六花の舞。

「六花の舞」、Ⅰ・Ⅱともに完結しました。最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございましたm(_ _)m

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ダイヤモンド・エッジ<第二部>-【66】-

2017年05月05日 | 六花の舞Ⅱ.


 さて、連載もだんだん終わりに近いということで、ここにも書くことがなくなってきました

 なので、そんな時には最近読んだ本や映画のことでも書いてお茶濁しとけというのが当ブログの慣例(?)なので、今回はエーリヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」について何か書いてみようと思います

 実をいうと、この本を読んだことが、わたしが今書いてる小説を書くきっかけになったというか、なんていうか(^^;)

 いえ、わたしエーリヒ・ケストナーの本ってこれまで読んだことなかったんですよ

 唯一知ってたのが、「ふたりのロッテ」とこの「飛ぶ教室」くらいで……「飛ぶ教室」のほうは、児童文学の名作みたいに書いてあるのを雑誌や本などで見かけてましたから、一度読んでみたいな、とはずっと思ってました。


 >>ボクサー志望のマッツ、貧しくも秀才のマルティン、おくびょうなウーリ、詩人ジョニー、クールなゼバスティアーン。個性ゆたかな少年たちそれぞれの悩み、悲しみ、そしてあこがれ。寄宿学校に涙と笑いのクリスマスがやってきます

(『飛ぶ教室』エーリヒ・ケストナー作、池田香代子さん訳/岩波少年文庫より)


 これが、本の後ろのほうに書いてある「飛ぶ教室」のあらすじでしょうか。

 とりあえず、自分的に読み終わって思ったのが「嗚呼、いい児童文学だなあ」との、しみじみした思いかもしれません。

 そして、お話のあちこちにユーモアが散りばめられているので、この部分がとにかく読んでいて楽しい♪(^^)

 ただ、ユーモアと同時に道徳的な部分もあって、主人公たちが模範とする先生がふたりいて、そのひとり目がベク先生こと「正義さん」で、もうひとり目が「禁煙さん」(笑)

 この主人公の男の子たち五人は、ギムナジウムで寮生活をしているんですけど、「正義さん」は寮の舎監もしている先生で、「禁煙さん」は「正義さん」には面と向かっては言えないようなことを相談しにいく、学校の近くに住んでいる男の人です。そして、少年たちは「正義さん」のことも「禁煙さん」のこともどちらも同じくらい尊敬し、愛しているのでした

 今は時代が悪いせいかどうか、こうした形で学校の先生のことを「心から慕う」といったことはなかなか難しいかもしれませんが、おそらく作者のケストナーさん自身に、やはりそのように心から尊敬する先生がおられたのだろうという気がします。そうじゃないとこうした文章は書けないと思うので(^^;)

 なんにしても、最初の読みはじめから読者はすぐに心を掴まれてしまいます。わたしなど、最初の「まえがき、その一」のところに箇条書きにされているタイトル(?)を読んだだけで、「これは続きを読みたい本だ」と思ったほどでした。

 そして「まえがき、その二」の三番目、「ヨーナタン・トロッツ少年が大西洋を渡ったこと」まで来ると、もうすっかり心は鷲掴みです(笑)

 というのも、このヨーナタン・トロッツ少年(愛称:ジョニー)、両親が犬と猫のように仲が悪かったため、母親が家を出ていってのち、父親にわずか四歳で捨てられてしまうのです

 しかも、この時のやり方がひどい。ニューヨーク港からドイツ行きの船に乗せ、十ドル札を子供用の財布に突っ込み、ジョニーの名前を書いた厚紙の札を父は息子にかけました。そして船長さんに「息子をドイツまで、どうかよろしくお願いします。ハンブルクにはこの子の祖父母がむかえに来ますので」――といったのち、父親はいなくなってしまいました。

 一方、ジョニーはハンブルクについてから父方の祖父母がやって来るのを待っていたにも関わらず、そんな人、いつまで待ってもやって来やしません。何故ってこの祖父母はもう何年も前に亡くなっていたから!そうなのです。こうしてヨーナタン・トロッツは僅か四歳にして両親に捨てられてしまったのです。


 >>当時ヨーナタン・トロッツは、自分がどんな目にあわされたか、わかっていなかった。けれど大きくなると、夜、眠れないままに涙を流すことがあった。ジョニーがしっかりした男の子だということは、ぼくが太鼓判をおす。それでも、四つのときにあじわわされた悲しみは、生涯、忘れられないだろう。


 もうここまで読んだだけで、「この本は絶対に最後まで読もう!」といったような気になります(笑)

