ロボット玩具の先駆者タカラトミーに聞く ~ロビジュニアにオハナス、素早く駆け回る犬や気ままな猫型ロボット誕生の軌跡

2016-06-20 10:02:36 | コラム・インタビュー
聞き手(著者):神崎洋治

タカラトミーは人生ゲームやプラレール、トミカ、リカちゃん、黒ひげ危機一発など、数々のヒット玩具を生み出している日本を代表する玩具メーカーです。
それと同時に30年以上も前からロボット玩具を開発し、発売してきた先駆者としての一面もあります。最近ではデアゴスティーニ・ジャパンのライセンスを受けた「Robi jr.」(ロビジュニア)が日経トレンディの「2015年ヒット予測ランキング」の8位を受賞したほか、(株)NTTドコモと共同開発した「OHaNAS」(オハナス)や、ペット型ロボットを次々にリリースしています。
そこで、Robi jr.やOHaNASの開発の経緯や、ロボット玩具開発について、タカラトミー新規事業部の木村貴幸氏に聞きました。


株式会社タカラトミー 新規事業部 ニュートイ企画部 部長の木村貴幸氏



タカラトミーはかつてオモチャ業界とロボット業界を驚かせた製品を市場投入したことがあります。それは身長16.5cm、重量約350gの当時世界最小のヒト型ロボットとしてギネス世界記録に認定された「i-SOBOT」(アイソボット)です。1984年に発売されたロボット玩具「Omnibot」の後継機として2007年10月に発売されました。
二足歩行が可能で、超小型のサーボを17個も搭載、ジャイロセンサーで歩行時のバランスも自律的に補正し、音声認識機能も持っています。約180の言葉を話し、約90の効果音や音楽演奏(再生)もこなします。専用のコントローラで操作でき、1つのボタンに最大80個のアクションを組み合わせて登録できます。それでいて価格は29,800円(税別)という低価格を実現していました。


2007年10月に発売されたタカラトミーの「Omnibot 17μ i-SOBOT」。二足歩行に大胆なアクション、ジャイロセンサーに音声認識、実売2万円台と、当時ビックリすることづくしのロボット



- タカラトミーさんはロボット玩具の先駆者と言えますが、ロボット玩具を開発し、なかでも「i-SOBOT」の登場には当時驚かされた記憶があります。

木村貴幸氏「最初に電池で動くロボット「Omnibot」を投入したのは1984年のことです。実はロボットブームというのはおよそ10年ごとに来ていて、その後1999年にソニーさんが「AIBO」を発売して話題になりました。ペットロボットとして注目されましたが、次は二足歩行だという盛り上がりがあって、玩具メーカーが作るとこういうものでかできる、と思って開発したのが「i-SOBOT」です。最新技術を搭載して2万円台という価格には驚かれましたね。」



- 「i-SOBOT」は二足歩行で17個のサーボモータ、音声認識と発話にセンサー搭載など、充実した機能を持って3万円を切るというのはどうやったらできるのか、と思いました。

木村貴幸氏「玩具メーカーが考えるからでしょうね(笑)。電機メーカーや大学がロボット開発する場合はより良い部品でより性能の高いものを作ろうと追求していきます。玩具メーカーも基本的には同じですが、買いやすい価格帯で作ることを前提に、遊ぶ側であるお客様が欲しいと感じる機能や、使いこなせる機能だけに特化しよう、と発想を切り換えていくと高価格でなくても良いロボット製品が作れると思っています。」



- ロボットのサーボはとても高価な部品ですね。玩具用だと耐用年数が短い等の制約があってローコストにできるのでしょうか? また「量産効果を見込む」ことが大きな理由のひとつですか?

木村貴幸氏「量産効果もありますが、お求め安い価格にしようと思ったら簡素化することが重要です。ロボットは汎用部品の価格が下がると価格も下げられますが、サーボに関してはそれでも汎用品では望むものがなかったので、「i-SOBOT」のサーボモーターを自社開発しました。当時はそのサーボ部品が欲しいという問合わせも多く頂きました。」



- 2007年に「i-SOBOT」ほどのロボット玩具を発売したにも関わらず後継製品がでなかったのはロボットブームが下火になったからですか?

