ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

パトリシア・プティボン 歌曲の夕べ(11/2) @東京オペラシティ

2009-11-03 | コンサートの感想
昨年に続いて来日してくれた「不思議な妖精」プティボンのコンサートを聴いてきた。
ジョン・ウィリアムスのコンサートと重なってしまい、10/31のオーケストラ伴奏のコンサートが聴けなかっただけに、私はこの日のコンサートを心待ちにしていた。

いやー、素晴らしかった。
プティボンのステージというのは、ちょっと他に類を見ないくらい愉しい。
「笑いあり、涙あり、涙のあとに感動あり」なんて書くと、どこかのテレビドラマのキャッチフレーズのようだが、まさにそんな感じなのだ。
もともと声の質・技術ともにずば抜けたものを持った人なので、普通に歌っても感銘を受けるはずだけど、ひとたびステージに出るとさらに魅力が倍加する。
それは、「私と一緒に音楽を通して素敵な時間を共有しましょう」という彼女の強いメッセージが、歌に、歌詞に、そして達者な演技を含む表情のすべてに込められているからに他ならない。
研究熱心な彼女のこと、きっと事前には随分時間をかけて準備しているはずだ。
しかし、ひとたびステージに出たらプティボンはエンタテイナーに徹する。
もちろん緻密な計算もあるのだろうが、聴衆に微塵もわざとらしさを感じさせないプロ根性は大したものだ。

昨年の淡いベージュ色のドレスとは異なり、この日プティボンは落ちついた黒のドレス姿で登場。
冒頭しっとりと格調高く歌われたヘンデルのアリアを聴きながら、そしてあの美しいバルバリーナのアリアを聴きながら、「今宵はこのしっとり路線で行くのかしら」と素直に思ってしまった私は何とも浅はか・・・。(汗)
次のデスピーナのアリアで、早くも私の予想は裏切られることになる。
ピアニストのスーザン・マノフともども原色系のカツラをつけて登場したプティボンは、一転コシ・ファン・トュッテの業師に変身。
そして続くリナルドの名アリアでは、またまた「しっとり」系に戻り、文字通り「泣かせて」くれた。
この日、私が最も感銘を受けたのは、ホールの照明を落として歌われたヘンデルの歌劇「アルチーナ」のアリア “緑の牧場よ”と、その静謐な雰囲気を受け継いでひたすら美しく奏でられたハイドンのピアノソナタ。
素晴らしかった・・・。
後半はよりアクティブな曲が並んだこともあり、プティボンの魅力がまさに満開。
笑って、泣いて、気がつくと、最後の「ドレッタの夢」が終わっていた。
31日に指揮をしたレヴィも飛び入り(いや仕組まれた小道具の一つ?)参加して、もう最高に愉しい2時間余りを過ごさせてもらった。

昨年、私はブログで、「もう、ナタリーの妹分なんて言わせない」と興奮気味に書いたが、そんなのはもはや当たり前。
スーパースターであるデセイとも、また違った道を歩み始めたプティボン。
来年はザルツブルクでアーノンクールと「ルル」を演じるようだが、日本にも是非来てくださいね。
あなたのコンサートだったら、何をさておいても行くという熱心な信者がワンサカいるのだから。

また、コンサートはもとより、サイン会、2次会のインド料理店までお付き合いいただいたyokochanさんにも感謝。
プティボンからもらったプラスのエネルギーが2倍になりました。(笑)
ありがとうございました。

<日時>2009年11月2日(月) 19時開演
<会場>東京オペラシティ コンサートホール
<曲目>
■ヘンデル:歌劇「アリオダンテ」より
  アリオダンテのアリオーゾ “ここでは、愛を”
■モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」より
  バルバリーナのカヴァティーナ “落としてしまったの、どうしよう”
  スザンナのアリア “恋人よ早くここへ”
■モーツァルト:歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」より
  デスピーナのアリア “女も15歳になれば”
■ヘンデル:歌劇「リナルド」より
  アルミレーナのアリア “私を泣かせてください”
■ハイドン:歌劇「薬剤師」より
  ヴォルビーノのアリア “ご機嫌よう、親愛なるセンプルーニオ”
■ハイドン:歌劇「オルランド・パラディーノ」より
  エウリッラのアリア “あなたの愛らしい面差しが”
■ヘンデル:歌劇「エジプトのジュリオ・チェーザレ」より
  アリア “この胸に息のある限り”
■ヘンデル:歌劇「アルチーナ」より ルッジェーロのアリア “緑の牧場よ”
■ハイドン:ピアノ・ソナタ第16番ニ長調より 第2楽章
■ヘンデル:「アルチーナ」より モルガーナのアリア “また私を喜ばせに来て”
   (休憩)
■ハイドン:
「英語によるカンツォネッタ」より
 “さすらい人”“するどい目つき”“忠実”“霊の歌”“船乗りの歌”
■プーランク:歌曲集「あたりくじ」より
 “バ・ブ・ビ・ボ・ビュ”
 “ハートの女王”  
■サティ: “あなたがほしいの”
■ガーシュウィン:3つの前奏曲より 1.変ロ長調(ピアノ・ソロ)
■バーンスタイン:コミック・オペレッタ「キャンディード」より
  キャンディードのソロ “この程度のものか”
■プッチーニ:「つばめ」より マグダのアリア “ドレッタの美しい夢”
(アンコール)
■カントルーブ:「オーヴェルニュの歌」より“捨てられた女”
■オッフェンバック:「ホフマン物語」より“森の小鳥は憧れを歌う”
■バーンスタイン:「キャンディード」より“It must be me”
<演奏>
■パトリシア・プティボン(ソプラノ)
■スーザン・マノフ (ピアノ)


