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老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

そこにいるだけで良い!

2012-06-30 06:07:34 | 暮らし
今日(6/29)、何気なく、NHKの「梅ちゃんセンセイ」を見ていたら、世良正則扮する坂田先生の台詞にぞくっとしました。坂田先生は、満州で医者をしていた、という設定。日本が戦争に負け、多くの満州開拓民は軍に見放され、塗炭の苦しみをなめました。文字通り棄民として、着の身着のままであてのない逃亡生活を余儀なくされたのです。

ところが、同じ開拓民でも、情報を取ることのできたものは、いち早く日本に帰る事ができました。坂田先生もその一人だったのです。多くの患者を置き去りにして、帰国したのです。ところが、うまく生きて日本に帰ったはずの彼は、日夜苦しみました。彼が見捨てた患者の顔が一人また一人浮かんでは消え、浮かんでは消えたのです。彼はこの苦しみから逃れるため酒におぼれました。酒に溺れ、自暴自棄の生活から、ようやく立ち直った彼は、場末に小さな診療所を開き、貧しい人々の診療を献身的に行うようになりました。

その坂田先生が梅子にこう言うのです。【人を助けようなどというのは思い上がりだ。医者はそこにいるだけで良い】と。

わたしの故郷の町は、今無医村になっています。医者にかかるためには、隣町まで出かけなければなりません。家族のない一人暮らしの老人たちは医者に行くのも一苦労です。

わたしの中学時代にある出来事が起きました。わたしの実家の前のお医者さんが、行方不明になったのです。部落総出で懸命の捜索を行いましたが、見つかりませんでした。そのお医者さんは、70を超えていましたが、の人々の信望も厚く、とても信頼されていたのです。時代は、まだモータリゼーションが始まったばかりだったので、車はまだ貴重品でした。そのお医者さんは馬に乗って往診に出かけていたのです。その為、子供たちからは【馬のお医者さん】として親しまれていたのです。

捜索が長引くにつれ、の若い連中から、不満の声が漏れ始めました。そのお医者さんの家族の対応が悪いというのです。お医者の方は、息子さんが後継者となっていて、心配はなかったが、まだ若いのでの連中との人間関係をうまく結べなかったのです。その時、不平を洩らす若い連中をわたしの親父が叱りつけました。「お前らはそんな事をいうけれど、このから医者がいなくなったらどうする。お前らと違って医者はどこでも食っていける。このに住みにくくなったら、先生はいつでも出て行くぞ。その時、お前らはどうするんだ。」

親父は当時部落長をしていたので、本当にが無医村になる事を恐れていました。お医者さんと民との間を如何にうまくつなぐかで大変苦労していたのです。わたしは、大変な悪餓鬼で、親父には叱られるばかりで、「くそ親父」といつも毒づいていたのですが、この時の親父は「格好いい」と子供心に感心しました。

わたしには、坂田先生の言う【そこにいるだけで良い】というのは、大変よく分かるのです。この言葉を普遍化すれば、教師も家族も人はみなそうなのです。【そこにいるだけで良い】存在になるという事は、人間にとっての理想だと思います。自分が存在することが、人々の安心になれたら、もって瞑すべきだろう、と思います。

税と社会保障の一体改革なる議論が盛んになされていますが、人間の幸せは、【自分が必要とされている】という実感なのです。「おじいちゃん、おばあちゃんは元気に生きてそこにいてくれるだけでいい」と子供や孫に言われることほど幸せなことはないのです。多少の生活の貧しさや不便さなどたいしたことはないのです。「そこにいるだけで良い」と感じてくれる人がいるだけで十分生きて行けるのです。この原点を忘れた改革論議など、所詮机上の空論に過ぎないと思います。

以前から、わたしは【体感速度15kmの教育】を主張しています。一言でいえば、人間の息遣い、体温や感触が感じられる速さで教育しなければ、子供たちはバランス良く育つ事ができない、と考えているからです。子供たちが、親も教師も大人たちも、【そこにいるだけで良い】と感じてくれる豊かな心を持った人間に育ってくれる環境(国、社会、地域、家族)を構築することこそが、日本再生の鍵になると考えているからです。

戦後の日本も日本人も、余りに【効率性】ばかり追い求めすぎました。産業的なものにからめとられすぎたのが、現在の日本の閉塞状況を招いたのではないかと思います。東日本大震災・福島原発事故は、このような日本や日本人の生き方に根本的な疑問を投げかけたのです。反消費税・反原発のうねりは、このような疑念を抱いた人々たちが増加している事を示しています。

小沢政局報道に狂奔しているメデイア連中には、【そこにいるだけで良い】という人々の心の叫びなど届かないでしょう。自分の事だけを考えて、【消費増税】賛成をする議員連中には、ほんのささやかな幸せを願う庶民の心の叫びなど聞こえないでしょう。悪代官よろしく、【増税】を画策した財務省の役人たちには、国民など虫けらのように見えているに違いありません。福島事故の検証すらできていないのに、原発再稼働に狂奔する電力会社、国土交通省、大企業、枝野大臣などは、人の命より、資本の論理が優先しているのです。

【そこにいるだけで良い】
政治を変えようという思いの原点にある言葉だと思います。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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