老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

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未来の党の敗因と再起について

2012-12-22 17:21:59 | 選挙
未来の党の大敗の原因は何か、一言で言えば党設立から投票日までの時間が短く、有権者や「国民の生活が第一」の支持者の理解を得る時間が無かったことであろう。

野田首相が11月14日の安倍自民党総裁との党首討論で「16日に解散しましょう」と突然発言し、それが確約となり、追って12月4日公示、16日投票で衆議院選挙のスケジュールが決定された。そのようななか未来の党が設立発表されたのは11月28日で、公示から1週間、投票日から僅か3週間前である。小生は11月25日に『「国民の生活が第一」は民主党時代の失敗を総括できているか 』(11/26ブログ掲載)という投稿をしているが、その時点では全く予想できなかった。

このどたばた劇は何に起因したかといえば、民主党、自民党に次ぐ第三極争いであろう。「たちあがれ日本」を乗っ取り「太陽の党」を立ち上げた石原慎太郎氏は、小沢とは絶対組まないと言う一方で、第三極では民主党、自民党政治を変えられない、第二極を目指す必要があると宣言して、太陽の党と政治理念の違う日本維新の会の橋下代表を、「俺は橋下牛若丸に惚れた弁慶」という殺し文句で口説き落とし、大阪市長と国政との二足のわらじを履けない橋下市長の立場を逆手にとって日本維新の会代表に就き、実質乗っ取りに成功した。このことが、小沢氏の焦りを誘い、「国民の生活が第一」から「未来の党」設立を急がせたと思われる。

メディアには大きく取り上げられニュースになったが、日本維新の会への合流に執着していた「減税日本」の河村名古屋市長や、「たちあがれ日本」と接触していた「国民新党」元代表の亀井氏や「社民党」を離党した阿部議員、民主党を離党し一時「みどりの風」経由で「未来の党」に合流した議員にとっては、次の衆議院選に死活を賭けた当然の成り行きであったとしても、有権者には中央政界での第二極・第三極争い等分かるはずも無い。一体どうなっているのかという疑問を抱かせたまま、設立から投票までの3週間では未来の党への理解と共感を得ることはできなかった。結果は承知のとおり公示前に61名いた未来の党議員は9名(14.7%)に激減した。方向は間違っていないと思うが、投票日まで短時間だったことが一か八かのハイリスク・ハイリターンの戦略となり、ハイリスクの目が出たと言うことである。

そのことは一見合流が成功したかに見える日本維新の会も同じで、太陽の党と合併していなかったならば最低100名は当選していたであろうが、まだ未来の党より合流が1ヶ月ほど早かったことが幸いしたと言える。同様に、仮に「国民の生活が第一」がそのまま選挙に臨んでいたら、当初のメディアの予想どおり最低でも20名(33%)以上は当選していたと思われる。

特に小沢氏の場合11月12日まで被告人の立場に置かれ、無罪を待ちこがれていた有権者が全国に居た状況で、ようやく無罪となり「これからだ」と思っていた矢先の「未来の党」立ち上げには正直どうなっているのやら理解できない有権者が多かったと思う。小沢氏は記者会見でその理由を正式に語ったのか、大手メディアからは「一兵卒になる」と言ったニュースだけが流され、後日インターネット上で嘉田知事との対談でその背景を初めて知った支持者も多かったのではあるまいか。

それは小沢王国と言われる岩手県の四つ小選挙区の結果を見ても分かる。選挙前は小沢氏を含めた民主党議員が全区を独占していたが、今回2人は小沢氏と袂を分かち民主党に残留して未来の党からの刺客を破り当選している。もう一人の未来の党の候補者は自民党議員に破れ、当選したのは小沢氏だけである。「国民の生活が第一」で選挙に臨んでいれば有権者への浸透もある程度なされており4選挙区とも取れたはずである。なぜなら全国の都道府県で県知事が民主党で県議会も民主党が過半数を占めているのは岩手県だけで、小沢氏の影響力は知事-県会議員-市会議員-町会議員に至るまで絶大で、これが小沢王国と言われる所以であるからだ。

それだけに小沢氏が民主党を離党し「国民の生活が第一」を結党する事を聞かされた時は、小沢派の首長や県・市議会議員も当初は戸惑ったであろうと想像される。それでもやっと咀嚼できたと思いきや、また寝耳に水の「未来の党」設立では、小沢氏の行動を理解できず、とても追いていけないと思った議員も多かったはずで、またこの急変を投票までの短期間で支持者にどう説明して良いやら戸惑った議員も少なくなかったと思われる。それが小沢氏1名しか当選できなかった偽らざる背景であろう。

小沢王国の岩手県でもこのような状況であったとすれば、1年生議員が多い「国民の生活が第一」のその他の選挙区は推して知るべしである。公示1週間前まで「国民の生活が第一の誰々です」と訴えていたのが「未来の党」になったのだから、立候補者も支持者も戸惑ったであろう。その上「国民の生活が第一」は今回政党助成金はもらえず、民主党が湯水の如く新聞やインターネットで政党広告している活動資金と比べれば明らかに限界があったことが想像できる。

