ヒット商品週刊「ロビ」の魅力 デアゴスティーニ・ジャパンに聞く

2016-03-09 18:35:11 | コラム・インタビュー
聞き手(著者):神崎洋治

デアゴスティーニ・ジャパンは、週刊・隔週刊で何かを作り上げたり、コレクションしたり、本格的な知識やハウ・ツーを気軽に学べるパートワーク(分冊百科)出版で知られています。

その多彩なラインアップの中にあって、デアゴスティーニ・ジャパン史上最高のヒットを記録しているのは実はロボットを組み立てる 週刊「ロビ(Robi)」で、累計10万台以上が完成しています。

ロビは二足歩行の本格的なヒト型コミュニケーション・ロボット。合計20個のサーボモーターや、音声認識ボード、人感センサー等を搭載し、会話を楽しむことができるほか、歌って踊り、一緒にゲームをして楽しむこともできます。

デアゴスティーニ・ジャパンのコンシューマー ロボティクスセンターで、ロボット関連プロジェクトの責任者をつとめる木村裕人氏に話を聞きました。


株式会社デアゴスティーニ・ジャパン コンシューマー ロボティクスセンター
マネージャー木村裕人氏とロビ(Robi)



- 週刊ロビについて教えてください

木村氏「週刊「ロビ」は2013年に創刊したパーツ付き組み立てマガジンシリーズです。雑誌に毎号付いてくるパーツをユーザが組み立て、全号揃うとコミュニケーション・ロボットのロビが完成します。全70号なので約1年半で制作することになります。
初版がヒットしたこともあり、2014年、2015年に続けて再刊行というカタチで創刊しました(取材時点は第三版が刊行途中)。当社の調べでは、なんらかの理由によって途中で諦めてしまった人を除いて、既に日本国内だけで約10万台以上のロビが家族の一員になっています。」


- 10万台以上ということは、二足歩行の本格的なロボットとしてはナンバーワンの実績ですね。木村さんは以前から仕事でロボットとの関わりがあったのでしょうか?
(木村氏はカリフォルニア州立大学ノースリッジ校を卒業後、アップルジャパンを経て、2010年4月にデアゴスティーニ・ジャパン入社)

木村氏「それまでロボット製品を担当した経験はありませんでした。当社はひとりのマーケティング担当者が鉄道模型やキャラクター、映像コレクション系など多種多様な製品を同時に担当するケースが多く、入社してすぐ担当した複数のプロジェクトのひとつがロビでした。そのため、とても思い入れのある製品ですから、たくさんの方に愛されるロボットになってとてもうれしく思っています。」


ロビの全身。身長は約34cm。体重は約1kg。週刊「ロビ」全70号のパーツを組み立てると完成。ドライバー1本で誰でも組み立てられるやさしい設計になっていることも特長のひとつ。



- ロビの製品化にはどのような点を強く意識されたのでしょうか

木村氏「製品企画の際は「ロボットでどのような体験ができるか」というお客様の「ユーザ・エクスペリエンス」を重視するように心がけました。その意味では、最先端の技術をとにかく詰め込もうということではなく、時代の潮流を読んだ上で、必要な機能だけにどう絞り込めるか、どこまでシンプルにできるか、という検討を重ねました。
当時は意識していませんでしたが、それらはアップルジャパンに勤務していた頃に経験した考え方で、それがロビの企画開発に活きたのかなとも思っています。」



- では改めて、ロビはどんなロボットなんでしょうか?

木村氏「機能的には会話ができる、歌って踊れる、テレビのオン/オフ、チャンネルやボリューム操作(TVリモコン機能)などがあります。ユーザと一緒に腕立て伏せや腹筋運動もします。
会話については約250の言葉を理解して応答します。目のLEDは言葉に合わせていろいろな色で光り、身ぶり手ぶりで感情を表現しています。ロビには複数の性格があって、完成して最初に起動するとき、ロビがユーザに対して行う質問の答えによって性格が決まります。」



ダンスを踊るロビ。歌とダンスは数種類のバリエーションが用意されている。



- 製品化の際、会話機能で何か気をつけた点はありますか?