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6 コメント

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信者のひとりです (yokochan)
2009-11-04 00:30:33
romaniさん、こんばんは。
昨晩はどうもありがとうございました。
あんなすばらしい席でプティボンが聴けて本当に感謝しております。

>笑いあり、涙あり、涙のあとに感動あり<
まさに、彼女のコンサートを言い得てますね!
もう何度でも、そしていつまでもはまっていたい、プティボンワールドです。

PS
電車の乗り換えの計算違いもあり、乗継先で終電に間に合いませんでした。
えい、くそっ、今日は気分がいいから歩いて帰れるわ、と歩きだしたら雨が強くなり、それでも根性で100分も走破しました(笑)
ずっとプティボンの歌声を思い出しながらで、歩けるもんですねぇ。
素晴らしいコンサートですね。 (エルザです)
2009-11-04 00:55:32
コメントありがとうございました。…どうかこれからもよろしくお願い申し上げます。

素晴らしいコンサートですね…私は実は声楽はまだまだ…いえ殆んど勉強不足なので、お恥ずかしい次第です。

バレエは好きなのですが、…これから声楽やオペラも楽しみたいと思っています。

音楽…本当に心が豊かになりますね。

私の小学校の音楽の先生が『いつも心に音楽を。』…大人になった今、本当にそう思っています。

リンクやトラックバックが出来なくて?勉強不足なのですが、よろしくお願い申し上げます。
romani様のサイトもとても楽しみに致しております。

寒くなりました。お風邪など召されません様、どうぞお大事になさってくださいませね。
気になっていたコンサート (ご~けん)
2009-11-04 06:24:53
romaniさん、やはりyokochanさんと行かれたのですね! こちらは昨年の延長路線で、さらに楽しいコンサートになりそうな予感がしていました。
プティボンには目が離せないです。youtubeで見る今年のsalzburg音楽祭も、大変楽しいです。次回はぜひご一緒しましょう。
>yokochanさま (romani)
2009-11-04 23:02:27
こんばんは。
2日は、遅くまでお付き合いいただき、ほんとにありがとうございました。まだ愉しいステージの余韻が残っています。

>乗継先で終電に間に合いませんでした。
えっ、そうだったのですか。
しかも雨の中を100分も歩かれた。
凄い・・・。
ちょっと私にはできそうもありませんが、やはりプティボンのオランピアよろしく自動ネジ巻きシステムが作動したのでしょうか(笑)
でも彼女の「気」がyocohanさんに乗り移ったことだけは確かなようですね。
また、次回もどうぞよろしくお願いいたします。
>エルザさま (romani)
2009-11-04 23:18:45
こんばんは。
>これから声楽やオペラも楽しみたいと思っています。
是非是非そうなさってくださいませ。
私もかつては「器楽専門の人間」でして、歌・とくにオペラは現代音楽の次に苦手な時期がありました。
それが生の舞台を体験する一方で、黒田恭一さんや吉田秀和さんの著作を読んで少しずつ興味をもち始め、気がつくといつの間にかオペラの甘い蜜の世界にどっぷり浸かっておりました。
しかも、この蟻地獄は一度はまってしまうと、どうやら二度と抜けられないようでございます。
でも「それもまた素晴らしきかな」と諦めて、是非この蟻地獄においでください。お待ちしております(笑)
>ご~けんさま (romani)
2009-11-04 23:25:46
こんばんは。
ご~けんさんは、31日のコンサートのほうに行かれたのですね。
せっかく2種類プロを用意してくれたのですから、万難排して両方行けばよかったと、私もちょっぴり後悔しています。

昨年も感じましたが、彼女のステージはちょっと特別な魅力がありますよね。
次回は、是非ご一緒しましょう。楽しみにしております。

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