老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「暗い時代の人々」 森まゆみ著

2017-05-29 10:21:02 | 共謀罪
この本の「暗い時代の人々」というタイトルは、ハンナ・アレントの「暗い時代の人々」という著書から取られている。この本はヨーロッパでファシズムの嵐が吹き荒れる中、精神の自由を守るために闘った人々を描いた人間論である。

この「暗い時代の人々」(森まゆみ著)は、昭和の日本が15年戦争に突き進んで行ったあの時代に、戦争を遂行しようとしていた勢力に対し、「精神の自由」を曲げる事なく守り抜こうとした人々の人間論である。

斎籐隆夫、山川菊栄、山本宣治、竹下夢路、九津見房子、斎籐雷太郎、立野正一、古在由重、西村伊作の9人の人々を描いているが、今回はこの中の山本宣治について取り上げようと思う。

山本宣治は1889年に生まれた。両親は京都の宇治に「花やしき」という別荘を建て、病弱だった宣治は幼少期をそこで過ごした。大変心優しい少年で「花を植えて世の中を美しくしたい」という思いで園芸家の道を歩み始めるが、後にカナダへの渡航を切っ掛けに生物学者へと変転していく。

山本宣治という人の眼が、園芸から生物学、あらゆる生あるものに対する興味、やがて人間とそれを取り巻く「社会」へと拡がっていく変化の歴史でもあった。

山本宣治を写真で見ると、随分線の細い優しげな人である。しかし彼の生涯を見ると決して優しい事は弱い事ではない。生物学者から政治の世界に打って出た彼は、「山宣ひとり孤塁を守る…」という有名な演説を残し、治安維持法に反対し、1929年40才を待たずに暴漢に襲われ無念の死を迎える。これが当時戦争に反対した衆議院議員に対する国家の仕打ちだった。

この本に取り上げられている人々は、あの暗い時代に自らの意思で灯りを灯そうとした人々である。

そして今その「暗い時代」が満開の桜、ゴールデンウィークの後に、静かに立っているような気がしてならない。新しい戦争の気配を身にまといながら。

「知ろうとしない事は罪である。」と誰かの言葉にあったが、奇しくも今日は「共謀罪」が参議院で審議されようとしている。そんな日だからこそ、ひとりでも多くの人にこの「暗い時代の人々」を読んで欲しいと思っている。

「護憲+コラム」より
パンドラ

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