ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

怪奇趣味の本格推理作家 カーと三津田信三

2013年05月14日 | ミステリー小説
 ジョン・ディクスン・カー(別名カーター・ディクスン)は本格物の推理小説作家として定評があり、私も大好きである。作風の特徴として、①密室事件などの不可能犯罪②幽霊魔女などにまつわる怪奇趣味③ユーモラスな登場人物(探偵)の三点が挙げられる(二階堂黎人「名探偵の肖像」講談社文庫版の「地上最大のカー問答」による)。最初に読んだのは子供用に書き直された「魔女のかくれ家」(あかね書房)であった。この作品にはまさにその三大要素が盛り込まれており、とりわけ「怖さ」に布団をかぶりながら夢中になって読んだものだ。カーの作品では密室を扱ったものが多く、物理的にも心理的にも様々なトリックが考案されている。そこも大きな魅力だが、実は私は怪奇趣味の側面がけっこう好きで、カー好きな理由もそこにある。最近は「黒死荘殺人事件(ブレーグ・コートの殺人)」(創元推理文庫)を購入し、今途中である。(実は買っても読み切らずに置いておく習性(積ん読)のため、この本は買ったことを忘れて2冊も購入。)幽霊の出る館、降霊術など最初から話しに引き込まれていく。(写真上:2冊購入してしまった黒死荘…とカー作品)
 ところで、日本の作家にも怪奇趣味を作風とした推理作家がいる。三津田信三である。彼の場合は完全なホラー・ミステリー作家である。デビュー作の「ホラー作家の棲む家」(後に「忌館」と改題)を書店で手にしたのが彼を知ったきっかけであるが、その作品が実に気持ち悪く、第一印象はあまり良いものではなかった。ところが、次に読んだ「首無しの如き祟るもの」はまさにカーの三大要素が織り込まれたような作品であった。不可能犯罪や不気味な現象に対する論理的説明、探偵役の刀城言耶のユーモア(人物が)など、この作品で改めて三津田ワールドにのめり込んでしまった。一応の解決を示しながらも疑問を残すような結末もカーター・ディクスンの「火刑法廷」の趣がある。続いて読んだ「厭魅(まじもの)の如き憑くもの」も日本的怪奇と幻想の世界で、加えて最後に示される事件の複数の解答に読者は翻弄される。どちらも登場人物は多く、横溝正史の雰囲気も感じさせる。正直言って「首無しの…」は途中真相の一端に気がついてしまったが、それにしてもホラーミステリーとして抜群に面白かった。続く「作者不詳」は迷宮草子という同人誌を巡る怪異現象の話。各話を読み始めると実際に読み手の身辺に怪異心霊現象が発生し、物語の中の謎を解明することでその危険が回避できるという内容。手に汗握る展開で、実に読ませてくれた。三津田氏は密室ものなども扱い、今後も頑張って新作を発表していただきたい作家の一人である。(写真下:講談社版を並べるだけで独特の雰囲気。)
 こんな状況なので、数年に一回は行くことのある京都にまつわる怪異と土地を解説した「京都妖怪案内」(佐々木高弘・小松和彦共著)も読んでしまった。この趣味、さらにエスカレートしていきそうである。


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