 まあ、話のほうはギムナジウムにおけるある短い期間のことを描いている、といっていいのかな。ジョニーは生い立ちこそ不幸かもしれないけれど、心優しい素敵な子だし、ボクサー志望のマッツはいつでも何かものを食べ、喧嘩となったら勇敢な強い子といった感じ。貧しくも秀才のマルティンは、奨学生として学校に通っている頭のいい子です。おくびょうなウーリくんは、最後のほうではおくびょうでなくなっていたり(笑)クールなゼバスティアーンも賢いよい子ですね。なんかクラスにひとりくらいいそう……みたいなタイプかなあ。

 なんにしても、自分的に面白かったのは、彼らの通うギムナジウムと歴史的に対立関係にある実業学校の連中と喧嘩になるところ。

 人質を取ったり奪い返したり、1対1で殴りあったりと……さらに、ところどころに散りばめられてあるケストナー先生のユーモアのせいで、さくさくページをくって続きを読んでいってしまいます


 >>へこたれるな!くじけない心をもて!わかったかい?出だしさえしのげば、もう勝負は半分こっちのものだ。なぜなら、一発おみまいされても落ち着いていられれば、あのふたつの性質、つまり勇気と賢さを発揮できるからだ。ぼくがこれから言うことを、よくよく心にとめておいてほしい。賢さをともなわない勇気は乱暴でしかないし、勇気をともなわない賢さは屁のようなものなんだよ!世界の歴史には、賢くない人びとが勇気をもち、賢い人びとが臆病だった時代がいくらもあった。これは正しいことではなかった。

 勇気ある人びとが賢く、賢い人びとが勇気をもつようになってはじめて、人類も進歩したなと実感されるのだろう。なにを人類の進歩と言うか、これまではともすると誤解されてきたのだ。


 >>平和を乱すことがなされたら、それをした者だけでなく、止めなかった者にも責任はある。


 児童文学かもしれませんが、これらの言葉には大人も読んでいてハッとさせられますし、わたしもこれ一作ですっかりケストナーのファンになってしまったので、いずれ機会があったらまた他の本も是非ぜひ読んでみたいと思っています♪(^^)

 それではまた~!!



     ダイヤモンド・エッジ<第二部>-【66】-

 ザグレブ冬季オリンピックが終わると、次には世界フィギュア選手権が控えていた。

 けれど、光も蘭も練習のモチベーションをなかなか上げることが出来ず、光などはこのまま世界選手権には出場せずに現役を終えたほうがいいのではないかと思ったほどだった。実際、オリンピックで金メダルを取った選手はその年の世界選手権を欠場することが多いことを思えば……だが、光はこれが現役最後の世界選手権だと思い、これまでも気持ちが乗らなかった時にずっと続けてきたことを同じように行った。つまり、とにかく淡々といつも通りの練習メニューを反復させるということである。

 蘭の場合、モチベーションが落ちたといっても、光ほどではなかったかもしれない。何分、昨年の世界フィギュア選手権では第三位の銅メダルに終わっているし、オリンピックシーズンにオリンピックと世界選手権の両方で金メダルを取りたいという欲もある。けれど、もし光とのことがなかったら、おそらく今自分の頭はスケートで勝つことだけで一杯だったろうことは蘭の中で間違いのないことだった。だが、光との恋愛が気持ちの面に緩みを与えていたのは否めない事実だったといえる。

(恭一郎も、これが昔だったら……もっとわたしに渇を入れてきただろうにな。なんでだろう。ザグレブオリンピックが終わってから恭一郎はなんか少し変わった気がする。おまえもオリンピックで金メダルを取ったほどの選手なんだから、コーチである俺があれこれ指図しなくても、自分のやるべきことはわかってるだろうみたいな、そんな感じ……)

 また、普段一緒に暮らしていても、光のことを何故かやたらと話題にしたがった。それでとうとう「たぶん来シーズンは休んで結婚式を挙げることになると思う」と白状させられたのだった。こうしたことについて恭一郎がどういう考えなのか、蘭にはいまいち掴みかねたのだが、以前から感じていたとおり恭一郎の中では「フィギュアスケーター灰島蘭≦女の幸せを手に入れたスケートの愛弟子」といった感じらしいとは漠然と感じていた。それで思いきって蘭がスケートの師であり義理の父にも等しい彼に本心を聞いてみると……。

「そりゃあ蘭、おまえが女だからさ」

 スポーツ雑誌の取材で光がいなくて、恭一郎とふたりきりで夕食を食べていた時、彼は大根の煮つけを食べながらそう言った。ちなみにその日の晩ごはんのおかずは煮しめだった。