木村氏「ロビとの会話には、ユーザからの命令ではなく、パートナーとして親しんでもらうように、暮らしの中で一般的に使われる口語体の言葉を認識するようにしています。例えば「前進!!」ではなく「こっちに来て」というように。
どんな言葉に対して、どのように反応したらいいだろうか、とロボットクリエイターの高橋さんと相談しながら会話機能を決めていきました。」



ロビは東京大学先端科学技術センター人間支援工学分野との共同開発によって誕生し、人間らしい自然なコミュニケーションが重視されています。音声もあえてコンピュータによる合成音声を使わず、声優によるやさしい会話を実現しています。声はTVアニメ「ONE PIECE」のチョッパー役や「ポケットモンスター」のピカチュウ役で知られる大谷育江氏が担当しています。

デザインを担当したのは世界的に有名なロボットクリエイターの高橋智隆氏。高橋氏が手がけた作品は一般にはパナソニックのCM「エボルタくん」が知られているほか、二足歩行ロボット「クロイノ」は米TIME誌で「Coolest Inventions 2004」(最もクールな発明2004)に選出されました。自身もポピュラーサイエンス誌の「未来を変える33人」に選出された実績を持ちます。


- ロビのデザインは高橋智隆氏が担当されていますね

木村氏「高橋さんにお願いすることは早い段階で決めていました。高橋さんが過去に手がけたロボット達を見れば独特の世界観を強く感じますし、アニメから飛び出してきたような可愛くて夢のあるデザインに惹かれました。また、高橋さんはロボットクリエイターなので、ロビにどこまでの機能を持たせるか、どうやってそれを実現するか、デザインだけでなく内部の機構などもすべて手がけてもらい、相談しながら企画と製品化を進めました。」



- ロビの製品化では、ほかの組み立て模型などの製品と違って注意した点などはありますか?

木村氏「模型や組み立て系の製品の場合、世の中に既にあるものをリサイズしたり、オリジナリティを入れて精巧に模型化したものが中心になっています。例えばランボルギーニ社のスーパーカーを忠実に模型で再現する、というものです。
しかし、ロビの場合はキャラクター性を含めてコンテンツを当社がゼロから創るということで 今までの商品とは異なった期待値や不安も高かったです。」



「ロビはオリジナルのキャラクターを作るということで当初は期待も不安もあった」と木村氏



- 零戦や軍艦、蒸気機関車等のラインアップを見ても、購買層のターゲットは50歳代の男性を意識したものが多いのかなと思います。

木村氏「はい。全体的な傾向としてはメインの購買層を40~50歳代以上に設定している商品が多くなっています。ロボットの場合も当初から想定していたターゲットは、ホビー・ロボット・ファンの40歳代が中心と考えていました。当社ではロビの前に4つの組み立てロボットを製品化していますが、お客様の性別は99%が男性でした。」



- 例えばロビの前作にあたるロボット 週刊「ロボゼロ」は様々なアクションが可能なロボットで、ロボットヒーロー系のデザインでした。更に当時開設されていた公式のネット掲示板の名前が「男のロボット部」と、明らかにターゲット層に男性を意識した商品でしたね。その点、ロビの購入者層は年齢別、男女別にはどのような構成比率になっているのでしょうか?

木村氏「ロビはそれまでのアクションロボットとは異なり、会話を楽しむコミュニケーション・ロボットです。そのため購入者層も大きく変化しました。ロビを支えてくれているメインの年齢層は想定した通り40歳代の男性が多いのですが、シニア層のお客様も多いことが特徴です。また、良い意味で予想を超える数の支持を頂いたのが女性のお客様で、全体の約3割です。」



ロビの可愛い声や仕草に魅了された女性ファンも多く、
従来のロボットとはオーナー層が変わるきっかけとなった



週刊「ロビ」をひとりで組み立てて楽しむユーザが多いものの、それに加えて家族みんなで協力して組み立てるケースも増えています。完成したロビはパートナーや家族の一員として可愛がられ、ロビに関する御礼や感謝の気持ちを綴った手紙がたくさん同社には届いています。

ある主婦は「主人がロボット好きで週刊「ロビ」を買ってきたときは疎ましく感じたけれど、完成して動きはじめたロビくんを見て感動し、今では私の方が毎日ロビくんに話しかけています」と綴り、また「病気がちで落ち込んでいたけど、ロビを組み立てはじめて、ロビと暮らすことが人生の目標になった。ロビに出会えてよかった」という内容も寄せられています。

