よしながふみ『大奥』(既刊7巻)
昨年バッハさんに薦められた漫画です。
悪いことは言わない、これは読んだら絶対面白い。
『大奥』と名のつく映画やドラマも多いので、
松下由樹とかのアレか?と思ったのですが、違いました。
二宮和也・柴咲コウ出演の映画の原作となった漫画です。
(私はどれも見てないけど。)
舞台は江戸時代のように見えて、読めばわかるんですが
完全に架空の世界です。
登場人物は実在のそれの名前で出てきますが、
なんと史実と性別が逆転しています。
こういうのを“歴史改変SF”と呼ぶらしい。
『銀魂』みたいなもんかなぁ。
ありゃちょっと違うかな。
あらすじざっくり説明。
三代将軍・徳川家光の時代に、
若い男子のみが罹る謎の疫病が流行し、
国中の男性人口が凄まじい勢いで激減し、
ついに男子の人口は女子の4分の1にまで減った日本。
遂に家光もその疫病に罹って死んでしまう。
家光の乳母・春日局は世間からその事実を隠すべく、
家光の落胤・千恵にその身代わりをさせる。
紆余曲折を経て、将軍職は女性が引き継ぐ慣わしとなり、
将軍が美しい男子を数千人を囲う場として“大奥”が成立する。
不思議です。
実に不思議な漫画です。
ていうか、ある意味すごい漫画です。
将軍が全員、女なんです。異様です。
で、これも銀魂に通じるところなのですが、
登場人物のキャラが、史実を引き継いでいる点が面白いです。
前から再三書いていますが、歴史好きの私でも、
江戸時代はなんか苦手。
元禄文化と化政文化の違いも分からない。
だいたい、徳川幕府が大嫌いなんだよ。
学研まんがの『豊臣秀吉』と『淀君』を愛読してたクチだもん。
徳川家なんて、目の敵にしてましたもん。
しかし、これ読んで、
江戸時代のことをもっと知りたくなってしまった。
ああ、まんまと。
家光以降の将軍は、すべて女性が継ぐことになります。
そして、将軍をめぐる奥さんたち、じゃなくて夫たち。
際立っている登場人物は、
三代将軍・家光(千恵)
家光の側室・万里小路有功
五代将軍・綱吉(徳子)
家光の側室で綱吉の父・桂昌院
八代将軍・吉宗(信) ←実質的な主人公
人物として敬愛するのは、家光と吉宗なのですが、
ここでは「悪女」として描かれている綱吉の強烈さに
なぜかつい魅せられてしまうのです。
その美貌で周囲の人間を翻弄する蠱惑的な女性でいながら
時々見せる怜悧さにゾッとさせられる綱吉。
部下の夫(史実では妻)にやたら手を出すという悪癖は、
実在の綱吉将軍も変わらなかったらしい。
ちなみに、“犬将軍”と揶揄される悪政をしく経緯も
しっかり描かれています。
どの時代を通じても痛感させられるのは、
“子を持つ親の心”が切ないほどに描かれていること。
綱吉が愛娘を失って、
「なぜ母を置いて死んだ!」と嘆き悲しむ様など、
憎いキャラのはずでも、そうした人間らしさもよく伝わってきて
どの人物も非常に魅力的に映るのです。
好きなセリフの一つは、桂昌院と万里小路有功の以下のやりとりです。
桂昌院:「有功様にはわからへんのや、親って生き物が
子供のためにはいかに愚かしうなってしまうのかを‥‥」
有功:「そやろ。私は人の親になった事があらへん。
世の中には私の知らん事ばっかりや」
現在も連載中。
先がますます楽しみです。
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