「まあ、如月が俺の息子と結婚するっていうんで引退するっていう時にも、惜しいとは思った。あれだけの才能がたかが色恋とか結婚なんぞのためになくなることを思うとな。もちろん、俺とリョウが普通に親子として暮らしていた経緯があったなら、話はまた別だったかもしれん。あんなおかしな息子のところに来てくれるなんて……という感じで、俺も茉莉子と同じように諸手をあげて喜んだかもわからん。だがやはり、俺の中ではどちらかというと「あんな変な男と結婚するために」といった意識のほうが大きかったからな。だがまあ、如月は個人的な理由ですぐに復帰してきて、精神的にも余裕のある滑りで圧倒的な存在感を見せつけた。そしてそのあとあいつが妊娠して正式に引退するっていう時には……「ああ、本当に良かった」と思った。如月にとってはあれが絶頂期にある滑りだったろうから、それを遺憾なく発揮したあとで引退っていうのは、ある意味理想的だとすら思った。もっとも本人は、世界選手権の金メダルだけは持ってなかったから、そこで金に輝いてから引退するのが理想だったらしいがな……なんにしてもだ、蘭。おまえは今二十歳にして取るべきタイトルはすべて持っている。俺にはもう、蘭に教えてやれることは何もないし、あとはプライヴェートでも女として幸せになって欲しいという、そんなことくらいしかおまえに望むことはないよ」

「じゃあ、わたしが男だったらどうなの?」

 蘭は何か合点がいかなくて、箸で里いもをグサッと刺して食べた。それから花の形の人参も。

「そりゃあ今ごろケツぶっ叩いて、オラオラとばかりしごいてるだろうな」

 蘭はここでカチンとくるあまり、危うくちゃぶ台に箸を投げだしそうになった。

「なんで!?ようするにわたしが今恭一郎にコーチとして望んでるのはそういうことだよ!わたし、四回転トゥループの次は、サルコウに挑戦したいと思ってるんだ。それで初めて女子選手でも男子と対等っていうくらいのレベルに近づけると思ってる。そのためにはわたしには恭一郎の協力が必要なんだよ。つまりね、男子並に鍛えてほしいっていうか……」

 ここで恭一郎がフッとあんまり優しい顔で微笑ったため、蘭にしてもそれ以上激しい言葉は続けられなくなる。

「おまえがこの屋敷に来て、約五年か……まあ、色々なことがあったな」

 恭一郎は三つ葉の入ったシジミ汁を一口飲むと、一度箸を置いていた。

「正直、長かったような気もするが、過ぎてみればあっという間だったような気もする。蘭、俺はな、今とても幸せだし、嬉しいと思っている。おまえも光も金メダルを取って、一年以内には結婚するつもりだという。俺にとってはこれ以上に一体、何を望むことがある?」

「だって、そりゃあ……」

 蘭にしても、それ以上言葉を続けられなくなった。確かに今蘭は、近づきつつある春のように幸せだ。けれど、三月末にある世界選手権で勝つためには、そうしたものは少し切り離しておいて、ハングリー精神をもっと養う必要があると思っていた。

「ようするにな、蘭。おまえが男で仮に光が……ちょっと笑ってしまうがな、まあ女だったとしよう。で、光子のほうはオリンピックで金メダルも取ったし、今シーズン限りで引退して結婚するという。実際、それはこれ以上もない形だな。それで蘭が男で俺の元に選手としていた場合――まあ、俺は今ごろリンクで怒鳴り散らしていたろうよ。そんなふにゃけた滑りで、これから妻子を養っていけると思ってるのか!?とでも言ってな。つまり、問題はそういうことなのさ。いくら男女同権だの、共働きがどうのといったところで、今の日本の社会の実態がそうだからな。それに、フィギュアスケートは金にはならんスポーツだ。そんな中で光は比較的恵まれた条件を備えていると言えただろう。本人がもし、これから結婚するっていうのに、依然として「あれも嫌だ。これもやりたくない」なんぞとほざいていたとすれば、俺としても五時間ばかり正座させて説教していたことだろう。だがあいつはオリンピックで金メダルを取ったことが自信になったのかどうか、かなりしっかりしてるよ。いや、蘭のお陰で男としてしっかりしてきたというべきか……自分が旬な存在なのなんて今だけだから、依頼の中で「それは流石にちょっと」っていうもの以外は、自分でも向いてないと感じるものでもなんでも、最低一度は挑戦するつもりらしいからな。ゆえに、俺も今は光に対しても言うべきことは何もない」

「でも、やっぱりそんなの変だよ、恭一郎。だって、スケートはスケート、プライヴェートはプライヴェートでしょ?わたしが言ってるのは、恭一郎にこれからもコーチとして男子並みに特訓して欲しいっていうことだもん。それと光と結婚するっていうこととは、全然別のことだよ」

 恭一郎は箸をもう一度手にすると、トロの刺身にわさび醤油をつけて食べた。こうした自動的に美味しい手料理が出てくる生活とオサラバすることを思うと、彼にしても感慨深いものがある。

