風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

夏の西国ひとり巡礼 1-1

2017-08-09 | 近畿(奈良・和歌山)
● prologue

数年前から日本百観音巡りをしている私。
あまりなじみがない言葉ですが、日本百観音巡礼とは、西国三十三所・坂東三十三箇所・秩父三十四箇所という、関西と関東と秩父の100のお寺の観音さまをお参りすることです。
坂東と秩父は関東地方にあるため、日帰りできますが、関西地方になる西国は、遠いためになかなか周れません。

神社やお寺巡りが好きなので、軽い気持ちで始めましたが、巡礼というと、結構ものものしい響きです。
自分でも、ちょっとした楽しみとして、旅のついでに周ってきましたが、気軽に行ける範囲のお寺は巡り終え、本気で行かなくては辿りつけないような大変な場所ばかりが残りました。
いよいよ佳境に差し掛かったということです。

来年、開創1300年を迎える西国三十三所。この時期は特別ご開帳もあるし、特別なスタンプを御朱印に押してもらえます。
(無理はせず、ライフワークとして一生かけてのんびりいこう)と思って始めたのに、気がつけば急ぎがちになっています。
まだまだ修行が足りませんね!

そんなわけで、今回は西国(さいごく)三十三所のお寺巡りのために関西に行くことにしました。
観光ではなく巡礼が目的なので、今回はストイックな旅になりそうです。
だって私は巡礼者。関西の友人にも会わないで済ませる予定。
この時期、なによりも心配なのが、体力を奪う夏の暑さです。あまり照りつけなければいいけれど。

● さっそくリスケ

一日使ってお寺巡りをするには、朝から動かなくてはなりません。
横浜Ycatから夜行バスに乗り、8時に和歌山駅前に到着しました。
途中の名古屋辺りで事故渋滞があり、到着が遅れて、乗る予定の電車は行ってしまいました。
最初から予定がずれて、がっかりします。

この日は、和歌山のお寺2つ(紀三井寺、粉河寺)と大阪のお寺1つ(施福寺)を訪れる予定。
かなりきつい予定を組んでいるので、時間がちょっとずれれば計画倒れになる可能性大。
慎重にプランを立て直さなくてはなりません。

● 駅員さんのアドバイス

(2番寺の紀三井寺よりも3番寺の粉河寺を先に行くべきか)、(でも粉河寺が先だと戻ることになるし)と、電光板を見て考えていたら、女性駅員さんが「どうされましたか?」と声をかけてくれました。
相談してみると、時刻表を持ってきてくれて、一緒に考えてくれました。



「どちらのお寺に行く路線も、本数は1時間に2本。同じくらいの時間になる」と言われたので、戻りの距離の少ない2→3の順番でいこうと思ったら、「ちょっと待ってください」と彼女。
奥に引っ込み、「次のきのくに線は、大雨の影響で遅れてくる予定です。それが折り返しになるので、遅れることを考えると、最初に2ではなく通常運行の3に先に行った方がいいかもしれません」と教えてくれました。



ということで、予定を変更し、まずは奈良行きの和歌山線に乗ることにします。
親身になって考えてくれた駅員さんにお礼を言いながら「今の時間、大勢の駅員さんが改札のところで立っていますが、毎朝こうなんですか?」と聞いてみました。
いつも、出勤にいく人たちをこうやって見送っているのなら、和歌山駅ってサワヤカだなあと思ったのです。
でも「違うんですよ。特急くろしおが遅れているからです」とのことでした。
くろしお号のお出迎えだったのね~。



和歌山線は2両編成。何の気なしに2両目に座りました。
次の駅に着き、向かいの人が立ち上がって、ドアの前に立ち、降りようとしましたが、ドアが開きません。
(あれ?)と思いました。その人も当然思っていることでしょう。
だってドアには、開けるためのスイッチがないんです。
どういうこと?
混乱しているうちに、どのドアも開かずに、電車が動き出しました。ええ~?
さらに次の駅のアナウンスが流れ、「お降りの方は、1両目から降りてください」と言っていました。
その人も私も聞いていなかったようで、結局その人は一つ先の駅で降りました。
1つ駅を戻るにも、本数が少ないから大変だわ。



● 小雨まじりの粉河の町

30分ほどゴトゴト揺られて、粉河で降りました。
1両目に移動しようとしたら、この駅は2両目でもドアが開きました。
うーん、旅人をまごつかせるローカルルール。

電車を降りると細かい霧雨が降っていたので驚きました。
南部の方は電車が遅れるほど大雨だったと言うけれど、さっきまでの電車の中では晴天だったのに。
でも今回は、暑さとの戦いだと思っているため、日が照らないのは助かります。
といっても湿気がとても強いのですが。



