石黒浩「アンドロイドとロボット社会 ― 世界と日本をつなぐ最先端のロボットとは」講演会レポート

2015-11-13 20:12:28 | ロボットニュース
ライター: アスカ
石黒浩氏講演会

2015年11月13日、六本木・国際文化会館の岩崎小彌太記念ホールを会場に「アンドロイドとロボット社会 ― 世界と日本をつなぐ最先端のロボットとは」と題して、ロボット学者で大阪大学教授の石黒浩氏による講演会が開催されました。

石黒浩氏といえば、ご自身をモデルにしたロボットのジェミノイドや、マツコ・デラックスさんにそっくりなマツコロイドとともにテレビ出演したりしているので、ご存知の方も多いことでしょう。そんな石黒氏の講演とあって、会場には満席になるほど多くの聴衆が駆けつけました。

講演会の内容は実に幅広く、ロボット社会から人間の進化、最終的に人間とは何か、まで発展。石黒氏のわかりやすい例えや関西風の笑いを混ぜての話に会場中はすっかり夢中になっていましたよ。

アンドロイドと未来 大阪大学 石黒浩


ロボット社会は受け入れられるのか


石黒氏はこれまで未来を創り出してきたのは神様ではなく、人間が作り出してきたとコメント。クレジットカードを例に挙げ、最初はこんなカードでお金の支払いが可能になることに誰もが気持ちが悪いと感じていましたが、それが便利だとわかると一気にみんなが使いはじめる。ロボットも今は気持ち悪いと言われるけれども、理解が広まれば十分に普及する可能性があり、ロボット社会は必ずくるとおっしゃっていました。

ホンダの二足歩行ロボットASIMO(アシモ)が登場したときの衝撃は大きいものでした。今ではソフトバンクのPepper(ペッパー)やヴイストンのCommU(コミュー)・Sota(ソータ)といった人間の形をしたロボットが10万円から20万円程度で購入できるまでになり、人型ロボットがだんだん身近な存在になりつつありますよね。ロボットのある(いる)社会とは一体どのようになっていくのでしょうか。


ロボットの活躍の場は生活のあらゆるところにある


講演の中ではさまざまなロボットの例が紹介されたのですが、今ではインターネットの技術とコンピュータとロボットをつなぐ技術のおかげで音声・画像認識機能が利用できるようになり、人間の脳のような処理(ディープラーニング)が可能になりました。より人間らしいロボットを作れるようになったんですね。

情報化社会とロボット

なかでも、より人間の身近なところで活躍しそうなのがパーソナルロボットです。石黒氏はパーソナルロボットは言語教育に有効であるとしています。恥ずかしがり屋でなかなか英会話の勉強ができない人でもロボット相手なら恥ずかしがらずに英会話の練習ができてしまうと述べていました。確かに、筆者は人との対面が苦手な性格なために英会話スクールへ行けずにいるので、このお話を聞いてドキッとしました。



ロボットがテレビショッピングの出演者になることも紹介。2台のロボットがお互いに会話をしながら商品を紹介することも将来的にあり得るとし、会場では石黒氏のお気に入りだというデモ映像を視聴。人間に取って代わり、今の人間がやっていることをロボットがやる時代が訪れるのです。

SotaとCommUがテレビショッピングをする様子



また、高齢化が進む日本社会ではロボットと一緒に暮らすことでお年寄りの認知症を予防・改善する効果も期待できます。介護の現場では認知症患者と介護士の間でお互いの暴力が社会問題になっていたりしますが、認知症を患っている人はロボットに言われると暴れずに言うことを聞いてくれたり、抵抗せずにご飯を食べてくれるそうです。ロボットが人間の代わりに介護するメリットはほかにもたくさんありそうですね。




人間の肉体は機械に置き換えても問題ない


石黒氏の発言で非常に興味深いと感じたのが「メガネや自動車、スマホなど人間は活動のなかでどれだけ人工物や機械に頼っているのかと考えたときに生身は10%も使ってないんじゃないか」という指摘でした。さらに進化すると人間は動物的なところを使わなくなると。

人と関わる人間型ロボットに支援されるロボット社会の実現

人間は遺伝子と技術によって進化してきました。ただ、技術の進化は遺伝子の進化よりもはるかに速いことから、人間は技術によって拡張されていると言えます。その拡張は、例えば歩くことから自動車が開発されるなど、人間の能力をヒントに開発されているんです。そして、技術開発は止まることはありません。技術によって能力を拡張することは「生き残る」という遺伝子に刻み込まれた使命に従っています。


つまり、生き残るために人間は進化し、その多くは技術によって支えられていると。その話の延長として、人間は自らが存在し続けるのが第一目的なのだから、肉体そのものは必要条件ではない。人間のすべては機械に置き換えても問題ない、生命の限界を超えた進化(ブレインアップローディング)はできる可能性があると石黒氏は考えています。人間国宝の落語家・桂米朝さんをアンドロイドにした「米朝アンドロイド」がそれに近く、桂米朝さんは他界した今でも米朝アンドロイドとして落語を披露しています。

米朝アンドロイドの写真



歴史上の有名な人物は死んだ後に銅像になっていますけど、これからはアンドロイドになるのも不思議じゃないわけです。自分が死んでもアンドロイドとして生き残れる。「生き残る」ことは人間の遺伝子に書いてありますし、生き残る手段があればアンドロイドになることを選択するのはおかしくない、と石黒氏はおっしゃっています。映画などで「私が死んだら灰を海に撒いてくれ」なんていう遺言のシーンがありますが、今後は「私をアンドロイドとして存在させ続けてくれ」という選択も当然あり得るということなのです。

人間の進化とは死なないアンドロイドとして優れた人間を残すこと


人間がアンドロイドになる選択肢を持つ未来


最後に石黒氏は、「人類は無機物から生まれて無機物に戻る。有機物である人間の本当の意味ってなんだろうと考えたときに、地球が加速度的に進化するために有機物を生んだと考える。ロボットの研究の果てにその答えがあるかもしれない。人間は永遠に生きる無機物の知的生命体。人間はアンドロイドになるために生まれてきたかもしれない、という仮説を立てている。」と締めくくっていました。

石黒浩氏の講演会の会場模様

近い将来としてパーソナルロボットが人間を支える社会は想像できたものの、人間そのものがアンドロイドになって生き続けるというお話は非常に衝撃的で面白いものでした。いつの日か、家族やペットが死んでも姿形のそっくりなアンドロイドで生き続け、そんなアンドロイドと普通に会話できるのが不思議じゃない未来になるんでしょうね。



石黒氏はこの講演会でのお話にはまだ続きがあるとし、とても2時間では話し足りない様子でしたが、本当は最後の仮説のところをもっと深くマニアックにお話したかったのかもしれません。もし、興味がある方は石黒氏の研究をチェックしてみてはいかがでしょうか。

石黒浩(ロボット学者/大阪大学教授)

ライター: アスカ
« メンタル、視... 【マッキー小... »


【最新の記事】


【オススメのロボット記事】