「そう理屈で俺を苦しめるな、蘭。俺とおまえと光は、おそらくあんまり長く一緒にいすぎたんだ。もしおまえが俺と今のように同居してなくて、リンクでしか接点はないという師弟関係だったとしたら、俺もおそらくおまえに今後も厳しく接することが出来たろう。だがもう無理なんだ。蘭が四回転サルコウを習得することに対して、俺はもうおまえが四回転トゥループを跳んだ時ほどには情熱を傾けられない。それより、そんなに激しい練習をしてもし今子供がお腹にいたとしたらどうするのだろうとか、そんなことしか考えられんからな」

「そんなの……四回転だけじゃないよ。三回転でだって転倒はするし、そういう意味じゃ条件は一緒じゃない。それにわたし、現役でいる間は妊娠したりしないよう、気をつけるつもりだし。そのためにピルだって飲んでる」

 恭一郎は露骨に顔をしかめると、また一旦箸を置き、それから酒の力に逃げるようにおちょこに手を伸ばして飲んだ。

「だからようするに俺はもう、おまえと光の生活について、細かいことを知りたくないんだ。もっとも、光は今シーズン限りで俺の手を離れるから、問題はおまえだよ、蘭。スケートの調子が悪ければ、光と喧嘩でもしたのだろうかとか、余計なことを色々考えることになる。これが他の選手であればな、プライヴェートで何があろうと、リンク上に持ちこんだ時点で関係なくこってり絞って目を覚まさせてやればいい。だが俺の場合、おまえにだけはもう、そういうことが出来なくなったんだ」

「……じゃあわたし、これから一体どうすればいいの?」

 それまでは、元気よく箸が動いていたにも関わらず、蘭もまた絶望のあまり手が止まった。

「そうだな。日本国内で他のコーチを探すか……より優れたコーチについてもらいたいなら、海外へ行ったほうがいいだろう。俺はな、蘭、もともとおまえのことは最低でも一度、海外へ出すべきだとは思ってた。光のことにしてもそうだ。やれ英語がしゃべれないだの、性格的に内気で周囲に溶け込めないだの言ったところで、実際に移住してみたらしてみたで、それなりになんとかなる……というより、なんとかならなくても自分でどうにかするしかなくなるからな。そしてそうしたところでついた人間としての胆力ってものが、スケートの技術と同時にとても重要なものなんだ。だが、俺は光本人の意向も尊重して、夏にミーシャのところへ出すくらいのことしかしなかった。何故といえば、あいつの意向と俺本人のコーチとしての我が儘が一致してたからさ。光のことは俺が見出して、自分とタイプの似た選手だと思い、七つの時から手塩にかけて育ててきた。ようするに自分の手元から離したくなかったわけだ。そして蘭、そのことはおまえに対してもまったく同じように感じたから、唯一ライアンのところへ出すということ以外には、海外へ行くよう強くは勧めなかったわけだ」

「じゃあ、礼央のことをアーヴィングにやったのは、あいつはそんなに可愛くなかったからってこと?」

 蘭はこの時、少しばかり意地悪な気持ちになっていたため、そんなふうに聞いていた。物凄くショックだった。光と結婚するということは、もう恭一郎にひとりの選手として扱われなくなることだなんて。

「馬鹿を言うな。選手にはそれぞれ個別性ってものがあるからな。あいつはあのまま俺のところにいたんじゃ伸び悩む一方だと思ったから、ちょっとした荒療治を施したっていうところだ。もちろん、それだって最終的にうまくいったから良かったものの、あいつはあの性格だから、やっぱり向こうに馴染めないと言ってとんぼ帰りしてくる可能性もあったろう。その場合はその場合で、また俺のところで面倒を見るつもりではいたさ。けどあいつは来月にも、一回り大きくなって俺の元に戻ってくる。コーチとしてこんなに嬉しいことはないんだぞ、蘭」

「うん。ごめん、恭一郎……嫌な言い方して。ただわたし、恭一郎以外のコーチだなんて、考えてみたこともなかったもんだから。国内だったらやっぱり恭一郎がコーチとしてわたしには最高だし、海外なんて言っても……光は光でこれから主に日本にいて活動していくことになると思うし。それに館神FSCでコーチにもなるんだろうから……」

 この時、蘭の中で初めて、将来における幸福な未来像のようなものが音を立てて崩れはじめた。そして思った。もし最初から光と結婚するということが最愛のコーチである恭一郎との別れを意味するのなら、果たして自分は彼のプロポーズを受けただろうか、と。

「光とも話しあってよく考えろ。俺もな、初めは全然そんなつもりじゃなかったんだ。蘭が光と結婚しても、これからも変わらずおまえのスケートのコーチでいられると思ってた。だが、光もオリンピックで金メダルを取り、もうこれ以上はないという形に色々なことが収まってみると……流石の俺にももう無理だということがわかった。それに蘭、おまえが今していることは不自然だとも思うぞ。プライヴェートではこの上もなく女として幸せなのに、スケート競技では男のようにハングリー精神でギラギラしている必要があるだなんてな。おまえがそんなふうに無理をしてるのが透けて見えるだけに……俺はもうおまえに厳しくしたりは出来ない。もう十分だから女として幸せになれとしか、俺には言うことは出来ないんだ」