木村貴幸氏「それもありますが、ロボットの場合、ブームが来るとその時点でできる技術の最高点に一定期間で達してしまうのです。その時代にできる最新の技術をできるだけ盛り込もうと思いますから。
i-SOBOTはお客様に評価され、ギネス認定や経産省の「今年のロボット」大賞を受賞したこともあり、研究開発は継続するものの、しばらく製品化はお休みし、市場や技術を様子見することにしました。」



- それで2014年、「Hello!MiP」(ハロー!ミップ)やイヌ型の「Hello!Zoomer」(ハロー!ズーマー)でOmnibotシリーズが復活しましたね。

木村貴幸氏「当時、ICチップやメモリ等、価格や技術的に限界だった様々なことが、数年を経てできるようになり、スマートフォンの普及で汎用のセンサー等の部品が安くなり、スマートフォンとの連携も可能になってきました。デアゴスティーニさんの週刊ロビがヒットしているという話や、海外からはGoogleがロボットに投資するというニュースも入ってきて、ロボットのトレンドが来ていると感じ、社内では再びロボットをやろうということになりました。」



アクロバティックな動きが可愛いペット型ロボット


タカラトミーはペット型ロボット「ハロー!ズーマー」シリーズを発売しています。ビーグル犬やダルメシアンなど2種類の犬種のほか、ネコ型の「ハロー!ウ~ニャン」を3月17日に発表しました(4月28日発売予定)。また、恐竜型の「ハロー!ダイノ」もラインアップしています。


「ハロー!ズーマー」は音声認識機能や赤外線センサーを搭載し、「こっちみて」や「おて」など、ヒトの言葉に反応する(写真はビーグル犬)


木村貴幸氏「イヌ型の「ハロー!ズーマー」は仔犬のように素早く駆け回り、ヒトの声にも反応してくれたり、30種類以上の言うことも聞いてくれます。足は車輪なんですが「一緒に遊ぶときは素早く駆け回ったら楽しいだろうな」という玩具メーカーの発想で、それを実現するには車輪が一番だと考えたのです。スマートフォンの普及によって汎用バッテリーの小型化と長時間駆動の技術が進み、それによってロボットのボディも小さくできるようになりました。ボディが小さくできればサーボやほかの機構も小さく、スマートでスタイリッシュにできます。」



- 新製品としてネコ型も登場しましたね

木村貴幸氏「ネコのペットブームということもあって「ロボットにも空前のネコブーム到来!」ということで、3月17日に「ハロー!ウ~ニャン」を発表しました。イヌの場合は音声認識で言うことを聞いてくれるようにしましたが、ネコは性格が気ままで、飼い主はお座りを命じたりはあまりしません。ネコらしさや自由奔放さを表現し、更にスキンシップをとることで楽しんでいただけるように、タッチセンサーを装備しました。耳やアゴなど顔のまわりをなでるとゴロゴロとのどを鳴らし、プルプルして喜びます。また、手の動きを検知して見つめたり、付属の「じゃれボール」を追いかけることもします。」


ネコ型ロボット「ハロー!ウ~ニャン」(2016年4月発売)。



ロビジュニア開発の経緯


- 週刊ロビの少年時代「Robi jr.」が大ヒットしましたね

木村貴幸氏「再びロボットのトレンドが来るということで、ペット型ロボットと併行して、市場調査を行いながら次はどんなロボットにしようかと社内で意見を出し合いました。その頃、週刊ロビかヒットしていて、社内でもロビを組み立てている社員もいたので「ロビの気に入っているところはどこ?」「ロビと何して遊びたい?」と聞くと「会話が楽しい」「ロビといつでも会話をしたい」という答えが返ってきました。また、ソフトバンクのPepperの発表もあり、これからはもっとロボットと会話ができるようになる、という流れを感じました。もともとi-SOBOTで音声技術を自社で持っていたので、会話に特化したロボットを作ろう、ということになりました。その際、キャラクター性のないものを出すよりも、ロビの子供だった頃のロビジュニアを開発できないかとデアゴスティーニさんに相談したのがはじまりです。ロビのように歩いたり踊ったりはできないけれど、声がロビと同じで可愛くて、いつでも会話ができる製品を目指しました。」



ロビジュニア(左)は座ったままで手足を動かす、会話に特化したコミュニケーション・ロボット。既に5万台以上売り上げるヒット商品となっている。右はロビ(週刊ロビ:©DeAGOSTINI All Rights Reserved.)。



クラウド型おはなしロボット「OHaNAS」の誕生


- 「OHaNAS」で再びコミュニケーション・ロボットの開発に取り組みました。OHaNASではクラウド(インターネット)を使った会話を実現しています。その経緯も教えてください。

