OL日記『ロバみみ』

言いたい!でも言えない…。ならば、穴を掘ってでも叫びたい! フツーのOL・ロバみみが創り上げた「ネットの穴」へようこそ。

・『るつぼ』

2016年10月18日 | ・ロバみみの芝居小屋
夏以来のシアターコクーン。

ここへ来ても、今日は剛くんはいないのか……

と、つい先々月の舞台に思いを馳せ、一人、きゅんとなっていたのですが、

「るつぼ」

マジですごかったです。

最前列で涙止まらず……。

ロバみみ的に今年一番かもしれない。

物語は平たく言えば、「魔女狩り」の話。

キリスト教の戒律を逆手にとった少女の復讐劇。

奥さんのいる男性(堤氏)と一度だけ道ならぬ関係に陥った少女(黒木華ちゃん)が、
悪魔にとりつかれたという虚言によって、その男性の奥さん(松雪さん)を
「魔女裁判」へ送り込む。

そして、堤氏演じるプロクターは、姦通罪を犯した罪と引き換えに
奥さんを救い、少女と共に地獄に落ちる覚悟をするが、
「助けたい」という夫婦のお互いへの想いが、裁判を思わぬ方向へと導いていく。

観客は真実を知っていて、登場人物たちが翻弄される様をハラハラしながら観るパターンと、
観客も真実を知らず、主人公と共に、真相を知って行くパターンとあると思いますが、
「るつぼ」は前者です。

だから、とにかく黒木華ちゃんの怖さがすごい迫ってくる。

小悪魔じゃない。あれは悪魔でした。

この間まで「重版出来」でキュートに駆け回っていた面影ナシです。

一幕はとにかく、「魔女狩り」で村人たちがどんどん牢に入れられていくまでを
スピーディーに緊張感であおられるように進んでいく。

小娘たちがどんどん大人たちを騙して、翻弄していく。

罪のない女性たちが次々に連れ去られてしまう怒涛の展開。
まるで目が離せませんでした。

そして、「魔女裁判」の二幕。

ここからもすごかった。

そこには、愛憎に端を発した復讐だけじゃなく、
キリスト教の法の下、権威とメンツを守るために蝕まれた法廷人の正義や、
ちぎれんばかりの良心の呵責、
死を前にして、人を裏切り真実に顔をそむける人間の弱さと
最後まで自分の中にある誇りを胸に死を覚悟する人たちの清廉さ、
そして夫婦の愛が怒涛のように押し寄せてくる。

すべてを知りながら観ているから、
誰の心がひどく落ちぶれていて、誰の心が清らかで美しいのか、痛いほどよくわかる。

そして、ブロクターの葛藤。

汚れた心でも、みじめな虫けらでも、生きていたいと思う弱さと、
教会と法廷のメンツのために利用される屈辱。

悪魔のささやきと自らの良心の叫びの間で
引き裂かれんばかりに揺れる姿が、涙なしには見られませんでした。

イエスの御心に背いているのは誰だか、
舞台の上にいる登場人物たちは、みんな自分自身が一番よくわかってる。

聖者の顔をして悪魔に心を売っている。

誰かを騙せても、自分は騙せない。

自分を裁くのは自分でしかない。

心の声に耳をふさぐのか、自分の中にこそ存在する誇りと言う名の神を見出すのか。

ここ数年の堤さんの芝居で、この「るつぼ」は最高だったと思う。

ベニサンピットの板の上にいた時の堤さんを観たような気がしました。

正直者はバカをみるというけれど、
清らかな心は、それ自体が自分への救いと赦しなのかもしれない。

キリスト教のことは詳しくはないし、よくわからないけれど、
神の啓示を受けて勝利の女神のごとき存在だったジャンヌ・ダルクを処刑に追いやったように、
人間の集団心理の怖さは感じることができる。

恥ずかしいので、観劇では泣くことは少ないのですが、
なんでだか、今回は劇場を出ても涙が止まらず、
よほど、私の琴線に触れたんだろうと……。

リチャード・ギアとジョディ・フォスターの「ジャック・サマースビー」という映画を
思い出しました。
あの映画も、顔がパンパンになるくらい泣いたんだった。

赤い鼻のまま、渋谷を歩くのは恥ずかしかったですが、
見応えありです。
昔の堤さんを彷彿させるすばらしい作品。

愛情表現が上手にできず、愛を素直に受け止められなかったことに最後に気づく
妻の松雪さんも切なかったです。

溝端くんも、出てきた時は「青くさい牧師だなぁ」と思っていたのですが、
その青臭さが実は肝でした。
良心の呵責に耐えきれずに潰れそうな若い感じがとてもよかったです。

他の役者さんたちも、書ききれませんが、みなさん素晴らしかったです。

余談ですが、休憩中、ロビーで振り向いた瞬間、
ロバみみの目の前に、まったくもって無表情のオジーが(笑)

このブログの文章じゃ、ロバみみの興奮しか伝わらないと思いますが、
古田新太氏も観劇していた「るつぼ」。是非!
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