2016@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

ポー川のひかり

2013-01-22 | ■映画

  amazonのKindle FireHDを購入したので電子版の書籍をどんどんダウンロードして行き帰りの列車内で楽しんでいる。青年のころに読んだ本、読もうと思ってそのままになっていた本、新しく見つけた本などを手当たりしだいにダウンロードする。数百冊の本を一度に抱えて歩くなど到底不可能なことだが、電子書籍ならそれが可能だ。

  今のうちに出来るだけ沢山の本を集めて仕事を引退した後で、どこかに隠遁して少しずつ読もうと企んでいたら、思いがけなく「ポー川のひかり」という映画に出会った。「木靴の樹」のエルマンノ・オモリが監督した作品で、ミステリー・タッチの冒頭場面からどんどん引き込まれてしまうのだが、強烈な印象を残すひとつの言葉に出会った。

  『世界中の本よりも友だちと飲むコーヒーの方が良い』。古都ボローニャを舞台に、智の象徴である分厚い書物に次々に釘を撃ち込んでいく衝撃的なオープニング・シーン、物語後半に吐露される主人公の一言で、僕らは“智”の有りようを考えて立ち止まる。

  『世界中の本よりも友だちと飲むコーヒーの方が良い』。

  
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日本フィルハーモニー交響楽団(5月18日、サントリーホール)

2012-05-22 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  上原彩子(ピアノ)、アレキサンドル・ラザレフ(指揮)で日本フィルの定期演奏会。

  前半に演奏されたラフマニノフの協奏曲第3番は、わが国のピアノ演奏史に残る大名演。とてつもないテクニックでオケとわたり合う​上原、ラザレフがどれほど煽り立てても、ものの見事にソリストとしての強固でゆるぎない音楽を演奏しつづける。ピアノという楽器​から鋼(はがね)の音が聞こえたのは久しぶりだ。

  後半はチャイコフスキーの交響曲第3番。ひたすら温かく、明るく、楽しい演奏だった。それは軽いという意味ではなく、灰色に凍る北国の空に束の間光がさして、辺りの温度が少しずつ上がっていくような、そのような温かさ、明るさ。私たちは時を惜しんで陽だまりの中で踊るのだが、心の中では、いつかこの空が再び曇ってしまうことを知っている。日本フィルの豊饒な音色が、そんな景色を見事に描き出していた。
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ゲザ・ホッス リサイタル(5月17日、浜離宮朝日ホール)

2012-05-22 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  2001年、別府のアルゲリッチ音楽祭ではじめてゲザ・ホッスを聴いた。ゲザはまだ十代だったが、天才バイオリニストとしての存在感は絶大だった。あれから約10年、フォーレ、ドビュッシー、サン=​サーンスといったフランスものを東京で聴いた。

  ソナタの各楽章で客席から拍手が起きたのは、聴衆が音楽を知らないからではなく、楽章の切れ目で思わず手をたたきたくなるほど魅力的な演奏だったからだ。それほど個性的で独創的な解釈だった。ポゴレリッチがショパンを縦横に分析=分解していくように、ゲザは大作曲家の有名作品を独自の世界観で読み解いていく。常識的な句読点に気を配らずに、自らの言語、フレーズで演奏する。フランス音楽のエスプリなどおかまいなく、いっさいの固定観念から解き放たれた新しい音楽が生まれてくる。聴きなれた音楽が、現代の尖端を走る演奏家によって全く新しい衣装をまとうプロセスに立ち会うのは、じつに楽しいものだ。類まれなるテクニックに、演奏者自身が耽溺しているように見えた瞬間もあったが、それやこれやを全て呑みこんでしまう巨大な音楽の器が、彼には備わっているように見えた。

  アンコールに演奏されたグルックの「メロディ」で、はじめてシンプルに旋律を辿ったゲザは、当夜、もっとも深いpp=ピアニッシモを奏でた。その幽玄な響きの中に、かつての天才少年が大人の演奏家へ脱皮していく羽音を聴くようで、胸が熱くなった。