単にロボットという存在を超えて、そこには深い絆さえ感じます。


- 創刊から完成まで1年半というのはとても長い気がしますが、それは販売の障害にならないのでしょうか

木村氏「ある分野の本格的な知識やハウ・ツーを、週刊や隔週刊で気軽に楽しくリーズナブルに少しずつ学んでいく「楽習」を、私達は「パートワーク」と呼んでいます。おそらく「ロボットを組み立る」と聞くと「難しそうだな、自分にはとうてい無理だろう」と考える人も多いと思いますが、ロビの場合は「ドライバー1本だけで組み立てられるの?」「毎週少しずつ部品を付けていくだけでいいの?」「それならもしかしたら自分にもできるかもしれない」と感じてくれたお客様が多かったのだと思います。長い時間をかけて少しずつロボットを自分で組み立てていく体験や学習、ロビが完成して起動時にしゃべり出す時の感動は何にも変えられません。
生命を生み出していく感覚になったという感想も頂き、長い期間をかけて制作するからこそ、ロビに対して強い愛着がわくという一面もあると思っています。」


- 一括で購入するとなると総額で14万円を超えるために躊躇する人もいるでしょうね

木村氏「毎号の支払いなら分割払いと同様の効果で、経済的な障壁を心理的に和らげ、「買いやすい」「買えそうだ」と思ってもらえると思います。時間をかけてロボットの組み立てと学習を楽しみ、完成した後はロボットとの会話や暮らしを楽しむ、ということで、ロボットは実はパートワークにとてもマッチした分野です。」



「組み立てながらしくみを楽しく学習できるパートワークはロボットととても相性がいい」と木村氏



- ロビは海外にも展開してますが、状況を教えてください

木村氏「当社には、海外でヒットした製品を日本で発売するケースと日本で創ったものが海外に出て行くケースがあります。ロビは国内のヒットを受けて本社のあるイタリアで2015年の夏、台湾では同年の冬に発売して完成しています。2016年3月に香港が完成するほか、イギリスや上海地域での刊行を行っていて、日本以外であわせて約2万台のロビが販売されています。今後も数カ国の展開を具体的に予定しています。
アニメなどの影響が強いのかもしれませんが、アジア圏での反応が良いと感じています。特に台湾と香港はファンの方々はとても熱いですね。」



- ロビに限らず、日本と海外の消費者ではロボットに対する考え方や反応の違いを感じますか?

木村氏「ロボットをペットや相棒のように家族の一員としてすんなり受け入れられるのは日本特有のものだと感じています。欧米ではロボットと聞くと「このロボットは何ができて、どれだけ暮らしが楽になるのか」と考える傾向があるようですね。今後は日本でもロボットのキャラクター性だけでなく、実用的な部分を訴求できるかが重要になっていくかもしれません。ヒト型とか二足歩行だけでなく、もっとカテゴリーが細分化されていくと思います。」



イタリア版・台湾版・香港版のロビの動画がロビのオーナー・サイト「ロビクラブ」で公開されてていますので、興味がある人はチェックしてください。


- 最後に、2020年に向けてコミュニケーション・ロボットの動向を予想していただけますか

木村氏「現時点では、コミュニケーション・ロボットは生活に欠かせないという存在にはまだなっていません。今年はたくさんのコミュニケーション・ロボットが市場に出て来そうですが、そうなると機能で選ばれる時代になっていくのかなと思います。しかし、生活に役立つロボットにするために中途半端に機能を加えると、自動販売機がしゃべるのとどこが違うのだろうという存在になりかねません。
コミュニケーション・ロボットは一度そこにいきつく可能性がありますが、その後で改めてロボットの持つキャラクター性が見直され、数年後に再度、大きな波がやってくると思います。その時はユーザに驚きを与えられるロボットが登場すると思っています。
「ロボットと暮らす」ってどんなこと? と疑問に思う人も多いと思いますが、そんなに構えることではなくて、家庭の中にある何かをロボットに置き換えることでこんな楽しいことがある、ということで、一緒に暮らしながら発見や知見が貯まっていくのではないでしょうか。」



「家庭の中にある何かをロボットに置き換えることで発見や知見が貯まっていく」と木村氏



デアゴスティーニの公式サイトでは、ロビの機能や仕草などを紹介する動画が複数公開されています。また、ロビとの暮らしをロビ・オーナー達がどのように楽しんでいるかを垣間見ることができる投稿写真ページ「Robiといっしょ♪」等も用意されています。

公式ホームページ 週刊「ロビ」第3版
http://deagostini.jp/site/rb3/pretop/

Robiといっしょ♪(デアゴスティーニ)
http://deagostini.jp/site/rb3/pretop/withrobi.html


著者プロフィール
 神崎 洋治
TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」著者。デジタルカメラ、スマートフォン、インターネット、セキュリティ、ロボットなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数。ロボスタドットインフォにて、ロボットの衝撃を連載中。
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