因みに新聞で未来の党の立候補者の当選率を見ると、61名中9名の当選(14.7%)で、民主党の25%より悪い。無所属議員の50%(5名)が当選しているのに比べても極端に悪い。マニフェストに反して消費税増税を主導した民主党議員より当選率が悪いとは真逆の現象であり、何のために民主党を集団離党し、「国民の生活が第一」を立ち上げたのか、未来の党に合流したことで争点ぼけになり、有権者にも理解されず、やはり未来の党立ち上げに時間的に無理があったと見るべきであろう。

また投票率が前回に比べ約10%も悪く、全国の平均投票率が59.3%の低さであったことや白票での投票が例年より多かったことも影響していよう。投票率の悪さは選挙直前に「日本維新の会」が「太陽の党」と合流したり、「国民の生活が第一」が解党して「未来の党」を立ち上げたこと等が有権者を惑わし、どこに投票してよいか決断できずに棄権した結果と思われる。一方白票は維新の会や未来の党に候補者の居ない小選挙区が多かったことも原因であろう。特に立党間もない「未来の党」には有権者へ周知する時間も少なく、それをカバーするための手っ取り早い新聞広告を出すにも資金が無かったのが実状であろう。

「未来の党」の敗因は概略以上のようなことではないかと思う。そして消費税増税の責任は自民・公明には向けられず、国民に嘘をついて法案を通した民主党のみに押しつけられた選挙だったと言えよう。しかし未来の党に衆議院選挙の敗北を悔やんでいる時間はない、来夏の参議院選挙に向けてどのように再起を図るか待ったなしである。

ところで今回の衆議院選での比例区の政党別得票数を新聞でみると、「未来の党」は党名の如く、まさに「未来の党」の予感がするデーターがある。得票数をピックアップすると次のとおりである。

自民1662万(27.6%)、維新1226万(20.4%)、民主963万(16%)、公明712万(11.8%)、みんな525万(8.7%)、共産369万(6.1%)未来342万(5.7%)、社民142万(2.4%)、大地35万(0.6%)以下略

未来の党の得票数を見れば、投票日3週間前の設立にもかかわらず、党歴が一番古く全国に支部を持つ共産党に迫る得票数で、社民党より200万票多く、古巣民主党の35%を占める。この得票数を見る限りそれなりの方法手段を講ずれば次の参議院選で倍増は可能で、公明民主を逆転することも夢ではあるまい。中長期的には「国民の生活が第一」より「未来の党」の方が魅力がありそうである。

しかし今回の得票数は「脱原発と消費税反対」をいち早く掲げた小沢氏率いる「国民の生活が第一」があったからこそのものであり、嘉田知事は一時原発再稼働やむなしとの発言をし、また私塾「未来政治塾」も滋賀県外ではほとんど知られてなかったと思う。まだ河村名古屋市長率いる「減税日本」が世間では知られていたように思う。

そこで「未来の党」の再起のためには次のような事が必要であろう。

1.まず嘉田知事は知事と党首の2足のわらじを脱いで党首に専念し次の参議院選に出馬すべきである。また今回の衆議院選ではお膝元の滋賀県からは未来の党の候補者を立てなかったが、次の参議院選ではそれは許されない。

2.小沢氏は旧著「日本改造計画」の改訂版を出版すると云われて久しいが未だに出されていない。この機会に環境社会学者としての嘉田氏と調整して、例えば「日本未来の党の日本改造計画」なるものを共著で出版してはどうか。そうすることによって参議院選に向けて未来の党の風を興すのである。

3.つぎに今回の衆議院選で落選した議員を次の参議院選に落選した地区から立候補させることを早く決定して、今から準備することである。

以上の中で最大のネックは嘉田知事が任期一杯まで知事に執着して居ることであろう。今朝6時のNHKラジオニュースを訊いていたら、社民党出身の阿部知子氏に共同代表の就任要請し阿部氏も諒解したとの情報が飛び込んできた。この方法は日本維新の会の橋下大阪市長が採っている手法と同じで、滋賀県議会の批判をかわすための手段には有効かも分からぬが「未来の党」としては本末転倒である。

日本維新の会の場合、代表には石原慎太郎というビッグネームが座っているからこそ橋下氏が副代表でよいのであり、やはりここは嘉田知事が知事を辞職して党代表に専念すべきである。もし知事職を任期まで全うしなければ県民が許さず選挙地盤が崩壊するとの危惧があるのであれば、小沢氏に代表就任を要請して行くべきであろう。阿部知子氏が共同代表では第二の社民党のようで、菅氏や野田首相が自民党にすり寄り今回の失敗を招いた二の舞になり、参議院選での失敗は目に見えている。

森より大きな熊は出ないと言う例えがあるが、未来の党には党名より大きな小沢という政治家が居るのであり、小沢氏が無役では世間も納得できない。先般都内のホテルで行われた「国民の生活が第一」の立党パーティには約4000人もの支持者が集まったと報じられたが、地方で同じパーティを開けばその都市の規模にあった大なり小なりの小沢支持者が集まるはずである。この人々にどのように小沢氏の立場を納得させるのか、未来の党と小沢氏の説明責任が問われている。有権者が納得できなければ、未来の党から「国民の生活が第一」の支持者の多くは離れていき、次の参議院選での捲土重来は期待できないであろう。

「護憲+BBS」「政党ウォッチング」より
厚顔の美少年

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