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ビッグ・リボウスキ コーエン兄弟

2012-05-15 | ■映画
  コーエン兄弟の「ビッグ・リボウスキ」がブルーレイで出たので早速購入しました。コーエンのような映像のタッチは、やはりブルーレイで見ると色彩感やディティールへのこだわりが明確になり、楽しさが倍増します。

  それにしても、同姓の億万長者リボウスキに間違えられたジェフ・ブリッジスが散々な目に遭う喜劇は何度見ても面白く、コーエン作品の中でも後味のよい部類に入るものです。劇中に散りばめられた無益な戦争への鋭い視点、ベトナム、イラクといったテーマが人間の日常に潜む不条理とダブルイメージされていきます。


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ジェネオン・ユニバーサル
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ナッシュビル ロバート・アルトマン

2012-05-05 | ■映画
  30年位前、日本での封切り時に見に行ったものの、最初から最後まで寝ていた記憶しかない映画だったのですが、改めてDVDで見直してその素晴らしさに唖然としました。

  先月の半ばに仕事でナッシュビルに滞在していたことで、それぞれのシーンへの思い入れも一層深くなったのかもしれません。それにしても、アルトマンの群衆処理はいつもの事ながら実に見事です。大統領選を絡ませつつ、アメリカ南部の音楽の街ナッシュビルの5日間を重層的に描いたこの映画は、様々な思い、境遇の人々の関係性を編み上げるうちにアメリカが抱える巨大な問題を明らかにしていきます。いわゆるハリウッドの大スターは登場しませんが、いぶし銀のような演技力をもった名優たちの演技にも圧倒されます。

  この種のDVDソフトは、リリース後すぐに廃版になってしまう傾向があるので、まずは入手することをお勧めします。

ナッシュビル [DVD]
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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
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日本人作曲家の作品 初演音源CD化 (日本経済新聞 2012年3月3日 朝刊 文化欄)

2012-03-03 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  本日の日本経済新聞・朝刊・文化欄に「戦後活躍 日本人作曲家の作品 発掘・保存機運高まる 時代に応じ再演/初演音源CD化」という記事が大きな扱いで掲載されています。

  その中にナクソス・ジャパンのCDが登場し、私の名前も出てきます!大新聞に名前が載るのは2度目、最初は20年くらい前、学研で発掘音源のCD化を進めていた際に起きた著作隣接権問題の、言わば“被告”としての扱いでした。朝日新聞・社会面への大々的な実名掲載は、当時、親戚から罪人と誤解されるなど大変でしたが、今回の日経の記事はリベンジ、凱旋できた気分です。

  私の祖父は白柳秀湖という歴史家ですが、孫の私もそれに倣い、いつの間にか「歴史的音源」の発掘が生業となってしまいました。この3月からは、これら貴重な音源のハイレゾ化(現在の技術で望みうる最高の音質での保存)にも着手しています。4~5月には全貌が明らかになると思います。どうぞご期待ください。
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NHK 現代の音楽 アーカイブシリーズ 諸井誠 先生 訪問

2012-02-16 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  昨日は作曲家の諸井誠先生を鎌倉のご自宅に訪ねました。昨年の夏以来リリースをつづけているナクソスのNHK現代の音楽アーカイブシリーズ、その10枚目となる「林光」のライナーノートに、諸井先生から追悼の辞をいただいたお礼を兼ねての訪問です。昨年来、諸井先生宅には何度もお邪魔し、その度に歴史の証言ともいえる貴重なお話を伺っています。話の内容があまりにも過激で、容易に公表できるようなものではないのが残念ですが、先生は涼しい顔で「僕の話は発禁になるようなのが多いんですよ!」と呵呵大笑されます!戦後、日本の作曲家たちが何を考え、どのように行動してきたか?僕自身は発禁覚悟で次代に伝えるべきではなかと考えています。

  西欧にもその例があるように、わずか数年の間にこれだけのキラ星のごとき作曲家たちがこの国に誕生し、互いに影響を与えあいながら生きていることを思うと、彼らをこの世に遣わした創造の神の存在を信じたくなります。
1929年生:黛敏郎、湯浅譲二、矢代秋雄、間宮芳生、松村禎三…、1930年生:諸井誠、武満徹、本間雅夫、三木稔、下山一二三、廣瀬量平、福島和夫…、1931年生:林光、外山雄三、松平頼暁…、1933年生:一柳慧、三善晃………。
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ツーリスト アンジェリーナ・ジョリー+ジョニー・デップ

