レンタロウの日記 ~さようなら、少年の日々よ~

自分と読む人が表現し合う場にできたらいいです。

16話 灼熱デザート

2011-11-15 03:00:42 | 小説
太陽はギラリと目を光らせて、これでもかと言わんばかりに炎をまき散らす。
3人はここなら安全という事でローブを脱いで歩いていた。

「ケッ、どうせなら遺跡まで連れてってくれりゃー良かったのに。」

焼け付くような日照り。

しみでる汗。

「の、のどがかわいた。」
「だらしないな。」
「お前がさっき全部飲んだせいだよ!」

達也はおじさんの水筒を分けてもらった。

砂丘を超えても、広がるのは砂の世界ばかり。

達也は高熱の砂を踏むたび、労力と水分が削り取られるように感じた。

生ぬるく乾いた風が吹きすさぶ。

ふと顔をあげる。
達也の瞳は、一件の建物が揺らめく陽炎(かげろう)の中にあるのを認めた。

「みんなもう少しだ、頑張ろう。」

全員が残った力を振り絞って歩き続けた。

―「もうダメでげすぅー。」
「あー、疲れたぜ。」

緑髪は遺跡の壁にもたれこむ。
遺跡は広々とした長方形で、平べったく石組みで出来ていた。

「た、達也君、くつろぎタイムといきたい所だがここは暑い。休むなら遺跡の中で休もう。」
「そうですね。」

一同はアーチ状の穴をくぐった。
中に入ると、壁に両側にとりつけられた炎がめらめらと燃えている。

それぞれが、体から一気に力が抜けたように腰をおとす。

「ここにはありとあらゆる罠が仕掛けられ、そしてその試練の果てに最新部にたどり着けるのは心正しき勇者のみといわれている。」

「へー…。」

振動。
ズシンという音がして、とっさにナツキが飛び上がる。

振り向くか振り向かないかの内に皆が走り出した。

どでかい球体がすごいスピードで彼らを追いかけていた。

緑髪「さっそくかよっ!」
  「こんなところでペシャンコは嫌でげすー!」

達也(なんてこった。こっちはまだろくに休んでもないのに。クソッ、どうすれば…。)

球はもうすぐそこまできている。

おじさん「皆、あきらめるんじゃない。この遺跡は今までずっと勇者を待ち続けてきたんだ。必ず突破口はある!」

(突破口、突破口…!)

「皆、僕に続け!」

ジャンプしたかと思うと、達也の体は忽然(こつぜん)と地面に消えた。



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15話 静寂の守護神

2011-11-08 03:11:28 | 小説
達也(体が重い…。ここんところ歩きっぱなしだったしな。)

前まであったわずかな明るさも消え失せ、一同は闇の中をただ黙々と歩いていた。

「そういえば、あの一つ目がギガントとマリーがサタンにチクったって言ってたな。これからはもっと用心しないと。」

「そうでげすね…。」
「どうしたリゲ、疲れたか?」
「いや実はあの蛇、バジリスクといってあっしの友達だったげすよ。」
「友達!?」

皆立ち止まって3人が声をあげる。

「いいんでげす、兄貴達のせいじゃありませんから。気づいたときにはもう遅かったですし。」

リゲルは遠い昔の記憶を思い出していた。

「小六くらいの男と女、そしてチビ二匹と老いぼれ。よくこんなメンツで生き残れたな。」
「あんたねー、よくも私達の朝メシとってくれたわね。」

達也が反論する前に、後方にいたナツキが緑髪につかみかかった。

達也「あ、そういえば君 名前は?」
「だれがお前達のような平民に教えるか。」
「なんですってぇー…。」

激昂するナツキを尻目に一同は足を動かし始めた。

懐中電灯のほのかな微光が闇を掻き分ける。

「ところで何でお前らは黒服なんだ?」
「あぁ、これはどうやら悪魔族が着る服で、僕らはこれでカモフラージュしてきたのさ。」
「あ、悪魔!?そういえばまだ何でお前ラバ化け物と2匹とつるんでるのか聞いてなかっ…。」