 ――このことのあったのが、ちょうど三月三日の雛祭りのあった日のことだった。館神家では雛祭りが近くなると必ず雛人形を出す。というのも、恭一郎の祖父母が娘の栞のために小さい頃に買った立派な雛人形があり、彼女が亡くなってからもその習慣というのは祖父母の間で続けられていたからだ。

 この日、蘭は例の石炭ストーブのある部屋に置かれた立派な雛飾りの前に座り、初めてこの家に来て、恭一郎が雛壇を飾りはじめるのを手伝った時のことを思いだした。

『変なのー。恭一郎男なのに、どうしてわざわざこんなの飾るの?』

 蘭の実家は貧乏で、雛人形などというハイカラなものは一度として飾ったことはないし(というより、そんな高価なものを買うお金がなかった)、智子のところでは毎年「女の子のお祭り」として祝いはしても、部屋が狭かったせいもあり、雛人形までは飾ったことはなかった。

『うちは毎年こうしてるんだ。というのも、じいさんとばあさんがな、母さんが死んでからも毎年飾ってたから……まあ、今は蘭もいるし、こいつらもきっと本来の目的が果たせて嬉しいだろう』

『そういえば、なんで三月三日に雛祭りなんてするんだっけ?』

 これまで毎年大切に手入れされてきたせいか、お内裏様もお雛さまも、他の五人囃子や女官たちもとても綺麗だった。それどころか何十年も昔に買ったものとは思えないくらい古くささのようなものがまるでない。

『そんなことも知らんのか。女の子のすこやかな成長を願って行うものだろうが。もっとも昔は、人形でオママゴトすることを通して家事を覚えるといった意味合いもあったらしいがな、今はまあ桃の花を飾って昼食か夕食にはちらし寿司でも食うってところか』

『ふう~ん。そういえば智子さんも毎年、ちらし寿司作ってくれたよ。あと、いなり寿司も作ってくれたっけ。これがね、すっごく美味しいの!そうだ、わたし今度、恭一郎に作ってあげてもいいよ。ちらし寿司とおいなりさん』


 ――実際、このおいなりさんと一緒に作った蕎麦は恭一郎に大好評だった。

 その頃はまだ今ほど光が館神家にも入り浸っていなくて、蘭はただひたすらに恭一郎に喜んで欲しくて、休日には料理に腕を揮ったものだった。もちろん、だんだんにそのことがあまりに当たり前になっていき、蘭は光が喜んでくれることのほうに新鮮味を見出していったという点はあるものの……。

(でもそんなのきっと、一度結婚して一緒に暮らすようになったら、光だって同じだよね……)


 そして三月三日がすぎ、啓蟄の日だった三月六日に、これもまた毎年の慣習として恭一郎は雛人形を片付けはじめたのだが、スケートの練習で疲れていたため、蘭は「めんどくさーい」などとぶちぶち文句を言っていたものだった。

『恭一郎、べつにこんなの、次の休みの日でいいじゃん。よく雛人形って片付けるの遅れるといき遅れるって言うけど、どうせわたし結婚なんかしないし、ずっとここにいて恭一郎の老後の面倒見るんだから、それでいいじゃん』

『馬鹿いえ。うちでは毎年、雨水に雛人形を出して、啓蟄の日に片付けるという習慣なんだ。嫌なら手伝わなくていいから、ぶちぶち文句ばかり言って俺の邪魔をするな』

『わかったってば!じゃあもう文句言わないから、手伝ってもいい?』

『ああ。じゃあ、そっちの薄い和紙に女官と五人囃子どもを包め。それから丁寧に感謝の心をこめて桐の箱にしまうんだぞ。もししなかったら来年出す時にはこいつらも機嫌を悪くして、着物のあたりをカビさせているかもしれん』

『変なのー。人形がカビるかどうかなんて、ただの物理的な条件によるものじゃない?第一、一年の間も密閉空間に閉じ込められてたら、どっかこっか傷んでくるのが普通だよ』

 蘭は和紙に丁寧に五人囃子を包むと、桐の箱にしまいはじめた。どうもちゃんと決められた位置に順にしまいこんでいかないと、全部がうまく片付かないことになるらしく――恭一郎は口うるさく「違う!そっちじゃない」などと言っては蘭のことを叱りつけた。

『まあ、出した時に少しカビてるくらいなら、ちょっと修繕すればいいだろうからいいが、全身カビだらけにでもなってたらもうどうにもならんからな。幸い、今のところそういうことはないから、ちゃんと心をこめて丁寧にしまえば、こいつらもまた来年に向けて心を備えてくれるってことなんだろう』