2012-02-15 | ■映画

  「ソルト」に引き続き、アンジェリーナ・ジョリーの「ツーリスト」を見ました。共演はジョニー・デップ。

  舞台はパリの街角にはじまり、リヨン駅発の列車でヴェネツィアに移動、全編にヨーロッパの空気感が横溢している映画です。特にヴェネツィアの高級ホテル DANIELIは以前仕事で宿泊したことがあり、懐かしさもひとしおでした(ちなみに、映画に登場するのは超豪華スイートルームで、僕が泊ったのは普通の部屋です)。

  途中からストーリーの結末が読めてしまうという底の浅さはあるものの、美しいヴェネツィアの風景と美女+美男の御姿を堪能するだけでも見る価値は十分にあると思います。
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トヨタ アベンシス TOYOTA AVENSIS

2012-02-14 | ■エッセイ

  昨年末に10年近く乗った車をやっと買い換えました。

  トヨタのアベンシスというステーションワゴン。イギリスからの逆輸入車です。日本では昨年秋、3か月限定の輸入販売で、ひと月の販売目標が300台とのこと。ほとんど日本では見かけない車です。

  車幅が広いので立体駐車場は苦労しますが、乗り心地はずば抜けて良いです。フランス、コートダジュールにあるデザイン室が設計、イギリスの工場での生産…と僕が好きなストーリーが整っている上に、何よりもその希少価値が決定打となりました。

  トヨタ・ブレビスにつづき、この車も長い付き合いになりそうです。
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SOLT ソルト アンジェリーナ・ジョリー

2012-02-13 | ■映画

  週末にスカッとした映画を見ようと思い立ちTSUTAYAに急行!店頭で目立ったブルーレイ・ディスクを4枚ほど借りてきました。

  そもそもは、『ジジイをバカにするな!』がテーマの「レッズ」(ブルース・ウィルス、ジョン・マルコヴィッチほか)が第一希望で、あとは4枚1000円の条件を満たすためのオマケ。オマケは「ソルト」(アンジー)、「ツーリスト」(アンジー+ジョニー・デップ)、「ナイト&デイ」(トム・クルーズ+キャメロン・ディアス)。

  このうち、「レッズ」と「ソルト」を土・日で見たのですが、「ソルト」が意外に面白かった。amazonなどのレビューを見ると、あまりの荒唐無稽さに呆れかえっているヒトが多いようですが、ここまでデタラメが極まると、それはそれで映像作品としての存在感があると思います。どんでん返しにつぐどんでん返し、それがあり得ない話の展開とはいえ、私たちが暮らしている現実の方があり得ないことだらけの現代では、むしろ映画の中の話の方が現実味を帯びてくる。霞が関に潜入したソルトに一気に問題を解決してもらいたいとつくづく思いました。
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ムラマツ フルート

2012-02-10 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  金管楽器のメンテナンスが済んだところで、一気に木管楽器へ。ブ​ラスが相棒ならフルートは伴侶というイメージ。20代のころ垂涎​の的だったムラマツです。
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HOLTON トランペット

2012-02-08 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  レスポールのメンテナンスが完了したのはすでに報告のとおり。弦楽器が一段落したところで、管楽器にも油を…。ピストンオイルとスライドグリスを久々に注入しました。HOLTONのトランペット、手前の小型は20年以上前にミュンヘンの楽器店で嬉々として購入した後に、日本製と判明し落胆しきりだったポケット・トランペット。共に年来の相棒です。
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ギブソン レスポール

2012-02-06 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  ようやく先週の土曜日にギブソン・レスポールのメンテナンスが完了しました。第3弦のペグ(糸巻き)を自力で交換するというオマケつきでしたが、名器はついに蘇りました。

  じつはこれ、長男からの借り物。僕らの学生時代は垂涎の的だった楽器ですが、彼らは事もなげに所有しているのです。
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kuniko plays reich 加藤訓子 スティーブ・ライヒ