突如として、視界は闇に閉ざされる。

「ギャー、怖いー。兄貴ー!」
「だー!うるさいな。さっきの落ち込みようはどうしたんだ?」

ライトの電源が切れ、一同はその場で眠る事になった。

「ふぅ、オレ様がこんな所で寝ることになるとは。」
おじさん「それじゃあ皆、おやすみ。」

―音も無い、風一つ吹かない森の中。

ナツキは何とな寝付けず、ずっと上の方にやっと見える夜空を見上げていた。

「父さん…。」

これから先への不安。
それに、暗黒が作りだす恐怖の渦とがごっちゃになり、ぐちゃぐちゃにかき混ざされてゆく。

「ぷわ~ん。」
何かが、ナツキの顔の上を通り過ぎた。

すぐ立ち上がって周りを見回すと、一つの小さな光の玉が空(くう)を漂っている。

(何あれ…。)

ナツキは吸い寄せられるかのように歩き始めた。

それは優しい光をまとって、ゆらゆらとナツキを導いていく。

途中なだらかな坂を下ると、一気に光の玉は速度を速める。
ナツキも急いで後を追う。

が、ナツキは寸での所で足をつまらせた。

そこに、大きな湖が広がっていたからだ。

「きれい。」

あたりはびっしり光の玉で満ち溢れ、水面は金色に染まっていた。

ふと向こう岸に、影が見えた。

それはゆっくりとこっちへ向かってきている。

光が影をなではじめる。

(え?)

その者は全身を光の玉で包まれ、水の上を歩いていた。

いよいよ全身が照らし出される。

(シ、シカ?トナカイッ…!?)

ナツキは逃げ出したくもなったが、神秘的な力に魅せられ、そうはしなかった。

その者がナツキの元にたどり着く。

「私は森の守り神、スサノオだ。」

「・・・。」

「君達にはとても感謝している。お礼に砂漠までのせていって差し上げよう。」

「えっ、何でその事をっ。」
「もう皆ついたようだ。」

四方の茂みからスサノオより少し小さいトナカイが3頭が出てきて、その背中には達也達がのっていた。

― 「うわ、くすぐったいな。」

スサノオ「はは、その子達はシャイニングピクシー、光の妖精さ。」

煌めく閃光にかこまれながら列は進む。

達也とナツキ以外はすっかり眠っている。

「森に邪悪な力が潜んでるのは知っていたがうまい事逃げられ、あの大蛇には困り果てていたんだ。」
「今や世界は悪魔に支配されてて、僕たちは…。」
「知っているよ。世界の事も、君達が何でここに来たのかもおみとおしさ。」

達也は急に眠気が差して、うとうとしはじめる。

「はは、いいんだよ寝て。明日の朝にはつくはずだ。」

それを聞いて達也もなんだかホッとして目をつむった。

―「ん…。」

ほっぺに当たる熱い感覚で目が覚める。

起き上がってみるとそこには馬鹿でかい砂漠が広がっていた。
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14話 緑髪と森の猛者