木村貴幸氏「ロビジュニアのときと同様、「ロボットで何がしたいですか?」というアンケートをとったときに「自然な会話を楽しみたい」というたくさんの回答を頂きました。そこで「ロボットとお話しして楽しい」「ロボットがいることで家族の会話が増える」など、コミュニケーションを重視したロボット製品を企画しました。次に日本語の会話に特化してスムーズに会話できる技術をもっているのはどこだろうと考えたら、約3千万人が使っている「しゃべってコンシェル」のNTTドコモさんでした。」



OHaNASは会話することに特化したコミュニケーション・ロボット。「ロボットがいることで会話が増えるきっかけになれば」という想いで開発された



- スマートフォン等の中のキャラクターと自然に会話ができる「しゃべってコンシェル」ですね。NTTドコモは音声エージェントと呼んでいます。
OHaNASは動いたり移動することができませんが、i-SOBOTの実績を考えれば、歩けたり動けるロボットで会話を楽しめるロボットは企画されなかったのですか?


木村貴幸氏「実は現在の技術ではまだ、ロボットが身体を動かしながら会話を認識するのはとても難しいのです。ロボットが動作する時にはサーボやモータなどの機構から音が出ますが、その音がしばしばノイズとなって、正確な会話の認識を妨げてしまいます。動くロボットの場合でも、音声認識の精度を上げるために、多くのロボットは動作を一旦止めてから音声の聞き取りを行うというステップを踏んでいます。」


- なるほど、会話に特化するなら、会話の妨げになる動作音は排除したいということですね

木村貴幸氏「会話に特化したロボットであれば、動かなくても可愛いデザインで、両手で持てるくらいのサイズのものがいい ということになり、ニトロプラス社の石渡マコト氏にデザインをお願いしました。石渡氏は有名なアニメのロボットのメカニックデザインも担当した方です。
OHaNASは動くことはできませんが、原始的なジャイロセンサーを内蔵して、本体を揺すると音が鳴ったり、「目が回るよ~」と言ったりします。役立つと言うより「楽しい」という発想からですが。」



タカラトミーの「OHaNAS」。Bluetoothでスマートフォンと連携し、インターネット上のクラウドでユーザと会話を行う。「自動対話プラットフォームはNTTドコモの開発による」もの。全国のドコモショップでも体験ができ、販売も行われている。



近い将来のロボット玩具


- これから5年くらいのスパンで見た時、オモチャ市場でのロボットはどのようになっていくと予想できるでしょうか。

木村貴幸氏「ロボット市場はこれから5年で約5倍になると予測している調査もあります。予測通り拡大して欲しいと思いますし、ロボット関連のオモチャ市場も5倍にしたいと思っています。
ペット型や会話に特化した、最先端の技術を利用したロボット製品を出してみて、はじめて解ったこともたくさんありました。例えば、会話特化型ロボットは50歳以上の方が多く購入されているといったことなどです。OHaNASは会話の精度が日々格段に向上していますが、お客様である話し相手が50歳代の方と若者とでは、OHaNASの会話の内容や言葉使いを自動的に切り換えることなども必要かもしれないと思っています。」




木村貴幸氏「OHaNASはオモチャの枠を超えて、B to B市場にも活用のニーズがあると考えています」



- 「ロボットがどう役に立つのか?」「価格に見合うだけ役に立つのか?」といった視点でロボット製品を評価しがちですが、玩具メーカーは異なる点がありますか?

木村貴幸氏「基本的には同じです。ただ、おもちゃ会社が考えるロボットとして、明確に何かの役に立つといった機能を持たせようとは思っていません。「ロボットがいることで家族の会話が増える」「誰かに見せたくなって友達と一緒に遊びたい」「お友達に自慢したい」そういった楽しみをOmnibotシリーズで実現していけたら…と思ってきたし、これからも続けていきます。
ただ、先日のロボット展では英語で会話できるOHaNASのデモ機を展示しました。2020年の前には外国語に対応していることで観光面や受付など、OHaNASにはオモチャの枠を超えて、B to B市場でも活用のニーズがあると考えています。引き続き、楽しい企画を考えていきます。」


著者プロフィール
 神崎 洋治
TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」著者。デジタルカメラ、スマートフォン、インターネット、セキュリティ、ロボットなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数。ロボスタドットインフォにて、ロボットの衝撃を連載中。
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