2012-01-26 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  世界的なオーディオ・メーカー、LINNからリリースされているアルバム、kuniko plays reich のライブを聴きました(2012年1月23日、ムジカーザ)。

  このCDには、打楽器奏者の加藤訓子が自身でアレンジをほどこし、スティーブ・ライヒ本人のお墨付きを得たというプログラムが収録されていますが、SACDでリリースされているほかに、LINNが運営するハイレゾサイトでは192khz/24bitという最高音質の配信が行われています。

  この日は富士通テンのスピーカー、イクリプスの新製品発表会におけるライブでしたが、高性能スピーカーから流れるプリレコーディングされた音と加藤訓子の生音によるElectric Counterpoint、Six Mrimbasといった曲の演奏を間近に見ることができたのは収穫でした。

  ライヒの音楽は能動的に「聴く」というよりは、受動的に「包まれる」という感覚があるのですが、この日も8本のスピーカーに囲まれつつ、プリレコーディングされた音と対話しながら進行する加藤の演奏は、卓抜なタイム感覚と鮮やかな色彩感に満ちていました。ミニマル・ミュージックのなかに浮かび上がるアフリカやインドネシア(ジャワ)あたりの土俗的なリズムの中に、最先端の音響技術の向こうに立ち現れたヒトの根源であるピテカントロプスの幻影を見るようで、それは不思議な官能にあふれた時間でした。


  
  

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ネットワーク・オーディオ=高音質配信、ハイレゾ配信-1

2012-01-19 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)

  SACDやxrcd、SHM-CD、HQCD、Blu-specCD…など、いわゆる高音質CDのことは、このブログに何度か書いてきました。いずれも、何とかして良い音をリスナーに届けようという技術者たちの苦心の結晶で、それぞれ成果が上がっていると思います。

  しかし、CD製造における意欲的なチャレンジとは別次元の、今まで経験したことのない新たな世界が拓かれつつあります。それがネットワーク・オーディオで、昨年末にこれを導入した自分自身、驚異的な高音質の世界に直面し心底驚きました。

  ソニーとフィリップスが共同で開発したCDは、厳密な規格を遵守することによって世界標準となりました。その一つが44.1kHz/16bitという規格。アナログ信号をデジタル化する際の時間の区切りがサンプリング周波数で、CDは44.1kHzに規定されています。ちなみに1kHzは1秒間を1,000に区切るという意味なので、この数値が多ければ多いほど、より細かく時間軸を区切ることができます。また、bitは信号の強さを段階的な値で示すもので、bitが増えるほど区切る段階も増えていきます。

  録音時のフォーマットが96kHz/24bitであったとしても、CDになるときは44.1kHz/16bitに圧縮されるので、元の音の解像度やダイナミックレンジは減少することになります。ところが、ネットワーク・オーディオにはデータを配信する上での制約がないため、96kHz/24bitの音がそのまま送られてきます。16bitと24bitは数字の見え方上、あまり差が無いように感じますが、16bitは2の16乗=65,536(段階)、24bitは2の24乗ですから16,777,216(段階)ということになり、圧倒的な差が生じます。これが、音の解像度やダイナミックレンジの改善に大きな影響を与えることになります。

  数値上のことはともあれ、実際にアメリカのハイレゾ配信サイト、HDtracksから立て続けにソフトを購入してみました。円高の恩恵もあり、1アルバムは約1,400円くらいです。アナログ・マスターから24bitでリマスタリングしたもの、最初からハイスペックでレコーディングしたものなど多種多様な買い物でした。

  それらを列挙すると以下のようなものです。①リンダ・ロンシュタット、②カーペンターズ、③ビヨーク、④ポール・サイモン、⑤MJQ、⑥ビル・エバンス、⑦コルトレーン、⑧渡辺香津美、⑨ジョニー・ミッチェル、⑩アバド、⑪ブーレーズ、⑫ムター、⑬ソニー・ロリンズ、⑭ブエナビスタ・ソシャルクラブ、⑮オールソップ、⑯オスカー・ピーターソン、⑰シュタルケル、⑱グレン・グールド、⑲ラン・ラン、⑳クライバー、。21ネトレプコ(つづく)。

  

  

  
  


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