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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「ようこそ、わが家へ」(著:池井戸 潤)

2014-01-25 23:29:00 | 【書物】1点集中型
 「鉄の骨」や「半沢直樹」といったドラマは観たのだが、池井戸氏の著作としては初めて読む作品である。ビジネス系の業界小説の印象が強い著者なので、高杉良氏みたいな硬質さを勝手に想像していたのだけど、案の定違った(笑)。主人公が「最弱」とか言われているから余計そうなんだろうけど。
 物語は、主人公である気弱で真面目な会社員が駅のホームでの割り込みを注意した……ら、どうもその相手にストーキングされ、自宅に陰湿な嫌がらせが繰り返されるという話から。会社で気づいた不正らしきものにも、銀行からの出向者という社内での疎外感が邪魔をして、いまいち深く踏み込めない。その姿にちょっと苛々させられながらも、身につまされるような感覚もあったりする。不正のあるなしは別の話だけど、主人公の抱える不安や悩みは、ある意味「会社員あるある」かもしれない(笑)。

 ストーカーの件を通して、主人公の家族のさまざまな面も浮き彫りになったり、仕事と家庭の両面をいいバランスで描き出しているなぁと思う。でも、主人公そんなに弱くないぞ、結果的に(笑)
 どこかに常に歪みや闇、あるいは「病み」を感じずにいられない現代、本当にありそうで実際あるのだろうけど誰もが他人事だと思っているような不条理な事件。自分のルールでしか物事を捉えることができない人間。罪を犯す理由。人はそれぞれ誰もが他人にとっては「名無しさん」で、誰もが他人の知らない背景を持っている。悪いものも、良いものも。
 でも本当にストーカーの犯人は反省してるのだろうかね? とちょっと思ってしまう(笑)。本当に反省してるなら、直接謝罪に来たらどうなのか、と。


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