ちょっと難しめのテーマですがお付き合いください。
もともと、“企業のサステナビリティ”などで使われていた、「持続可能性」を意味
する英語です。ネットには、「企業が利益を上げ、将来においても顧客に製品を供給し
続けられる可能性を現在において持っていること」とあり、企業の財務的な面のほかに、
環境の側面(環境保護活動)、社会的な側面(従業員に対する取り組み、社会貢献活動)
が包括されています。 サステナビリティと企業の社会的責任(CSR)とは切り離せない
関係にあります。
ところで、先に国連総会で、このサステナビリティに関する項目が採択されていますが、
この場合は、企業=国家ということで、各国におけるサステナビリティについて言及され
ているのですね。
(UN統一ロゴ)
サステイナブル・ディヴェロップメント・ゴール(Sustainable Development Goals=
SDGs)すなわち持続可能な開発目標は、2015年9月の国連総会で採択された具体的行動
指針(2016~2030年までをターゲットとした「2030アジェンダ」)で、持続可能な開発
のための17のグローバル目標と169の達成基準(ターゲット)で構成されています。
何のことかといえば、我々人間と地球の繁栄のための行動計画で、先ずは、あらゆる
形の貧困を地球規模で解消することが最大の課題であるとして、社会、経済、自然の各
側面から目標を設定して全世界で取り組んで行こうとする具体的項目を設定したのです。
17のグローバル目標とそれらの視点区分がウイキペディアに分かり易く纏められて
いましたので、以下に引用しました。 すなわち・・
<17の目標>
1 貧困をなくそう 2 飢餓をゼロに 3 すべての人に保健と福祉を 4 質の高い教育を
みんなに 5 ジェンダー平等を実現しよう 6 安全な水とトイレを世界中に 7 エネル
ギーをみんなに、そしてクリーンに 8 働きがいも経済成長も 9 産業と技術革新の基盤
をつくろう 10 人や国の不平等をなくそう 11 住み続けられるまちづくりを 12つくる
責任つかう責任 13 気候変動に具体的な対策を 14 海の豊かさを守ろう 15 陸の豊かさ
も守ろう 16 平和と公正をすべての人に 17 パートナーシップで目標を達成しよう
そして、これらを要素ごとに分類(グルーピング)して、さらに具体的な169項目を設定
されていました。・・
社会的包摂
1 (貧困)では、社会保障制度、金融サービスなど
2 (飢餓)では、栄養失調、農業生産など
3 (健康と福祉)、エイズ・結核・マラリアの根絶、有害物質・大気・水質・土壌
汚染など
4 (教育)では、公平で質の高い教育、生涯教育、識字など
5 (ジェンダー)、平等達成、人身売買、性的奴隷、強制結婚、社会保障など
10 (格差)、所得成長、能力強化、機会均等、国際制度、移民制度など
16 (平和と公正)、暴力殺人、児童虐待、法の支配、組織犯罪、汚職など
経済成長
7(エネルギー)近代的エネルギーへのアクセス、再生可能エネルギーなど
8(雇用と経済成長)起業家精神、同一労働同一賃金、失業の削減、強制労働廃絶など
9(技術革新、社会基盤)災害に強いインフラ、インフラ開発、イノベーションなど
11(都市と人間住居)住宅スラム、大気汚染・廃棄物、防災・自然災害など
12(生産と消費)リサイクル、リユース、廃棄物の削減、ライフスタイルなど
生物圏(自然資本)
6(水と衛生)飲料水、下水施設・衛生施設、水質汚染、海水淡水化・排水処理など
13(気候変動)気候変動対策
14(海洋)海洋資源保全、海洋汚染、海洋酸性化など
15(陸の生態系)生態系保護、森林管理、砂漠化、生物多様性など
以上には、概括的な項目しか表現していませんが、ここまで見てきた感想では、それ
ぞれに大事で、まことに結構なことですが、総花的に並べられているような懸念もない
わけではありませんが、でもよく考えてみると、これらの項目を一人で(単体で)実行
するということではなく、それぞれの分野に携わっている人、企業さらには行政のその
部分が真剣に取り組むべき項目であるわけですから、やはり大事なことであるのです。
そして、これまで、このような全貌に立って総合的に取り組みが示されたことはなかっ
た(と思います)ので、やはり画期的なことだと認識したのです。
