人間がロボットに勝てるのは一体どこなのか?「KEIO TECHNO-MALL 2016」

2016-12-20 11:01:01 | イベントレビュー
ライター: アスカ



2016年12月16日、東京国際フォーラムで開催となった第17回慶應科学技術展「KEIO TECHNO-MALL 2016」。ロボットやVR(バーチャルリアリティ)、AI(人工知能)など、最先端のさまざまな研究の発表の場であるとともに、専門家や研究者による魅力的なトークセッションも行われました。


「コンピュータに騙される人間の脳―バーチャルリアリティとロボットに見る」という題のラウンドテーブルセッションではソニーコンピュータサイエンス研究所の茂木健一郎さんらによるプレゼンテーションがたいへん興味深い内容でしたのでご紹介したいと思います。



登壇者のご紹介から。

ソニーコンピュータサイエンス研究所 シニアリサーチャーの茂木健一郎さん。日本電信電話株式会社(NTT)コミュニケーション科学基礎研究所 主任研究員の木村聡貴さん。同メディアインテリジェンス研究所 主任研究員の三上弾さん。慶應義塾大学理工学部 情報工学科 教授の今井倫太さん。同理工学部 情報工学科 教授の藤代一成さん。ファシリテーターは同理工学部 情報工学科 教授の斎藤英雄さんです。




人間しかできないこと


まず最初に茂木さんのプレゼンテーションがとてもおもしろかったです。ここ最近、囲碁の勝負でプロ棋士がAIに負けたとか、ロボットが人間の仕事を奪っていくとか、進化するAIやロボットに対して危機感を抱いている人がいるようです。これらは私たちの世の中が便利になっていくための技術革新なのですが、ではそれらに人間が勝つにはどうしたらいいのでしょうか。



茂木さんは「専門的なことはAIが得意とするもの。じゃあ、人間がAIやロボットに勝てるとしたら一体どこか。それはパーソナリティである」とお話していました。AIは100%のリソースを専門的なことに注ぐことができますが、人間は専門家でもプロ棋士も人生のなかで決してひとつのことにリソースを注いでいるわけではない、という違いがあります。

「専門家の時代はもう終わり。ひとつのことに集中して何かをやるのは人工知能に任せて、これからの時代に人間は自分らしいリソース配分を見つけることが課題である」と言って締めくくっていました。



途中、AIを搭載したロボットが活躍する映画『チャッピー』を例に挙げていたのが印象的で、あの作品は感情を持たないAIもしくはロボットが現実社会でどういう存在として扱われるのかを問題提起してくれる作品でしたよね。まだ観たことのない人はぜひチャッピーを観てみてほしいです。



人間はモノを人として見る性格を持つ


ロボットはズルくてある意味で人を騙している、と言うのは今井さん。看護師さんの言うことを一切聞かないおじいさんが、ロボットには警戒感を示さずに心を許して車イスから立ち上がる例を紹介。



人はモノを擬人化する性格を持っているらしく、たとえば目や口のような形があると人であったり、何かが生き物のように背後に意図を感じられる動きを見たときであったり、自分が孤独で寂しかったりすると、モノを人として見るんだそうです。おじいさんはロボットを心の許せる人として見たわけですね。



そして、人は人工知能の技術そのものも擬人化してしまいます。人工知能に職業を奪われてしまうとか征服されてしまうんじゃないかとか、そういう話がよくされていますが、奪われる・征服されるっていうのは擬人化している証拠で、人は何かに対して人らしさを見つけてしまう機能が頭の中に備わっている、と。



脳を騙して、映像を浮き出させる


続いて、CGを研究している藤代さん。人間の視覚を騙すポップアップ効果についてお話してくれました。



ページを開いた二面のスケッチブックに描かれた絵をある角度から見るとそこに浮き出て見える。また、2つの平面のディスプレイがあれば表示した映像をまるでそこに存在するかのような立体的に見えてしまうというもの。



これはまさに人間の脳を騙しているんですが、さらに仮想世界に現実の情報をオーバーレイさせる究極のAV(Augmented Virtuality・拡張現実感)の可能性にも触れ、非常に面白いお話でした。


試合前、スポーツ選手にVRで目を慣れさせる


NTTの三上さんはスポーツの世界でVRを活用した選手のパフォーマンス向上を研究しています。



野球で正しいバットの打ち方を人が人に教えるときに、つい擬音語・擬態語を使ってしまうことってありますよね。グッと腰を使ってスッ肘から入るとか。そこで三上さんは直感を正確に客観的に伝えることに重きを置いて研究しているそうです。人の動きを計測し、それを他の人が追体験可能にしました。



実際に楽天イーグルスが導入しているそうなんですが、選手はこれから試合で目にするであろうシーンを事前にVRで体験し、目慣らしすることができます。会場では茂木さんがデモを体験し、すごいと好評でした!


参加してみた感想


壇上の6名によるディスカッションも興味深いものとなり、約1時半ものボリュームでしたがあっという間に感じられるほどスピーディーでワクワクするお話でした。観客席が足りずに立ち見すら場所が足りなくなるほど大盛況。私たちは脳を騙すことで様々な面白い体験ができているんだなと気づくことができました。



イベント運営側の皆様におかれましては聴衆のスムーズな入退場を整理するスタッフを配置するなど、円滑な誘導をお願いしたかったです。ぜひ次回の第18回を開催する際にはより広いステージでトークセッションを行ってほしいなと願いを込めて締めくくらせていただきます。


ライター: アスカ
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