『へー。じゃあぞんざいに扱ったら今度は逆に呪いの人形と化すってこと?』

『さあな。とにかく俺は毎年じいさんとばあさんがやってたことを同じように繰り返してるっていうそれだけだ』


 ――蘭は赤い敷物の上に飾られた雛人形を見上げて、この時なんだか少し不思議な気持ちだった。

 この屋敷へやって来てから、二十四節季のひとつである雨水に蘭は恭一郎と一緒に雛人形を出し、啓蟄の日に必ず丁寧にしまうということを四回ほども繰り返してきたろうか。他に毎年アランとパトリックの家で開催される年始の会やその前日の大晦日の大掃除など……この赤い屋根の洋館を蘭はすでに<自分の家>だというように認識していた。他に毎年、新しくプログラム作りをはじめる四月や五月頃にはジュニアの子たちがCDを借りにきたり……ここには蘭の幸せな時代の思い出がすべて詰まっている。

 けれど、恭一郎と師弟関係を解消するということは……もともと血の繋がりなどないのだから、彼との義理の父娘のような関係をも失うことを意味するのだと思い、蘭は打ちのめされていた。

「うっ……ううっ………」

 蘭は雛壇の前に身を投げ出すと、思いきり泣いた。

 光とつきあいはじめた時、蘭はこう思っていた気がする。彼は三人兄弟の三男坊で、長男が両親と同居しているから、きっとここで自分と恭一郎の三人で暮らしてもどうということもないはずだと……けれどやはり、親しき仲にも礼儀ありというのもので、光もまた恭一郎と師弟関係を解消する以上は、そうだらだらとこの屋敷へ入り浸ったりするようなことは今後控えるに違いない。

(でも、自立する、独り立ちするっていうのは、そういうことなんだ……)

 蘭はセーターの袖で涙を拭うと、自分の中にも恭一郎に対する甘えがあったことに気づいた。もちろん蘭は光と一緒になってからも、なるべくこの屋敷へ通ってきて、恭一郎の食生活などには目を光らせるつもりではいる。けれど、蘭は初めて恭一郎が義理の父親として、あるいはスケートの師として、自分に出来ることを最後にしてくれようとしているのだと気づいた。

(そうだ。これを乗り越えてまた、わたしももう一段上の選手にならなくちゃいけない。それに、人間としても、ひとりの女としても、成長していかなくちゃいけないんだ……)

 それはなんて苦しく、厳しい道だろうと、蘭は初めて思った。もちろん、光と結婚することは蘭にとっても嬉しく、薔薇色の道が未来へと繋がっているように感じられることではある。けれどそれは蘭にとっては未知の、先行きを見通すことのできない不安な道でもあった。

 光と蘭との間には、ずっとフィギュアスケートという共通の夢があった。そのことは今後も変わらないにしても、光は現役を引退してしまうため、これからは立場が異なってくるだろう。そうなった時に、本当に自分は彼とうまくやっていけるのだろうか?取材やテレビ局の収録を通して、絶えず感じたインタビュアーの女性や女性テレビスタッフの、彼に対する熱っぽい、吸いつくばかりの視線……夫婦の間に隙間風が差してきた時、光がそうした誘惑に屈しない保証など、一体どこにあるというのだろう?

 蘭はこの時、ザグレブで軽はずみに光と結婚の約束をしたことを後悔した。せめて婚約ということにでもしておいたら良かったのだ。それも世間に公表するでもない、あくまでもふたりの間だけの……そして、片や現役でい続ける自分、片やアイスショーやコーチといった新しい仕事をはじめる光との間で、果たして関係がうまくいき続けるかどうか、暫くは様子を見るべきだったに違いない。

(でもこんなこと、光には絶対言えないし、相談することも出来ない……)

 蘭がショートプログラムを一度ランスルーしてからリンクを上がると、光が彼女に続くようにリンクゲートを出てきて、蘭の隣にぴったりと座る。もう最近では光もまったく、こうした点で人目を気にしなくなっているようだった。

「蘭、次の日曜なんて予定ある?」

「ないよ。ただいつも通り洗濯したり掃除したりして、スーパーに買出しに行ってあとはごはん作るってだけ」

 蘭は腰を屈めてスケート靴の紐を解き、光のほうは見ずにそう答えた。彼のほうでは、蘭の声音に若干微妙なものが篭もっていても、そのことにはまるで気づかなかった。というより、三時間も練習していて、疲れているのだろうとしか思わなかったのである。

「その……真兄が音響関係のことで時々出入りしてる教会でさ、結婚式に出す料理の試食とか、ウェディングドレスの試着会とかやってるんだって。そういうところもちょっと見て、今後の参考に出来たらいいなと思って」