経営戦略研究所からネット投稿されている論文がありましたので、現状を俯瞰する
データ(図表)を一部引用して以下に示します。
*論文:『持続可能性「Sustainabilityサステナビリティ」とは何か』
河口真理子氏 経営戦略研究所 経営戦略研究部 主任研究員
さてこの国連採択を受けて、日本政府は、持続可能な開発目標(SDGs)に係る施策の実施
について、全 国務大臣を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、
昨年2016年12月22日に「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」を決定しました。
ここで、優先課題として、「2030アジェンダ(国連の)」に掲げられている5つのP、
すなわち People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、Partnership
(パートナーシップ)に対応した8項目が示されています。
People(人間)
①. あらゆる人々の活躍の推進 関連する目標:1(貧困)、4(教育)、5(ジェンダー)、
8(経済成長と雇用)、10(格差)、12(持続可能な生産と消費) ②. 健康・長寿の達成
関連する 目標:3(保健)等
Prosperity(繁栄)
③. 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション ④. 持続可能で強靱な国土と
質の高いインフラの整備、 関連する 目標:2(食料)、6(水と衛生)、9(インフラ、産業化、
イノベーション)、11(持続可能な都市、人間居住)
Planet(地球)
⑤. 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会 関連する 目標:7(エネルギー)、
12(持続可能な生産と消費)、13(気候変動) ⑥. (生物多様性)、森林、15(海洋)等の環境
の保全 関連する目標:2(食料)、3(保健)、14(海洋)、15(生物多様性)
Peace(平和)
⑦. 平和と安全・安心社会の実現 関連する 目標:16(平和)
Partnership(パートナーシップ)
⑧. SDGs実施推進の体制と手段 関連する目標:17(実施手段)
先月(7月)には、国連で今年の本件会合が開催されており、各国の議論が持ち寄られて
いるところですが、国内では、加計学園、森友問題、防衛大臣などなど個別問題ばかりが
浮き彫りとなって、これらの大きな事案は殆ど埋没しているのではないかと感じます。
野党も、自らの分裂危機?などを抱えて大わらわで 人のことなど構っておれない?状態
ではないでしょうか。
日本の各大手企業は、こぞって本件に取り組んでいます。そんな中、手元の会報記事に、
㈱三菱ケミカルHD会長、小林喜光氏の 熱のこもった講演記録がありました。
『地球と共存する経営』と題する自社の経営方針およびその実行が述べられていて、
X軸:エコノミクス(利益、効率性 quarter)、Y軸:テクノロジー(イノベーション、
フロンティア decade)、Z軸:サステナビリティ(公益、環境 century)を取り、それ
ぞれ難しいが工夫して数値化し,これら三軸の合成で出来るベクトルを「KAITEKI経営」と
定義し、そこに企業価値を見出そうと実践して来たという。
Z軸のサステナビリティでは、環境・資源は勿論、ヘルス(健康)、コンフォート(快適)
に判断基準を置き、これを満たさない新規事業は立ち上げないこととした。 その結果、
創エネの有機太陽電池、省エネのLED、蓄エネのリチウムイオン電池材料のほか、アグリ
ビジネス、バイオ化学品などの次世代事業に着手したとあります。しかしこれらはまだ、
利益を見るに至っていないとのことでした。
そして、講演記事では、これら三軸にそれぞれ、X軸:経済の豊かさの実現、Y軸:イノ
ベーションによる未来の開拓、Z軸:社会の持続性の確保(人口・労働・教育・社会保障・
環境エネルギー・外交)を揚げて、それらの三軸で合成されるベクトルがすなわち
「国家価値」であり、これからは、最適化プロセスを追求する時代に移行した。これまで
のようなイデオロギーですべてを解決することはもはや不可能ではないか・・と言及され
ていました。