
『相手の作戦に惑わされるな、いいな、今は心理戦だ』と、『会長やコーチ』は直也に声をかける。
『え?なんで?・・・』と、直也が不思議な笑みを浮かべると『ヤスシ』はリング上を見ながら笑っていた。
『この待ち時間は、心理戦だ、アイツラを気にしすぎるな』と、『会長やコーチ』は直也に声をかけ、緊張をほぐそうとしていた。
しかし、この時の『ヤスシ』の笑う姿を見る直也には、すでに『覚悟』という気持ちが抱かれていた。

2回戦目からは誰もが緊張がほぐれる、しかし、互いに戦うもの同士は、相手のファイティングタイプを気にする。
直也にとっては、初めてのボクシングトーナメント試合、自分1人で戦う事はできなかった。
コーチの声かけで『心理戦か』と気づき、直也の『緊張感』は消えていった。
『これがボクシングか、相手を思い心理的な作戦もあるのか・・・ならその心理戦に勝ってやる・・・』
『会長やコーチ』の声かけは、緊張をほぐすだけでなく、直也に初めて本当のボクシングを教えていた。
ジムでの練習では、教えられない事を試合の中で教えていくのだ。
1回戦目は、八組目、2回戦目は、四組目・・・。
前回1位の選手は一組目、という事は直也が勝ち進めば、最終的に前回優勝者との戦いになる。
由子は直也の隣に座り、直也の横顔を見つめている。
コーチは直也の肩や首をマッサージし、リング下にいる由子の一席を開けて隣には、同じジムに通うプロテスト前の『ヤスシ』が座っていた。
『ヤスシ』は椅子から立ち上がり、リング上の試合を見ながら直也に近づき声をかけた。
『直也、次の試合から俺もリングサイドにつくからな』
『トレーナーの会長とコーチだけじゃないの?』と、緊張感の全くない直也の姿を『ヤスシ』『ユウコ』『会長やコーチ』は笑う。
『お前が面白くなったよ、お前と一緒に戦いたくてな』と『ヤスシ』は言った。
『え?なんで・・・』と、また直也を見て笑みがある。
『3カ月ぐらいで、お前はプロテスト受けてるみたいだ』と『ヤスシ』は言った。
ジムのリングでスパーリングの時、たった一発のアッパーで倒された『ヤスシ』からの言葉は直也を勇気づけた。
『俺が面白いって?なんだよ!・・・』と、直也は思うが『ヤスシの気遣い』に感謝してたのだろう。
言葉にはしないが直也は胸の内で思った。

試合会場の観客達や応援団のサポーター達、次の相手の選手だけでなく他の選手も皆、プロテスト前の『ヤスシ』の事を知っている。
『まさか、プレッシャーが?消えた?・・・』と直也は思えた。
会長は、リング上だけでなく、周囲の観客や応援団のサポーター達、選手達の動きの流れを見ていた。
そして、直也が選手達にプレッシャーをかけるとすれば、プロテスト前の知られた『ヤスシ』をリングサイドに置く事こそ『最善の作戦』であったのだ。
プロテスト前の『ヤスシ』は、高校一年生、中学時代トーナメント3回の優勝した選手だった。
誰もが知る『ヤスシ』は、会長に自分がリングサイドにつく事を交渉していたのだ。
何故かと言えば『心理戦』にも勝つ為である。
それだけではない、『ヤスシ』は直也の天才的なものがどういうものか、知りたかったのだ。
直也にとっても、強い『ヤスシ』がリングサイドにつく事で『不安感』が取り除かれていく。
そろそろ四組目の試合だ。
『直也、気を付けてね、馬鹿な事考えないようにね』
由子が直也に声をかけると、直也は笑顔でうなずいてリング上へ向かう。
『ん、何だよ・・・馬鹿な事って・・・』と直也は思いつつ、ふと『ユウコ』の言葉で『迷い無き暴力?』と思い出した事である。
由子は直也の事を全て知っている存在でもあり、表現力にとんだ能力もあった。
リングの上に立つ直也は、何かを祈るかのように深呼吸をしている。
直也は孤独に戦っているのでなく、共に戦ってくれている『セコンド』がいる事に気づいていく。
プロテスト前の『ヤスシ』は、直也に言葉をかけずに直也の姿を見つめるだけで、これも心理戦の1つだった。
戦う相手は直也サイドの行動を気にしている。
会話もなく、あいづちだけで、あうんの呼吸で何かを伝えているとなれば、相手の不安材料の1つにもなるかもしれないのだ。
リングサイドのセコンドについた『会長とコーチ』と『ヤスシ』に、直也は首を縦に振り笑顔を見せるだけであった。
『え?直也が笑った?どうして・・・』
由子は『直也は誰にも心を開く事がなかったのに?』と胸の内で思っていた。
一時的なものだが、この日から直也の成長が始まったのだ。
そして、ゴングが『カーン!』と鐘が鳴ると、直也の眼つきは瞬時に変わった。
眼(ガンツケ)を飛ばす眼ではなく、冷静な覚めた目つきで、リングの中央に向かう。