「うん。そうだね。わたし、べつにドレスとか、そういうことはほんと、なんかどうでもいいんだけど……」

「そんなこと言うなって!一生に一度のことなんだし、姫野さんと剛の時みたいに思い出に残るようないい式にしたいって蘭も言ってただろ?」

「でも、それは……」

(普通の可愛い女の子の場合だよ)と言うことはせず、蘭は自分が本当に言いたいことは飲みこんでおいた。

「そうだね。ここのところ練習ばっかりでモチベーションも落ち切ってたし、気分転換のためにもいいかも」

「うん。じゃあ午後から迎えにいくから、その帰りに買い出ししてさ、それで帰ってくればちょうどいいだろ?」

 蘭が言うのも変かもしれなかったが、オリンピックが最高の形で終わって以降、光のまわりには幸せのオーラがいつでも見えるような気がした。そして蘭はそんな光の気持ちがわかる反面、「次の世界選手権では圭やレオンに負けるかもしれないな。ほら、俺今、幸せで気持ちが緩むあまりふにゃけちゃってるからさ」などと言う彼のことは理解できないと思った。もし逆に蘭が次の世界選手権で現役を引退するとしたら、いくら恋愛でうまくいっていて幸せであったとしても、最後であればこそ誰にも勝利を譲りたくないと考えただろう。もちろん、心ではそう思いながらもなかなかモチベーションが上がらなくて苦しんだことだろうが、蘭ならば口が裂けても「だからリュドミラや金愛榮に次の試合で負けても仕方ない」などと言うことは絶対に出来ない。

(そうだ。金愛榮……あの子はオリンピックの雪辱を果たすために、世界選手権では全力であたってシーズンの締め括りにしたいと考えているだろう。わたしももっとしっかり頑張らなきゃ……!!)

 不意に蘭が厳しい顔つきになるのを見て、光はこの時一瞬ぞくっとした。そして彼としては、やる気のない自分を男として不甲斐ないと感じつつも、こんなふうに突然やる気を燃え立たせることの出来る蘭が好きだった。自分もまた、そんな彼女に刺激を受けてさらに頑張ろうという気になれる。

「あー、高見沢さんはまだコーチに絞られてるみたいだから、俺たちだけで先にランチしてトレーニングルームのほうに移るか」

「そうだね」

 蘭はこの時、「もっと演技を大きく見せるため」の指導を由紀が受けているのを見て、正直羨ましいと感じた。昔、恭一郎はあんなふうに自分に対しても厳しかった。もっとも、蘭は「もっと演技を大きく見せるようにしろ!」などと彼から怒鳴られたことはないが、由紀は体が小さい分、そうした必要があるのだろうといったようには感じる。

(あの恭一郎の厳しさが懐かしいどころか、今は恋しくすらあるだなんてね……)

 そのことに一抹の寂しさを感じつつ、蘭は光が隣で今後の自分たちの展望について話す間――心が少し遠く離れたところにあったかもしれない。というのも、ラウンジからはリンク場を見渡すことが出来、由紀が恭一郎からマンツーマンのレッスンを受けているところが見える。そして恭一郎の厳しさにがむしゃらについていこうとする由紀の姿というのは……今の蘭にとっては嫉妬の対象ですらありえたからだ。

「蘭、高見沢さんがどうかした?」

 結婚式のウェディングドレスのことなどを話しても、蘭がまるで乗ってこないのを見て――光はがっかりするどころか、(やっぱり蘭は普通の子と違って面白いな)などと感じつつ、隣の彼女にそう聞いていた。

「う、うん。もう今シーズンも次の世界選手権で終わりなのに、恭一郎も妥協ってものを知らないなと思って。オリンピックに出るまでの間に、演技のほうはもう安定してるし、今は下手に手を入れたりする時期じゃないと思うんだけど……本当はもっとこうすればおまえの演技は良くなるなんてこと、来シーズンからはじめればいいのにって思って」

「ああ。それはあれだよ。世間でも今、女子の三枠取りは難しいみたいに言われてるから……まあ、館神コーチはそんな世間の声に耳を傾けるタイプの人じゃないにしても、石原さんもオリンピックに出れたっていうことで力を使い果たすあまり、今モチベーションが落ちてるかもしれないだろ?たぶん、館神コーチの考えでは、蘭が上位に食い込むことはほぼ間違いないにしても、他のふたりがどうなるかっていうところで、高見沢さんに発破かけてるところなんじゃないかと思う」

「光、それ、恭一郎に聞いた話?」

「いや、全部俺の憶測」

 光は蘭が広げているお弁当から、唐揚げをひとつ無断で頂戴して、ぺろりと食べた。いつもながら彼女の作る唐揚げは絶品だと、そう感じる。

「うん。でもたぶん、光のその考えは当たってると思う……」

(どうしてこのふたりはこう、お互いに考えてることがツーカーでわかるんだろう)

