一昨日(1/6)は、二十四節気の “小寒” で、寒に入りました。
太平洋側では、それこそ晴れの日が多く、これから立春までが一年でも最も寒い “寒” となります。 こんな
雨の少ない時期の話題として、相応しいのかどうかわかりませんが、いつものH氏から配信されるメールに面白い
記事がありましたのでご紹介したいと思いました。
何かしら、昔、子供の頃(終戦直後)傘が無くて、学校にも行きづらかった記憶がありますが、最近では、どこの
家庭にも何本も傘があって、それも大きな傘の他、携帯用の傘なども何本もあって、我が家でも、ついぞ傘のこと
などに目が行かなかったのですが、そういえば、デパートやスーパーなどでもカラフルな傘がたくさん売られて
いるのには気が付いていました。 しかし、気が付いているだけ・・でしたが、この記事を見て、“なるほど”
最近の流れみたいなことの一面が分かったような気がしました。
このメーカーは、㈱シューズセレクションで、ブランド名を “ウオーターフロント” といって、そこのHPを開いてみると、
さらに驚きがいっぱいありました。
製品の一部の紹介欄には、「薄い、細い、短い、軽い、和柄、16・24本骨、オートマチック、1枚張り、機能、
トウィーティー、バラエティ、ご当地傘、UV PROTECT、キッズ、ビニール傘」などの項目があり、それぞれに
何点かの傘が紹介されています。 価格も500円程度から3000円位で、大変お手軽。
何やら、宣伝しているような感じですが、HPからの印象です。
ちなみに、シューズセレクションのシューズは、靴ではなく、SHU’Sと書かれています。
機能 (バッグに優しい) ご当地傘例(鹿児島:桜島ファイアー) ¥2,000
(ウオーターフロントHPより)
いつも前置きが長くなりご迷惑をおかけしています。以下に、記事をコピペします。
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『晴れの日に、傘を売る。』‐支持率ナンバーワンの傘を生んだ「良品薄利」の経営
林 秀信 著 阪急コミュニケーションズ 2014/04 208p 1,500円(税別)
1.晴れの日でも売れる傘
2.傘の黒澤プロダクション
3.唯一の才能、それが「傘づくり」
4.傘のことだけ考えて生きる
【要旨】近年、500円の傘といえば、コンビニで売っている使い捨て感覚のビニール傘が思い浮かぶ。ところが
同じ500円でも、品質は数千円級、使い捨てどころかファッション性にも富んで2本でも3本でも揃えたくなる傘がある。
ブランド名は《waterfront(ウォーターフロント)》。国内洋傘市場の17%を占め、年間1870万本を売り上げる。
本書は、《ウォーターフロント》を世に送り出している(株)シューズセレクションの社長である著者が、顧客に感動を
与える革命的な傘「スーパーバリュー500」シリーズの開発と販売に至ったエピソード、品質へのこだわり、
低価格を維持するためのコスト削減の努力、経営理念、さらには、そもそも傘づくりに魅せられた少年時代の思い出
から、人生観、そして究極の傘づくりの夢までを綴っている。
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●「人類を傘から解放する」という大いなる野望を抱いて
傘にとりつかれ、ああでもない、こうでもないと、夢中になって傘づくりをしているうちに、わが社の傘は、
おかげさまで日本国内の洋傘市場で17%のシェアを占めるまでになりました。
新聞や雑誌などでは、このように「シェア」と表現されますが、僕は、これはお客様の「支持率」だと思っています。
《ウォーターフロント》を「いいね」と思って買ってくださるということは、その傘を支持してくださるということだからです。
それに「シェアが増えた」ではなく、「支持率が上がった」と言ったほうが、ずっと気持ちがいい。「たくさんのお客様からの
支持」 ととらえるほうが、断然気分がいいのです。
傘の年間販売数は、約1億1100万本(2013年)。日本の人口に近い本数が、「毎年」買われていることになります。
僕の傘はその17%ですから、だいたい1870万本。これは日本一だそうですが、100人いたら83人は
《ウォーターフロント》のことを知らない、ということでもあります。 だから、欲張りかもしれませんが、「もっともっと
支持されたい」 というのが、僕の願いです。
「いずれ人類を傘から解放する」という大きな野望もあります。朝出かけるとき、ほとんどの人が天気予報を見て、
「今日は雨が降らないか」をチェックしているのではないでしょうか。僕は、その必要がなくなるような傘をめざして
いるのです。雨が降るかどうかをいちいち気にしない、「万年筆くらいの大きさ」で、しまうときは手で畳まなくても
自然に元の形になる「折り畳まない折り畳み傘」が、僕の目標です。
●「タクシーのワンメーターより安くしたい」で決まった500円
「より品質の良いものを、できるだけ安く」――そのような信念のもとに研究開発を始め、改良を重ねて誕生したのが、
「スーパーバリュー500」シリーズです。何十色もあるカラフルな500円の折り畳み傘で、《ウォーターフロント》を
支える大黒柱に成長しました。
薄さ2.5cmの「ポケフラット」、直径3.5cmという超スリムな「ぺん細」、5段折でスマートフォンくらいにまで
小さくなった「スーパーポケミニ」などのラインナップがあります。
この「スーパーバリュー500」を世に出したのは、いまから10年以上前の2000年。おかげさまで、なかには
1アイテムで月間売上30万本という大ヒット商品も生まれました(ポケフラット)。できるだけ手ごろな値段でいい傘を
買えるようにしたい、という僕の夢が、傘づくりを始めてから14年後に、ようやく実現したのです。
