To Read, or Not To Read, That Is The Question

読むべきか、読まざるべきか、それが問題ダッ。

ジョン・グリシャム 『テスタメント』

2010-04-08 | 海外作家 カ
松下電工(現パナソニック)の創業者、故松下幸之助さんが
亡くなった時の遺産総額が約2,500億円という天文学的
な金額だったのですが、『テスタメント』に登場するアメリカ
の大富豪の総資産が100億ドル、現在の日本円にすると、
約9,000億円くらいですか、この遺産を巡って繰り広げら
れる骨肉の争い、それに弁護士が絡んできての法律関係
あるいは法廷ドラマと展開してゆきます。

アメリカの大富豪、トロイ・フェランが、自社ビルから身を投げ
て自殺します。おりしもその日は、遺産をめぐって、フェランの
精神鑑定をしようと、息子たちが医者を連れて、遺言状の無効
化を図ろうとしていたのです。
しかし、80歳を過ぎてもフェランの頭はまったくの衰えを見せ
るどころか、医者たちも舌を巻くほどの回転の早さ。
精神鑑定が終わると、突然、遺言状の破棄を付き人に命じ、
新しい遺言状に署名をします。そして、車椅子から立ち上がると、
立会いの弁護士や付き人の目の前で、窓から飛び降ります。

最新の遺言状には、3人の前妻たちとのあいだに生まれた6人
の子供たちには、現時点での負債を完済するだけの金額のみが
遺産として分配され、前妻たちには、離婚の時点で相応の金額
を支払い済みなので分配なし、そして残りの全ては、「宣教師
レイチェル」というなぞの女性に渡すとあったのです。

フェランの顧問弁護士のスタフォードは、フェランの残した調査書を
見て、レイチェルはフェランの隠し子で、現在は世界の先住民族に
布教活動をする団体に属して、ブラジルのアマゾン奥地に住んでいる
というところまで判っているとのこと。

6人の子供たちは、いずれ劣らぬ「大ばか者」たちで、成人の記念
としてそれぞれ500万ドルもらったものの、全員すぐに使い果たし、
フェランの子会社に入社させるも、どこでも能無しぶりをいかんなく
発揮するといった始末で、この6人はつまり遺産を実質もらえない
ことになり、それぞれが弁護士を立てて、遺言状の無効を訴え裁判
に出ます。

一方、スタフォードは、このレイチェルを探して、遺言状にサイン
をしてもらうために、弁護士事務所で元パートナーだった、今は
アルコールと薬物依存のリハビリ施設にいるネイトをブラジルに
向かわせることに・・・

やはり、というか、グリシャム作品にはおなじみの、アクション、
法廷、法律、人間の堕落からの這い上がり、善悪のわかりやすい
構図などが出てきて、画一的というか、あまり変わり映えのない
同じような登場人物たち。
それでもそんなにマンネリとは思えず、さらに新作のたびにベスト
セラーになるのは、人間がしっかりと描けていて、物語の核には
有限のものではない、普遍性を持ったテーマが挙げられているの
です。
『テスタメント』では、アマゾンの奥地の湿地帯に住む原住民たち
に混じって、文明生活を捨てて暮らすアメリカ人女性(レイチェル)
と、アメリカで金の亡者と成り果てた遺産相続人たちと弁護士たち
の対比を描くことによって、この人間の両極ではあるけれど、しかし
どちらも同じ人間なんだ、という表面的でも形式的でもない、人間
の本質が時にユーモラスに、シリアスに、シニカルに小説というか
たちで表現されているからこそ支持されるのでしょう。

個人的な意見としてですが、歴代のグリシャム作品の中で、ベスト3
に入ります。
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