もうすぐ、紀州三大祭の粉河祭があるようです。
山笠祭りとだんじりを一緒にしたみたい。

● クスノキの御神木

駅を降りるとお寺の表示があったので、それに沿ってまっすぐ歩いて行きました。



途中、粉河寺の門前の大神宮の境内に樹齢1000年のクスノキの巨木がありました。
境内じゅうに枝を広げており、まさに神社の御神木です。



大きなお寺の大門のところで、前方にバスツアーらしき団体御一行様を見かけました。
この方々がみんな御朱印をお願いするとなると、えらく待つことになってしまいそう。
時間に限りがある身としては、先を急がなくては。

ご年輩の方々ばかりだったので、皆さんゆっくり歩いています。
そう急がずとも、静かに横を通り抜けられました。



大門の次には、立派な中門が見えてきました。
山号の「風猛山」の字が書かれています。
名前から、どれほど強い風が吹いているのかと思いましたが、無風でした。



門の中には四天王がいましたが、足元で踏まれている邪鬼を集中的に撮影します。
接近の度合いで力の入れ方の違いが分かります。



● 西国一の大本堂

このお寺は宝亀元年(770)開創の立派な古刹。
本堂に着く頃には、傘が必要なほど、かなりの雨が降ってきました。



江戸時代中期の本堂は、西国三十三ヶ所の寺院の中で一番大きいと言われています。
奈良の長谷寺の方が大きな気がしますが、気のせいなんでしょう。
横から見ると、重ねたような立体的な屋根組みになっています。



実はこのお寺は、天台宗の一派、粉河観音宗という変わった宗派。
ここのご本尊は、千手千眼観音ですが、絶対秘仏で、今まで誰も見たことがないそうです。
千眼って、ちょっとこわいんじゃない?



またこのお寺には、千手観音の化身といわれる童男大士(どうなんたいし)がいるとされています。
境内の出現池から白馬に乗って現れたんだそう。

● 芭蕉の句碑と牧水の歌碑 1



芭蕉の句碑がありました。
「ひとつぬぎて うしろにおひぬ ころもがへ」(『笈の小文』)。

近くには若山牧水の歌碑もありました。
「粉河寺 遍路の衆の打ち鳴らす 鉦々きこゆ 秋の樹の間に」



まだ朝早いからか、平日だからか、境内の茶屋は閉まっていました。



参道の小料理屋でしょうか。
干支の鶏と夏草の描かれた丸皿が飾られていました。
実際の夏草とのバランスがすてき。

● 切符を買えずに電車の中へ

雨がザーッと降ったり、止んだと思うとカーッと照りつけたり。
変わりやすい、変な天候です。


和歌山の桃


元来た道をサクサクと戻り、電車の到着時間少し前に駅に到着。
切符を買おうとしたら窓口は閉まっており、駅員さんは不在。
電車が近づいたら開くかと思って待っていましたが、開かないうちに電車がやってきました。

向こう側のホームだったので、驚いてお財布を閉じきれないまま抱えて猛ダッシュ。
階段を上って降りて、ホームにいた駅員さんに「切符が買えてないんですが」と言います。
「どこまで行くの?」「ミーデラです」「じゃあ電車を乗り換えたら駅員さんにそう言って」
この駅の駅員さんは、この電車からなにかを受け取るために、ホームに出ていたようでした。

そんなわけで、駅員さん公認の無賃乗車(?)となりました。
1両目に駅員さんが控えており、その足元にはジェラルミンケースがいくつも置いてあります。
駅に停まるたびに、待ちまかている駅員さんにそれを渡す様子を眺めていました。
あの中には、なにが入っているのかしら。朝刊かな?違いますよね~。



再び和歌山駅に戻り、今度はきのくに線の発着ホームに移ります。
反対側のホームに特急くろしおがやってきました。
ホームは大賑わい。



ホームの乗車位置目標シールがかわいい!
四川省の山奥に住むパンダは、海とは関係が遠いものですが、アドベンチャーワールドだとぐっと近くなるんですね。

● 出口をさがして紀三井寺

紀三井寺まではたったの2駅。精算しているうちに着きます。
でも、お寺への表示がありません。2つに1つだとあてずっぽうに降りた口があきらかに違ったので、再び改札口まで上りましたが、ここにも全く表示がありません。
駅員さんはほかの人の対応をしているため、うろうろしたあげく、反対側の口に降りてみました。

駅名にもなっているくらいだから、粉河寺のようにもっとわかりやすくしてもいいのに。
裏側の駐車場でおばあさんを見かけて、はらはらしながら聞いてみました。
「その道の突き当りを右に曲がってまっすぐ行ったら、あの山に見えるのが、観音さん!」
にっこり笑って教えてくれます。駅的には裏側の方が、お寺側でした。