 そんなことを不思議に思いつつ、蘭がリンクに目を戻すと、由紀が恭一郎にぺこりと頭を下げ、リンクサイドのほうへ戻ってくるところだった。

「あ、練習終わったみたい!」

「じゃあ、俺はもうメシ食べ終わったからさ、先にトレーニング室に行ってるな。蘭はさ、高見沢さんの話でも聞いてあげるといい。コーチに色々厳しく言われて落ち込んでるかもしれないから」

 そう言うと、光はそそくさとお弁当を片付けて、ラウンジから出ていった。こうした蘭以外の女性を避けるという傾向は彼の中でいまだ健在なものであり、そんな彼に対しつくづく(変なのー)と蘭は思ってしまう。

 光にももちろん、気持ちはあるのだ。いつもリンクで一緒に滑っている仲間が落ち込んでいたら慰めてあげたいといったような気持ちは……ところが、その気持ちと脳の中の言語野あたりの連絡通路に光はどうやら障害があるらしく、気持ちはあってもうまくしゃべれないということになるのらしかった。

(もちろんわたしは、そんな光のことが好きなんだけど……)

 この時蘭は、不意に自分の恋人に対する愛しさがこみ上げてきてほっとした。わたしたちはきっとこれからも大丈夫だと、そんなふうに思いもする。

(最近、実際わたしちょっと情緒不安定っていうか、少しおかしいんだよね。突然元気になったかと思えば、また落ち込んだり……たぶん恭一郎からコーチを続けられないって言われたのがあんまりショックで……それが原因なのはわかってるんだけど、かといって、自分でもどうかするってことは出来なくて……)

 蘭は自分のこの気持ちが世界選手権でどう影響するだろうかと思うと、少しだけ怖くなる。今月末にある世界選手権まで、すでに三週間を切った。それまでにメンタル的な微調整を含め、試合で色々なものが頂点にやって来るようピーキングにはくれぐれも気をつけなくてはならない。

「おつかれ、由紀。随分こってり恭一郎に絞られてたね」

 蘭は由紀がラウンジにやって来ると、彼女が休むのに合わせて、自分もトレーニング室へ移ろうと思った。男子選手である光とはもともと別メニューだが、陸トレに関しては蘭と由紀はやることが大体のところ被っているからだ。

「ええ」と、おにぎりを包んだアルミ箔をはがしながら、由紀は溜息を着いた。「でも仕方ないです。わたしのせいで女子が三枠確保できなかったらって思うと、ぞっとしますもの。コーチの話だと、石原先輩は当てに出来ないと思えってことだったんです。ほら、なんていうかこう……オリンピックで一番注目されてたのはもちろん蘭先輩ですけど、石原さんは背がすらっと高くてモデルさんみたいでしょう?オリンピックに出て以降、他の一般誌なんかにも結構露出があって、本人もまんざらでもなさそうだから、次の世界選手権ではあいつには期待できないなんて言うんです。それで、あの……これは館神コーチが言うにはっていうことなんですけど、蘭先輩も今幸せ一杯だから、上位は上位でも三位とか四位で終わってしまった場合、女子選手の上位ふたりで十三位以内っていうことは、七位か八位、またまさかのことを考えて、六位かそれ以上に食い込めるようにしろなんて、無茶なこと言うんですもの」

 そう言いながらも何故か、由紀の顔はどこか嬉しげだった。リンクから上がったばかりのせいか、頬がうっすらと紅潮してさえいる。ようするに由紀は嬉しいのだった。どんな形であれ、自分が尊敬するコーチに期待され、「すべてはおまえの頑張りにかかっているんだぞ」と言われることが。

(恭一郎……!!)

 一方で蘭のほうは愕然とした。仮に由紀にやる気を出させるためとはいえ、そんなふうに思われているとは思ってもみなかった。けれど、恭一郎がコーチとしてそこまでのことを計算したのではないにしても、むしろ今の由紀の言葉で必ず金メダルを世界選手権でも取ってみせると、蘭の中で意識が大きく変化したのだった。

「あ、あの、蘭先輩が本当に三位とか四位になるってコーチが考えてるってことではなくて、今のはあくまで言葉のあやっていうか、わたしのやる気を引き出すために言ったことであって……」

「うん、わかってる。ごめん、由紀。わたし、ちょっと先にトレーニングルームに行ってるね。急に突然やる気が出てきたから……」

「は、はい……」

 ラウンジにひとりきりにされても、由紀は全然平気だった。何故といって先ほどまでリンク上で厳しくされてつらかったとはいえ、館神コーチが厳しくするのは自分が本当に目をかけている選手だけだとわかっているからだ。

(怒ってるコーチも実は素敵なのよね。怖いことには怖いし、叱られるのはわたしも嫌なんだけれど……それがどんなものでも好きな人に言われた言葉には価値があるものなのだわ)などと、ひとり妄想の世界に浸りつつ、食事を続ける由紀なのだった。



 >>続く。




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