ジム関係者によって『勝利』への策は作られ、あとは、直也がどう動いていくか、どう試合を進めていくかであった。
さすがに、2年目の選手は、軽く速いスピードのフットワークで直也の動きを崩そうとするが、直也は何かにとりつかれたように、相手の動きに冷静についていく。
相手の選手は、自分のフットワークについてこられる事に『イライラ』しているようだった。
直也のフットワークは、相手の選手には楽について行けるようだった。
直也は何かに気づいたようで、距離を測り始める。
相手の選手は、よほど直也に『イライラ』していたのだろう。
先に左ジャブを打ってきたのは相手の方だった。
『いける、いけるぞ!』
直也の中で、何かが動き始めていた。
直也のフットワークは、相手を上回り瞬時に相手のパンチに『腕』と『グローブ』で反応する。
直也は軽く手を伸ばすだけで、自分の体力を考えていたに違いない。
『カーン!』
1ラウンド終了のゴングが鳴る。

リングのコーナーの椅子に座り直也は相手になる選手を見ながら笑っていた。
『直也!いけるか?』
『当り前のこと、聞かないで下さいよ』
『ん・・・そうか?』
リングサイドからの声に直也が答えると、『会長とコーチ』や『ヤスシ』からは、もう何も声をかける事はなかった。
『カーン!』
2ラウンド目の『ゴング』が鳴ると、直也は一気に走り出し、身長差があるというのに自分にあえて不利な姿勢をとった。
強引に選手相手の懐に入り、腰を低くし突如『ボディ、ボディ、ボディ』の連打、直也のボディの連打に不意を突かれた相手は、苦しかったのか顔色を変え、ガードが下がったところで『ジャブ、ジャブ』の連打。
相手がガードを上げたところで、再び『ボディ、ボディ、ボディ』の3連打。
相手の選手は、膝をつき、ダウン、そしてカウントが始まると、直也は両手を挙げ、コーナーへ戻る。
『もう終わったよ、ふー』
『セコンド』の『会長やコーチ』にではなく、『由子』を見ながら言った。
その後に深い深呼吸をして、『会長とコーチ』と『ヤスシ』にも同じ言葉で声をかけた。
この2回戦目は、2ラウンド目、約1分で終わった。
この2回戦で、観客の応援の声の中には『由子』が『大島!直也!大島!直也!・・・』と叫ぶ。
『大島!直也!大島!直也!・・・』と『由子』の叫びに合わせる観客席だ。
直也への声援が増えてきていた。
直也は『観客達』や『応援団のサポーター達』に、直也自身の有能さを認めさせた時である。
直也はリングのコーナーの椅子に座った相手へ、握手を求め直也の表情には余裕すらみえるようだった。
リングから降りた直也が、見つめる先にいるのは、前回優勝した選手の姿があった。
『直也、お前、優勝を狙ってるんか?』と、会長は直也の速い変化に、しどろもどろしながら声をかけた。
『俺は、勝つ為に、リングに立ってるんでしょ、会長』
直也は会長の声かけに答える。
ボクシングを始めて、まだ3カ月、直也のボクサーとしての成長は、直也の心の成長となるよう会長は願っていた。
直也が、なぜボクシングジムに通う事になったのかを良く知っていたからだ。
『なら絶対に勝て、直也、優勝は目の前だからな』
『はい・・・』
直也の素直な一言に『会長やコーチ』は驚きを隠せず無言、『ヤスシ』と『由子』は驚く事無く直也を見つめ微笑むだけだった。

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