路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

脳に棲む魔物

2017-05-27 | ★ほんの日常







「抗NMDA受動態脳炎」という病名を聞いたことのある人は少ないと思う。




とある番組が放送されたのを機にネットで色々と調べていて、

実際にこの病と闘ったポスト紙の若き女性記者が書いた本を見付けた。





体を痙攣させ、意識があるのかないのかすら分からない…

まるで悪魔に憑かれたような症状を呈する。





映画「エクソシスト」の奇妙な形で階段を駆け下りるシーンや

痙攣を繰返し、別人のようになってしまう。

ベッドの上でどこの国の言葉か知らない筈の言語を流暢に他者の声で喋ったなど。

まさにこの病気の症状なのである。

一見、正気を失った精神疾患の患者であるかのように見えるが

脳の中で自分を守る筈の抗体が、自分の健全な細胞を攻撃し始める病である。

そう聞くと、とても怖い病気のようでもあるが、

そもそもアレルギーだってアレルギー原が体外に存在しない場合、

自分の抗体が自分を攻撃している状態なのだから、似たようなものかも知れない。





この病の特徴は卵巣嚢腫を持つ若い女性に多いと言われているが、

男性にも発症者は存在する。未だに良く分からない事が多い病なのである。

ただし、確定診断さえ出来れば適切な処置が出来る病だ。

この著者は非常に恵まれた環境での闘病であった。

優秀な医者が付いていてくれた事、

無事に自分を取り戻せた後、(大抵本人には記憶がないので)

病気の経過を聞き出す機会に恵まれた事、

病気について語る手段を持っていた事で

如何に大変な経験をしたか他者に伝える事が出来たという奇跡に尽きる。




この病を患った者の中には適切な医療や検査を受けられず

精神疾患という間違った診断を受けて

長い間、精神病院に閉じ込められる事例もあったという。

エクソシストで言えば「悪魔憑き」や

日本の事例では「狐憑き」というような厄介者扱いである。

一定期間の激しい症状の後、何事もなかったかの様にすっかり良くなる人もいる。

まるで悪魔や狐がとれたみたいに。

共通しているのはその間の記憶がすっかり抜け落ちる事だ。





よく似た疾患に「全身性エリテマトーデス」という病気もある。

「抗リン脂質抗体症候群」も同じく自らの抗体の異常により症状が出る病だ。

病状だけでは正確な診断をされないというのも良く分かる。




象という動物の全像を知らずに、

しっぽだけを知り、紐だと言う。

胴体だけを知り、巨大な壁だと言う。

耳だけを知り、扇だと言う。

足だけを知り、円柱だと言う。

長い鼻だけを知り、ホースだと言う。

まさに「木を見て森を見ず」で、

正しい診断がなされていないと実像が見えてこない病だ。





誤診という恐ろしく長いトンネルの中にいるすべての人へ送られたメッセージである。



















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