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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

亡き友の枕辺で飲んだ酒を求めて

2017-06-02 11:34:47 | ひとを弔う
 もう先月になる。高校時代からの友人を亡くしたことはすでに書いた。彼を含む5人組が当時のその高校の文系サークル(新聞部・文芸部・演劇部・歴史研究会・うたごえ運動支部など)を横断的に牛耳っていたことも書いた。

 その通夜のことだ。基本的には家族葬だが、私たち4人が招かれた。うち一人、岡崎在住の友は、自身体調が悪くて欠席。残るは3人だが、そのもとに遺族の子息(私たちとは顔見知り)から申し入れがあった。最寄りの駅まで送迎するから、決して車で来ないでほしいというのがそれだった。

 ようするに酒を飲むということだが、それが故人の遺言だというのだ。亡くなった彼の枕辺で、私たちが語らいながらおおいに飲んでほしいということだった。
 それに従った。

             

 通夜の儀式が終わったあと、彼の棺を祭壇から控室に移し、私たちはその枕辺に陣取って飲んだ。
 私たちと息子二人、それに彼に先立った連れ合い(俳句を嗜むなどなかなかいい女性だった)の弟さんという人とで彼の思い出をこもごも語らいつつ飲んだ。

 そのとき、用意されていたのが上の写真の缶入りの酒であった。「ふなぐち 菊水 一番搾り」とある。
 「ふなぐち」とは、蔵元の説明によれば以下のようだ。

 【もろみを搾る「ふね」から流れ出る搾りたての原酒を当社では「ふなぐち」と呼び、酒蔵を見学に来られた方だけに振る舞われる「蔵の酒」として大変な評判を博していました。 火を一切あてない、調合もしない酒本来の姿そのままの「ふなぐち」。 もろみを搾る「ふね」から流れ出る搾りたての原酒を当社では「ふなぐち」と呼び・・・・(略)・・・・ 火を一切あてない、調合もしない酒本来の姿そのままの「ふなぐち」】

 そんな次第で、たかが「缶入り」などとみくびるなかれ、けっこう旨い。「どうしてこの酒を?」という問いに、息子たちは「親父はこれを愛飲していたのです」とのこと。
 長い付き合いで、数え切れないほど盃を重ねてきたが、うかつにもそれは知らなかった。

 彼の遺言に忠実に、あるいはそれ以上に、私たちはしこたまそれを飲んだ。そして語った。はじめは遺族の手前、彼の美点を述べていたはずが、いつの間にか悪口に変わっていた。悔しかったら、起き上がって一緒に飲めといわんばかりに話が弾んだ。
 それが彼との私たちの別れであった。

             

 それから10日も経っていない昨日、酒専門店の前を通りかかり、通夜の酒を思い出した。車を駐車場に入れ、広い店内を探したがそれらしい缶入りの酒はない。
 よく探したら、同じ酒蔵の純米酒のの一升瓶があったので迷わずそれをゲット。彼と最後に外出した折、私がアッシーを努めた礼だといって麦焼酎を買ってくれた彼の行為を思い出し、少し胸を突くものがあった。

 入手したこの酒、むかしのようにグビリグビリと飲むことはできないが、しんみりした晩など、彼を忍びながらチビリチビリとたしなみたい。
 高校、大学と私のいささかワイルドな目覚めの時期があった。そのなにがしかを彼と共有した。そしてそれ以降の付かず離れずの付き合い、そして晩年は穏やかな語らいの機会を何度ももった。
 それらを反芻しながら飲むにはいい酒だと思う。


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かなしい
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