どうして500円なのかというと、当時のタクシーのワンメーターが600円くらいだったので、それより安くしたいと
いう思いからです。つまり、値段が先に決まっていたのです。
初めて発売されたときは、「価格破壊だ」と言う人もいました。それまでの折り畳み傘は、だいたい3000円くらい
のものが多かったので、500円という価格はたしかに衝撃的だったでしょう。でも僕は、これは「破壊」ではなく、
「新たな価値の創造」だと思っています。「500円で、ここまでいいものができますよ」ということを、たくさんの人に
見てもらいたかった。
たとえばメッキ加工なども、定価1万円の傘と同じ工程でやっていますので、剥げたり、錆びたりしにくい。
そういう傘をつくっていけば、「安くたって、いいものはいい」ということが、お客様にもわかっていただけるでしょう。
ですから、僕がいちばんうれしいのは、500円の《ウォーターフロント》を5年も6年も使っていただいている、
というお話をうかがったときです。
●カラフルさで顧客を引きつけ、店全体の売上アップに貢献
シューズセレクションの傘は、値段だけでなく、カラフルな品ぞろえも大きな特徴です。店頭にずらりと並んだ
色とりどりの傘を見て、雨の日でもないのに、つい買ってしまった、というお客様のお話を聞くと、とてもうれしくなります。
こうしたお客様の行動パターンを生み出すために、小売店に対するアプローチとして、他のメーカーとは違った
納入方式をとっています。それが「アソート方式(多種類セット納入)」で、これは「スーパーバリュー500」を売り出すに
あたって、いちばん効果的だと考えたやり方です。
たとえば、12色セットで計36本のユニットでも、単純に1色3本ずつ、ということはありません。ユニットとしての
色のバランスを考えて組み合わせているのです。通常、傘は紺か黒、あるいはビニールというのが定番ですから、
売場は地味になりがちです。しかし、パステルカラーをベースにした《ウォーターフロント》の売場はとてもカラフルで、
それによってお客様を引きつけることができ、「選ぶ楽しさ」を提供することにもつながります。
そのため、ひとつのアイテムに何十色・柄というバリエーションを用意しています。「ポケフラット」で言うと、
全部で192色・柄あります(2014年2月現在)。だから、「何色も持っています」と言ってくださるお客様も多い。
色の組み合わせは、当初から当社で決めさせていただいています。というのも、小売店が色を決めると、
どうしても売れる色ばかり選んでしまいがちだからです。
たとえば、都心の駅前のお店はサラリーマンのお客様が多いので、黒や紺など沈んだ色がよく出ます。
だからといって、売場も暗い色ばかりだと、購買意欲がそそられません。それでは、急に雨が降ってきたときなど、
必要に迫られたときしか売れなくなってしまいます。
僕の考えたアソート販売の特徴は、カラフルさにあります。カラフルな傘がたくさん並んでいると、見ているだけで
楽しくなる。そうすると、あまり売れなかった色も売れるようになって、全体の売上がアップします。
●思いもよらない用途をお客様自身が考えてくれる
僕の心の中には、5、6歳の子供のころに見た、ひとつの懐かしい情景があります。当時の僕は、時間さえあれば、
番傘をつくっている近所の職人さんの家に勝手にあがり込んで、傘がつくられていく様子を見ていました。水をはじくよう
油が塗られた紙を、職人さんが骨組みだけの番傘に1枚1枚貼っていくさまを、飽きることなく、いつまでも眺めて
いたものです。 「傘ってきれいだな」
初めはものめずらしさからだったと思いますが、幼かった僕は、だんだん傘に惹かれていきました。長じてのち、
上京してさまざまな仕事をやっていた僕が、最終的に40歳で傘をつくるようになったのは、幼いころのこんな原風景が
あったからだと思います。
気がつけば、傘づくりを始めて30年近く経ってしまいました。ほかのことはまるでいけませんが、傘に関する
アイデアだけは次々とあふれてくるのです。
傘をつくり始めたときから、僕は「雨が降らなくても傘は売れる」と思ってきました。だから、「晴れの日だって
売れる」 というのがわが社の傘のキャッチコピーです。多くの企業が「いまは不景気だからものが売れない」と
言いますが、不景気だからこそ、安くていいものを探している人は多いでしょう。傘だって新しい価値を生み出せる
はずです。
たとえば、正月のお年賀として。また、バレンタインデーに、500円のチョコと500円の傘をセットで。ほかにも
結婚式の引き出物として名前入りの傘を用意されたお客様もいますし、モデルハウスの内覧に訪れたお客様への
ノベルティグッズとして注文してくださったハウスメーカーもありました。
豊富なカラーとデザイン、低価格で高品質だからこそ、さまざまな使い方ができるのが、シューズセレクションの傘
なのです。だから、僕たちが思いもよらなかった用途を、お客様自身が考えてくださる。本当に勉強になります。
このように、生活のなかでも可能性はどんどん広がっていくわけですから、天気は関係ありません。晴れていても
傘は売れるのです。
コメント: 500円のビニール傘は、どう考えてもプレゼント商品にはならないが、同じ500円の傘でも「ポケフラット」や
「スーパーポケミニ」なら結婚式の引き出物にしても恥ずかしくない。品質やデザインの違いだけの問題ではない。
仮に、「ポケフラット」と全く同じ傘を、売れ筋だからという理由で黒と紺しか作っていなかったとしたら、誰も
結婚式の引き出物にしようとは思わないだろう。《ウォーターフロント》の傘の価値は、売場まで含めたトータルな
マーケティング戦略が生み出しているのだと思う。まさに「新しい価値の創造」である。
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