田中博行政書士事務所のブログ

新城市に事務所を置く行政書士の、個人的な人生の備忘録。

財政余地を測定するためのいくつかのアプローチ(『低成長の罠から脱するための財政レバーの使用』)。

2017年05月06日 03時31分51秒 | 下書き
 制約に直面する従来の金融政策、経済を安定させる財政政策が過去に比べてより大きな効果を
有することを示す証拠により、財政余地を再評価する必要がある(Furman, 2016)。
一見、財政余地は比較的直感的な概念のように見え、
”政府の財政状態の持続可能性、あるいは経済の安定を毀損することなく、
所望する目的のために政府が資源を投入するのを許容し得るところの、
政府予算における余地”と定義できる(Heller, 2005)。

 しかしながら、財政余地の測定方法についてコンセンサスが存在しない。
一方では、政府が債務をもはや繰り越すことができない
リスクに直面するまでの限界について不確実性がある。
財政余地は、現在の債務水準と、政府が市場アクセスを失う
債務の限界の間の相違と考えられている。
他方では、財政余地は、長期的な財政の持続可能性という観点から定義できる。
実際、これら二つのアプローチからの結論は相違する。
例えば、高齢化と健康にかかる公的支出が顕著に上昇することが予期される国は、
前者のアプローチによると財政余地があるが、後者によれば財政余地はない。
財政余地のこれら二つの面は時に相関があり、長期の持続可能性についての考察は
しばしば、リスクプレミアムを通して市場アクセスに影響を及ぼす。
しかしながら、単一の方法で財政余地に影響を及ぼす全要素を総合的に捉えることは難しく、それゆえに、
実証的研究は通常主に、市場アクセスと長期的な持続可能性の両者に焦点を合わせる(図 2.5)。

 近年の歴史上、先進国でデフォルトを潜在的に引き起こした
要素についての情報がないことが、財政余地の推定を与える
―少なからずも市場アクセスの定義により―それは意欲的な試みだ。
将来、より高い債務水準に達したときに、家計と企業はどのように対応するか
という仮定の上に、定量的な分析のみ可能である。
結果として、債務の限界と財政余地の推定結果は、下線のような推計を囲んでいる
注意と不確実性とともに使用されるべきである。
現実には、債務の限界は多くの要素から成り、公的債務の水準と軌道、投資需要、
財政実績、経済開発、市場心理、マクロ経済ショックを含んでいる。
しかしながら、統計的手法は通常自制的であるべきであり、
完全評価を得る広範な手法に依るのが最もよい。
精密な推計を示すよりもむしろ、これら補足的な分析は研究における
キーとなるメカニズムを理解する手助けになる。

 近年、多くの新手法が、財政余地評価のより伝統的なアプローチを補足している。
この章では本来、これらに依拠し(付録 2.A1 この章で使用される異なった手法の概要)、
異なった角度から複雑な現実にアプローチすることが目的である。

・Ghosh et al.(2013)とFournier and Fall(2015)は市場アクセスに焦点を合わせる。
彼らは財政余地を、実際の債務水準と推計される限界の間の間隔として計算する。
それは、国債債務者が市場アクセスを失い、それゆえにその債務を
名目的に履行できない債務水準として測定される。
債務の限界は、無リスク金利と潜在的生産成長、経済に打撃を与える衝撃の大きさ、
国の財政実績と債務を増加させる財政的反応で構成される仮定に依拠する。
財政的反応は、政府は公的プライマリーバランスの黒字を無期限に維持することができず、
ある時点で財政疲労を経験するという仮定に依拠する。
モデルは、債務が限界に近付くと急激に上昇する非線形リスクプレミアムを含んでいる。

・Bi(2011)とBi and Leeper(2013)は、国債デフォルトのリスクを考察するが、
長期的な財政の持続可能性について説明する。
彼らは、DSGEアプローチに依り、これによりラッファー曲線(税率から期待される
租税収入を導出する)の形状がマクロ経済環境に依拠する。
経済への衝撃と支出と移転の長期的な投影が説明される。
このアプローチは債務の限界の推定値を計算しないがその分布を、換言すれば、
国が対GDP債務比率の各値でデフォルトする可能性を計算する。
この分布は、プライマリーバランスの黒字の将来の最大値の期待現在価値を使用して描かれ、後者は、
租税収入をラッファー曲線の頂点へ誘導し、支出を投影された水準へ誘導するように描かれる。

・Blanchard et al.(1990)は本来、金利が経済成長率を上回る文脈で、
長期的な財政の持続可能性に焦点を合わせる。
金利が持続的に成長率を下回るとき、政府はいかなる大きさでも
恒久的な赤字を維持することができる。
金利と成長間の微分がプラスのとき、財政余地は、持続可能な対GDP租税比率と
現在の比率の間の租税ギャップとして計算される。
前者は、所与の公的支出と移転の投影に対して、関連する水平線上に渡って
変化しない対GDP債務比率を達成する、一定の税率である。
この章では、この方法論の変形が使用される。:持続可能な税率はFMモデル(付録 2.A2)
を使用して再計算される。健康支出の部分は投資として分類した。

 使用される三つの手法にはそれぞれ限界がある。
市場アクセス手法は、最後の貸し手はいかなる自己達成的な危機も防止すると仮定する。
実際、組織というものは常にこのことを保証するとは限らず、自己達成的な危機は決定的に、
債務の満期日構成と外貨建て債務の割合のような、他のパラメーターに依存する。
ラッファー曲線に基づくアプローチは、租税収入をラッファー曲線の頂点に誘導したり、その代わりに
政府支出を調節したりすることに関連する、可能な政治的経済考察を説明していない。
他方で、Blanchard et al.(1990)に基づくアプローチは、マクロ経済ショックを説明していない。
それゆえに、この章ではいかなる単一のアプローチに依拠することなく、
むしろそれらを説明に役立つものとして取り扱う。
その結果、分析の主要な焦点は、財政余地の精密な数字的推計ではなく、
傾向と研究における基礎となるメカニズムに置かれている。


USING THE FISCAL LEVERS TO ESCAPE THE LOW-GROWTH TRAP(OECD Economics Department)
http://www.oecd.org/eco/public-finance/Using-the-fiscal-levers-to-escape-the-low-growth-trap.pdf
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