2009年6月のブルターニュ旅行
フランスの田舎を効率よく訪れようとすると、レンタカーの利用が最も有効だ。もちろん、鉄道の旅も捨てがたい魅力がある。フランスへの個人旅行の初回と二回目は、鉄道を利用した。それはそれで懐かしく素晴らしい旅だった。が、ワイン畑や美しい田舎の村、ロマネスク教会等を目的とすると、車を使うしかない。
フランスのドライブも数回経験して、左ハンドル、右側通行、ロンポアンにも慣れてきていたのだが、何せ7年ぶりの運転である。さらに、AVISのインターネット予約では、「乗り捨て」の場合、GPSが選択できない。ということで、事前準備は念入りにしていた。
・ぼくにとっては、AT車は必須条件。CDG空港で借りるのが最もリスクが低いだろう。
・18時30分着の便ということと、この季節の夜の長さを考慮すると、2時間以内の走行で着くノルマンディーのルーアン(Rouen)を一泊目にしたい。
・ブルターニュの主要都市と道路を徹底的に覚える。そのためには、旅行記や本を読み、地図と照らし合わせる。
・助手席の彼女が頼りだ。ミシュランのロードマップと手持ち資料を充実させる。
・ルートの事前シミュレーションを行う。特に初日の「CDG空港からルーアン」はスムーズに行きたい。ルート、地図、距離、所要時間等を調べたのは、ミシュランのサイトとGoogle mapのルート検索、疑問に感じたポイントは、ストリートビューで確認するようにした。特にミシュランのサイトは、訪問するホテルやレストラン、駐車場がミシュランの地図上に示されるので、印刷しておけば、お役立ちNo1の資料となる。
というわけで、今回のルートは、ブルターニュ1である。はたして思惑通りに事は運ぶのだろうか。
1.初日(6月20日):CDGからルーアン
シャルル・ド・ゴール空港へは、予定通り18時30分に着く。降りてすぐにPOLICEのパスポートチェック。6-7人の要チェックリストを持っていて、厳しく突き合わせている。
ルーアンまで順調だと2時間の距離だが、21時には着きたかったので、気持ちは少し焦る。
だが、AVISのカウンターは空いていて、彼女のフランス語も思いの外スラスラで、きわめて順調。保険をFull Protectionとし、カード支払い確認に移ったところで、嬉しい誤算が待っていた。GPS代が計上されていたのだ。「GPS?」と聞くと、「そうよ、5日間で50ユーロになるわ。」
フランスでは盗難が多いため、カーナビは携帯型が主流である。ベストセラーの一つ、TOMTOMという手のひらサイズのGPSだった。鬼に金棒とはこのことだ。
さて、車はシトロエンのC4ピカソ・ディーゼル、5人乗りのミニバン。6速セミAT( 6EGS)だった。セレクトレバーは、R -N- A(オート)-M(マニュアル)とあり、Nの状態でパーキングブレーキは自動制御になる(エンジンを切ると作動、始動で解除)。エアコンは拘りの制御で快適。フロントウィンドウが頭上まであり、視界が広がる。気持ちのよいベストドライブカーだ。
TOMTOMにルーアンのホテルのストリート名を入力し、出発したのが19時15分。
A1-A86-A14とパリを迂回し、A13を100km西北に進みというルートだ。途中、A86への入りとA14手前のトンネル内でルーアンへ分岐するポイントに注意すればよいことは分かっていた。ところが、A86への分岐から渋滞が始まったのだ。A14に入るまでの17kmは、ノロノロと中速の繰り返し、車線のキープが必要だが、車線変更車が多く、集中力を高めなければならない。そして徐々に頭はストレス棒状態に陥っていった。
なんとかA13に乗り、後は素晴らしい夕景を楽しみながらドライブだと、ほっとした瞬間から、思ってもみない胃痛が始まった。極端に押さえた機内食により、空っぽだった胃がストレスに過剰に反応したのか。シクシクからきりきりと、冷や汗が出るほどで、前傾姿勢でハンドルを握るのがやっとの状態だ。水を飲み、ガムを噛むが、いっこうに治まらない。
ホテルに早く着きたいがために飛ばす、TOMTOMのレーダー警告音が鳴る、の繰り返し。結局、ホテル着は22:00だったのだが、駐車場とエレベーターの構造で、胃に追い打ちがかかる。レセプションで地下ガレージを聞くが、1台分が恐ろしく狭い。ピカソは車幅がある。やっとのことで駐車するが、今度はエレベーター、0階で降りると隣のホテルに入ってしまうだ。あれぇである。
駐車場は地下3階(古くて怖いほど)で、隣のホテルと共用、駐車場のエレベーターとは別にホテルのエレベーターがあることを、後で知ることになる。
何はともあれ、胃が食事を求めている。レセプションでTaxiを頼もうと彼女は出て行くが、なかなか帰ってこない。「エレベーターの0階を押したら、真っ暗な所に着いてプチパニック。実はレセプションは3階なのでした。これぞ迷宮ホテル。」まぁ、明るくて良いけれど。
Taxiはというと名所を観光案内しながら。帰りより5割ほど高かったので、回り道をしたんだろうって、おいおい。彼女は夜景を楽しんだようだが、ぼくは一刻も早く何かを胃に入れたかった。
ビストロ・パスカリーヌは大きなビストロだが、店じまいにかかっていた。22:45だから無理もない。勘定をしている客がいたが、応対しているスタッフに、彼女は、びっくりするほど大きな声で「今からでもいい? 席ある?」
歴史は感じるが少し古くさいビストロに、最後まで残ったアジアの中年カップル。ジム・ジャームッシュの映画のようだ。とりあえずビールのなんと美味いことよ。そして、スタッフは、ひとりふたりと居なくなり、マダムだけが残った。
出てきた料理に感じる。あぁフランスで料理を食べているんだという歓び。胃の痛みもいつのまにかどこかへ行ってしまった。
鶏のココット 米添え
リゾット風の米が旨みを含み、とても美味しい。
レンズ豆の煮込み 3種のポークと
ポークの塩分がレンズ豆の甘さを引き出し、食欲が増す。体調にはピッタリ。
ワインは、ブルゴーニュがみあたらず、サンセール・ルージュ2007、25ユーロ。
ピノの優しさが、胃に染みわたった。