2011-11-05 14:15:38 | 小説
いつものように重いまぶたをこじあけた。
雨はもうすっかりやんでいる。

根っこの部分を下に寝たせいか、背中がいたい。

それをわずらしく思いながら、皆をおこした。

「おはよう、達也君。ゆっくり寝れたかい?」
「あんまり。」

素敵な朝日に迎えられて、なんて事はなく、中は朝でもほの暗かった。

僕は朝食を用意するために、リュックを探す。

あれ、ない。

「ナツキー、リュックは?」
「ふぁ~、知らない。」

皆でくまなく探しまわった。

「ちくしょう、オオカミにでもとられたのか!」
リゲル「兄貴ぃ。」

見るとシチが指差している。

地面に落ちたビスケットを。

―「しーっ…。」

達也達は草むらに潜んで息を殺す。
感覚をあけて落ちていたお菓子辿ってここについたのだ。

切り株に腰を据えた人物は緑髪で、無我夢中で食事にがっついていた。

「あったまにきた。」
「ちょ、ちょっとダメだって。」

ナツキがずかずかと近づいていく。


「あんたねぇ。」

と瞬間その男は飛躍して、白銀のつるぎがナツキの前に突き刺さる。
その少年は騎士団の制服のような格好をしていた。

「来たな、化け物どもめ。やつざきにしてくれる!」
男は敵意をむき出しにして剣を振り回す。

「待ってくれ、僕達は人間だ。」

達也が止めに入る。

「もうこの世の中に人間なんていねぇーんだよ!」

剣が振りかざされたまま止まっている。

大きな影が彼を覆ったからである。
達也は瞬時に上を向く。

手足がなく、ちっちゃい舌をのぞかせ、しっぽをくねくねうねらせた生命体。

言葉を失っている間に、大蛇は襲いかかってきた。
3人は間一髪でかわし、蛇の顎が地面を撃砕する。

いちもくさんで猛ダッシュ。
隠れていた3人もつられて駆け出す。

木と木の間を一心不乱にすり抜ける。

「どうするんだ!」
と、謎の少年。

達也「分からないっ。」

後ろからは大蛇が、すさまじい迫力で地を這い進んできている。

全員が力の限り走って、ある時達也は足をぴたっと止めた。

「まいたみたいね。」
周囲を確認すると、一時の安心がその場に流れた。

「ぜ、全員いるね…。」

おじさんは息を切らしながら言った。

「とりあえずこっからどうしようか。」

達也(なんか、自然とおじさんがリーダーみたいになってるな。)

ナツキが口を開く。

「作戦があるわ。」

―ナツキの話では、その作戦には一人おとりが要るようだ。

ナツキ「だれがなる?」

ほんの一瞬、ナツキの瞳と目が合ってしまった。

(えー、僕がならなくても誰かなるんじゃ…。おじさんあたりが妥当だよな。
あぁでもナツキにいい所をとられっぱなしだもんな…。でも怖いしな。)

「よし、ここは最年長の私がやろう。」

達也は心の隅でにんまり笑った。

「で、その作戦はというと…。」

―からすの群れがそよ風に揺られて飛んでいる。
甲高い鳴き声が、暗く閉ざされた森に木霊(こだま)した。

何か巨大なものが枯れ葉を掻き分ける音。

すると突然すごい音をたてて、一本の木がくずれた。
それから次から次へとなぎ倒されていく。

ある地点で音の主は止まった。
「はは~ん。」
その前でおじさんが硬直して立ちすくんでいる。

「いるのは分かってる。」
ナツキは想定外の言葉に息をのむ。

「おおかた気をとられている内に後からやるシナリオなんだろう?だがそれはオレ様には通用しない。一瞬早くこの老いぼれの首を噛みちぎって、そしてしっぽで後ろの奴の頬をぶってやろう。」

大蛇は不気味に笑って、そう言い捨てた。

あたりに緊迫した空気が流れる。

息苦しい沈黙が続く。

その時、おじさんの体は無意識に動いて、音が出る。

リゲル(もしかして、アイツ…!?)

ぎちぎちの風船は破裂して、瞬時に大蛇が強襲した。

おじさんはかろうじてよけたが、地面がこっぱ微塵になる事は無かった。

達也「やったか。」

茂みから次々に人影が現れる。

大蛇はぴくりとも動かない。

何故なら、地面に突き刺さった剣が顎を貫いていたからである。

重圧から解放されて、それぞれ一息ついた。

(助かった。)
達也はただ一人でに拍動する鼓動を感じている。

「もうこりごり。」
ナツキはぐったりと尻餅をつく。

「君のおかげだよ。」
と、おじさん。

わずかな休息を取り、夕方なのでもう少し歩いて寝床を見つける事に決まった。

「て、なんであんたまでついてくるのよ。」
「ま、人間ていうのは確からしいし、それに剣という武器を持ったこのオレ様が仲間になってやってもいいと言ってるんだぜ。」
「まぁまぁナツキくん。今や仲間は一人でも多い方が助かる。それに、剣は武器になる。」