● 長い結縁坂

てくてく歩いていくと、大きな朱門が見えてきました。



門をくぐるとすぐに、231段の急な心臓破りの階段が上まで続いています。
わあ、これ登らなくちゃいけないのね。



ここは結縁坂という名前。
紀の国屋文左衛門は、母親を背負ってこの坂を登り、観音様へお詣りしていたそうです。
ある日、ぞうりの鼻緒が切れて困っているところに近くの神社の宮司の娘が通りかかり、鼻緒をすげ替えたのが縁で二人は夫婦となりました。
また彼は、神社の出資金でみかん船を出して莫大な利益を出しました。
それで結縁坂という名がついたそうです。



大変ですが、そこに石段がある以上、行くしかありません。
たとえ夜行バスで来て旅行道具すべてしょっている身だとしても。
登っている人はほかにおらず、下る人たちとすれ違います。
滑りかけて手すりにつかまり、「危ないところだった」とため息をつく男性がいました。
一気に登ると息切れするので、少しずつ休みながら一段一段登って行きます。

● 芭蕉の句碑と牧水の歌碑 2

途中に、湧き水が出ていました。
ここの正式名称は「救世観音宗総本山紀三井山金剛宝寺護国院」という眩暈を起こしそうな長さですが、紀州にある、三つの井戸のある寺ということで、紀三井寺と呼ばれています。



三つの井戸の三井水(吉祥水・清浄水・楊柳水)は「名水百選」に選ばれており、松尾芭蕉が紀三井寺を訪れた際に詠んだ句を刻んだ碑が建てられています。
「みあぐれば さくらしもうて 紀三井寺」
『奥の細道』で「芭蕉翁足跡最南端の地」と言われているのが、ここ紀三井寺。
最北端は、秋田のみちのく象潟蚶満寺(かんまんじ)。
よく動きましたね~。忍者だといってもいいくらい。

ちなみに、先ほどの粉河寺同様、若山牧水も紀三井寺を訪れています。

「紀三井寺 海見はるかす 山の上の 樹の間に黙す 秋の鐘かな」

「一の札所 第二の札所 紀の国の 番の御寺を いざ巡りてむ」

一の札所とは熊野にある青岸渡寺、第二の札所とはここ紀三井寺。
もしや彼も、西国巡礼をしたのかしら?

● 見晴らし抜群



結縁坂の横には石垣がありました。お城みたい。
別にお城にだけ石垣があるっていうわけではないんですね。

フーフー言いながら、結縁坂を全部登り終えると、とてもいい眺望が開けていました。
すぐそばに和歌山湾が見えます。



右側には新しい四角い観音堂があり、中には高さ12mの巨大な金の大千手十一面観世音菩薩像がありました。
木造立像仏として日本最大の総漆金箔寄木立像。
厳島神社のお寺の不動明王を手掛けた仏師、松本明慶工房の作品だそうです。
左側にある本堂は、ぐっと古めかしいものでした。



本堂にかかる赤提灯。
書かれている文字が長いので、細長いフォルムになっています。



● 電車をのがす

そろそろ次の電車がくる時間が近づいてきたので、急いで帰途につきました。
怖さも忘れて、急な結縁坂を早足で降ります。



駅までの道を急ぎましたが、改札に入る前に、電車は行ってしまいました。
あとちょっとだったのに。
次の電車は30分後。最初で少しつまづき、ここで時間のロスをしたため、いよいよ旅程をこなせるか不安になってきました。

次の施福寺まで行けるか、行けないか。
施福寺はアクセスが面倒な場所で、いくつも電車とバスを乗り換えていかないといけません。
諦めて、別の日に出直すのがいいかな。でも泊まる場所は京都なので、お寺のある和泉までは距離がありそう。

待ち時間にルート検索をしました。
諦め半分でしたが、気が付けば、次の電車でも間に合うルートがただ一つだけありました。
考えていたプランは、和泉中央駅でバスが来るまで1時間待つことになりますが、これは15分ほどの待ち時間で済みます。
よし、これでいこうっと。
待ち時間が余っていたので、そこで調整ができてよかったです。
和泉中央駅は新しく、周辺には何もないらしいので、長く待たずに済んで逆にラッキーだったかも。

● 和歌山から大阪へ



次にやってきた紀勢本線で、和歌山駅にみたび戻り、そこから大阪-和歌山間を結ぶ阪和線に乗り換えます。
午前中は、和歌山駅を拠点として東と南に動きました。
これから、紀ノ川の上を通って、大阪に移動します。
大河を渡りながら、合唱コンクールの課題曲を思い出しました。


♪~水清く 大地を潤し 流れゆく川よ 紀の国 紀の川~♪


歌の通り、ゆったりと流れる豊かな河でした。

その2に続きます。


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