まだぬかるみを湛えた土を踏みならしてゆく。

だがしばらく歩いていると、おじさんは静止する。

「その前に、ここはどこだ?」

一同は必死に走り続ける内に、自分達がどこにいるかも分からない所に来ていたのだ。

「どうやら少々やっかいな土地に迷子になったようね。」




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13話 雨の森

2011-11-03 20:07:26 | 小説


洞窟の天井からいってきの雫が落ちる。
その音と共に、バサバサとコウモリが乱れ飛ぶ。

「サタン様、ご報告に参りました。」
マルクスが跪(ひざまず)いて言った。

「近々、相次いで悪魔が襲われる事件が起こっています。そしてある現場付近では黒いローブを着た連中が目撃されています。」

(なんだと、黒いローブは我らの悪魔族の伝統ある衣装。ギガントとマリーの報告も考慮に入れて、人間、もしくわ裏切り者の仕業か…。)

―時刻は正午。

「兄貴、メシ食わないんすか。」
「今は食う気分じゃないんだ。」

ベッドに仰向けになる僕の傍で食料をほおぼるリゲルとシチ。
ナツキはせっせと腕立てふせをして、おじさんは窓の外を眺める。

達也(遺跡の事は信じがたい。でももしそこに可能性があるかもしれないならその希望にたくすしかないか…。)

「みんなで、みんなで力を合わせるんだ。」
おじさんが外をみつめながらぼそっとつぶやく。

透き通っていた空には、どんよりとした暗雲が垂れ込めてきていた。


―時刻は深夜。

一件の家のドアが開く。
人目を忍びつつ、こっそりと3人は出てきた。

布の上を、無数の水の玉がはじけて踊っている。

「いやー、ちょうどかさが3本あってよかった。」

黒づくめの3人は、ふりしきる大雨をきって進む。

通り過ぎる家からは、なごやかな笑い声が時折聞こえてきた。

上天から降り注ぐ冷雨は、地面へと吸い込まれる。
それが、煉瓦(れんが)の道に、無数の波紋をつくった。

「兄貴、いつまでここにいればいいでげす。」
達也の懐(ふところ)から声がする。

「森についたらね。見つかったら終わりだから。」

雨に見張られつつ一同は歩いた。

「あ。」

いかめしく立ち並ぶ木々達が、達也の前に姿を現したのだ。

おじさん「ふぅ、やっとついたね。」

ついたまもなく、今度は森の中へと入っていった。

達也のローブからリゲルが飛び出す。

「達也君、懐中電灯を。」
「あ、はい。」

「よし、じゃぁもう遅いし今夜は適当な場所を見つけて休もう。」

と、おじさんが言った。

シチもナツキもローブから抜け出して、再び歩き始める。

静寂。
それを暗黒のベールが覆い隠す。

泥と落ち葉を踏みしめる音と、雨と葉の旋律だけが聞こえてくる。

一同は達也の持つ懐中電灯だけを頼りに進む。

達也(なんだろうか、この不気味な圧迫感は。あぁ、それにしても早く休みたい。)

暗緑の樹木を行く事30分。

木の群れはいったん後方に取り残されて、そこからは広場になっていた。

その中央には大樹が生えている。

一同は大樹の下でくつろぐ事にした。

ある者は棒になった足を屈伸させて、ある者は天に向けて腕を伸ばす。

「ん?」

ナツキは根っこの近くに刻まれた一つの足跡に気づいた。
(オオカミ?いやでも2本だし。それにオオカミよりずっと大きい…。)


「ナツキ、もう寝るよー。」
「あ、うん。」


ナツキと2匹は達也のリュックにあった毛布を羽織って、他は地べたに寝そべった。


達也「あぁ、お家のベッドが恋しいよ。」

次第に一人、また一人と目をつむった。

皆が眠りについたあと、どこからか物音が聞こえてくる。
茂みの中に、ぴかっと光る2つの眼があった。
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12話 ブラックローブ 

2011-11-02 11:39:57 | 小説
あたりは真っ暗で何も見えない。

(ここはどこだ。)

すると、どこからともなく声がしてきた。

「お前にこの試練が乗り越えられるかな。」
残響が響き渡る。

「お前は誰だ!」
「私はサタンだ。」

それを聞いた僕は走り出す。

「うわっ。」
目の前にはあの竜がそびえたっていた。
慌てて進路を変えると、今度は目玉の化け物が待ち構えていた。

必死にビームをよける。

「うわあぁぁ!怖い、死にたくない!」

―「達也、達也!」
 「あ、ナツキちゃん。」

気分とは反して、輝かしい光が窓から射している。

「ずっとうなされたよ。」
「昨日の悪魔が出てきたんだ。」

それからというもの、僕らは朝ご飯を食べたっきり何もする事がなくなった。
リゲルとシチは日なたぼっこ、ナツキは家の中をうろうろして、僕はベッドで考え事をする。

「これからどうする?」
「んー、うかつに外に出られないしなー。」

そしてどんどんと時間が過ぎて、いつのまにか夜になった。

「ねえ、リゲルちゃん、サタンがどこにいるか分からないの?」
「あっしは蘇った直後に群れを離れたので、どこが本拠地かは知らないんでげす。」

また、それぞれが自分の世界に戻る。

しばらくして沈黙を破られた。

「なんか、本当に勝てるのかな。」
達也がベッドに横になりながら言う。

「だって相手悪魔だし、勝てるきしないっていうか…。」
「とことん弱気ね。」

その時、

「キイィ~ッ。」

今まで誰も開けようとしなかったタンスに、ナツキが近づいた。
ナツキが取り出したのは、黒いローブだった。

「それだ!」
と、達也が声をあげた。

黒装束の格好をした2人が、ある一件の店の前にたっていた。

「ここに行けば何か分かるかもしれない。まずは情報を集めるんだ。」
一人がゆっくりとドアを開けた。

悪魔達は話すのをやめて、じっと2人を睨めつける。

黒づくめの2人はカウンターに座った。

「いらっしゃい、debils bar へようこそ。」
何本もの手足を生やしたくも男が、コップをみがきながら言った。

「ローブをぬがなくても大丈夫ですか?」
「・・・・。」
2人は何もしゃべらず俯いている。

「注文はぁ、」

達也「コ、ココ、コーラでっ。2人とも。」
「はっはっは、さてはお客さん緊張してますね。だからお顔を隠してらっしゃる。」

達也(あー、早く抜け出したい。やっぱりやめればよかった。)

まばらに悪魔達は点在していて、時折大きな笑い声が響く。

すると、全身包帯づくめの男が、ナツキの隣に座った。

「やぁやぁ新人さんよぉ。一緒に飲もぉや。」
達也(うっわ~、またやっかいなやつが来た。)

ミイラ男は延々と自分の生い立ちや自慢話やらを繰り広げた。
そしてある時、不意にナツキのフードに手をのばした。

「どれ、かわいいお顔を見しておくれ。」
「やめてくださいっ。」

ナツキがすばやく手をふりほどくと、ミイラ男はプイと奥のテーブルに戻った。

店内に鳴り響くジャズソングが、大人の雰囲気を醸し(かも)出す。
達也の頭は、すぐにでもここを立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。

「君…。」

達也はフードの下から声の方をのぞく。

そこにはなんと、自分らと同じローブを着た者がいたのだ。

「君らぁ、人間だよね。」

戦慄が瞬時に爆走する。
度肝を抜かれて、達也は凍り付いた。

そして男は勘定を済ますと、達也達の手を引っ張って店を出る。

「なにをするんだ!」

男はフードをまくってみせた。

「僕も、人間なんだ…。」

―一同はひとまず家に集まった。

おじさん「いやー、こんなに生存者に出会えるとは。あ、私の名前は山田重五郎(しげごろう)。」

達也は今までのいきさつ、旅の目的を話した。

「そうか、君たちは悪魔と戦うつもりなのか…。」

会話がやむ。

「まぁ、こっちは人間だからねー。そうだ、あれだ。あそこがある。」

おじさんの話では、この町の森を抜けた砂漠に伝説の遺跡があり、その最深部にたどり着くととてつもない力が手に入るという。

達也「どうしてそんな事を?」
「あ、あぁ私は考古学者なんだ。」

それから、就床の時がやってきた。

「出発は明日の夜。それじゃ、皆おやすみ。」

皆、床(とこ)についた途端に熟睡していった。



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