ぺんぺん草のひとりごと

何気ない日々のこと、ふと気になったこと、
そんなこんなを、気負わず、気ままに、思いつくまま・・・

創作童話 『冬の日の思い出』

2016年12月03日 18時30分11秒 | 創作童話
 

街のはずれに、ポツンと立つ大きな木。
若いカラスは、その枝で暮らしていました。
大きな木は、時の移ろいを眺めながら、
ずっと前から、そこに立っていました。
 
大きな木はとても物知りで、
若いカラスに、いろんな話をしてくれます。
若いカラスは、
まるでおじいさんのような優しい大きな木が、
大好きでした。
 
木枯らしが吹き始めた冬のある日、
大きな木は、若いカラスに言いました。
 「カラス君、
  私はそろそろ切り倒されるようだから、
  次のネグラを探しなさい」
 「カァ!?」
 「見てごらん。
  新しい道を造る工事が始まった。
  ここも、いずれ道になる」
 「切り倒されたら、どうなるのカァ?」
 「もう、ここで、君と会えなくなるなぁ」
 「でも、会いたくなったら?」
 「思い出の中で、きっと会えるよ」
 「思い出・・・?」

翌日、若いカラスは、朝から街中を飛び回りました。
昨日ふと、大きな木から聞いた話を、思い出したのです。
そして、とってもいいことを、思いついたのでした。

ペットボトルのキャップや、
チョコの包紙、チラシの切れ端など、
色々な物を見つけては、大きな木に持って帰り、
また、街へ。

マンションのベランダで、
洗濯バサミを物色していたら、
小さいのに、やけに威勢のいい犬から、
キャンキャン吠え立てられました。

小学校の校庭では、
女の子の黒髪で、赤く光る髪飾りを狙って、
ホウキを振り回す先生に、追っかけられました。

それでも、若いカラスは休むことなく、
根気強く繰り返しました。
一日中飛び回って、クタクタになって、
もうこれ以上羽ばたけないなぁ、と思い始めた頃、
太陽が西の空を茜色に染めながら、
ゆっくり、ゆっくりと沈んで行きます。

 「カラス君、何を企んでいるんだい?」
 「ま~だ内緒。暗くなったら、わかるから」

若いカラスが、昨日思い出したのは、
そう、クリスマスツリーのお話でした。
一年に一度、クリスマスという季節に、
選ばれた木だけが、クリスマスツリーになれる。
クリスマスツリーは美しく光り輝き、
見る者すべてが、幸せな気持ちに包まれる。
そして、それは思い出となり、人々の心に刻まれる。

そんなお話の最後に、大きな木が、
 「私も、クリスマスツリーになってみたかったなぁ」
と、少し寂しそうに呟いたのでした。

だんだんと日が暮れて行きます。
街はずれのこの場所には街灯もなく、暗くなる一方です。
でも、いつまで待っても大きな木は、
若いカラスが思い描いていたようには、光り輝きません。
薄墨色の闇の中に、
その大きなシルエットが、黒々と浮かび上がるばかりです。
 
 (なぜ? どうして光らないのカァ?)

若いカラスは、
大きな木をクリスマスツリーにしようと、
今日一日飛び回っていたのでした。
大きな木に何か言わなきゃ、と思うのですが、
口を開くと、涙までこぼれそうです。

それから二、三日たったある日、
大きな木のまわりが、急に騒がしくなりました。
人が何人も集まり、
特殊な工事用の車が横付けされ、
何やら資材も運び込まれています。

大きな木は、
どこまでも青く冴え渡る冬の空に向かって、
ピーンと背筋を伸ばしました。

若いカラスは、
オロオロしながら、
遠くから見ていることしかできません。

やがて作業も終わり、夕闇が迫って来ましたが、
今日は誰も帰ろうとはしません。

とっぷりと日も暮れ、若いカラスが仕方なく、
大きな木の枝に戻って来た、その時です。
いきなり目の前で、
赤い光がピッカチッカと点滅し始めて、
びっくりした若いカラスは、
また暮れ残る空に、飛び上がりました。

見下ろしたその先にあったのは、
いくつもの、いくつもの赤い小さな光が、
ピッカチッカ、ピッカチッカ光る、
大きな、大きなクリスマスツリーです。
それは、どんなに着飾った華やかなツリーよりも、
堂々とした、威厳のあるクリスマスツリーでした。

若いカラスが、一日中飛び回っていたあの日、
それに気づいていた人がいました。
道路工事の作業員の人たちです。
 
 「あれぇ、あのカラス、
  まぁたなんか持って来たぞぉ」
 「何やってんでしょうかねぇ? 
  まるで、クリスマスツリーの、
  飾りつけみたいですねぇ」

いったい、誰が思いついたのでしょう。
赤く交互に、ピッカチッカ点滅する光の正体は、
夜の工事現場に張り巡らされる、
あの赤いチューブに入った電球だったのです。 

やがて夜の闇が一段と深くなった頃、
この冬初めての雪が、降り始めました。
ふんわり、ふわりと柔らかなボタン雪が、
赤く光り輝くクリスマスツリーに、舞い降ります。

もうすぐ、クリスマスです。





あとがき


九州自動車道の福岡インターチェンジと、
福岡都市高速道路の直結工事の現場に、
この大きな木は立っていました。

1997年の12月のある日、
この大きな木は、
赤い光に包まれたクリスマスツリーへと、
姿を変えたのです。

年が明けたら、切り倒される運命だった大きな木。
その木への『はなむけ』だったのでしょうか?

携帯電話に、カメラ機能などまだない時代。
その姿は、私の思い出の中でだけ蘇るのです。


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創作童話 『カラスとカササギ』

2016年09月24日 20時00分00秒 | 創作童話


カササギの追っかけを始めて、半年ほどたちました。
カラスのことも気にかかります。
そんな中で、思い浮かんだこと、想像したこと、
それらを童話という形にしてみました。
少し長いお話です。
原稿用紙16枚分程度ですが、
子供さんにも読んで頂けるような、優しい文章で書いたつもりです。
秋の夜長の暇つぶしにでも、読んで頂けると幸いです。





『カラスとカササギ』


桜の花が咲き始める頃、
郵便局のそばの電柱の上に、カササギ夫婦の巣が完成しました。
 「今年もいい巣ができたな」
 「ええ、アナタ。これで安心して、子育てができますわ」
カササギ夫婦は、この電柱がお気に入りで、
もう何年も前から毎年ここに巣を作って、
卵を産み、子育てをしています。



カササギは、カラスより少し小さな体で、
胸からお腹にかけてと、翼の先っちょが白、
その他の部分が黒の、きれいな鳥です。
限られた地域で暮らしていて、その数は多くはありません。



いっぽう、新婚さんのカラスの夫婦は、初めての巣作りに挑戦中です。



新居は、コンビニの近くの電柱に決めました。
あちこち飛び回って、
巣の材料になりそうな物を見つけては、せっせと持って帰ります。
街の中では、木の枝などがそう簡単には見つからないので、
針金ハンガーやビニールのひも、使えそうな物は何でも利用します。



ある日、食事から戻って来たカラスの夫婦は、ビックリです。
半分ほどできあがっていた巣が、消えてなくなっていたのです。
 「オイラたちの巣、どこ行ったんだ?」
 「アンタの作り方が、下手くそだから、風に飛ばされたんじゃないの!?」
 「そんなことはない! オイラ、ちゃんと作っていたよ!」
夫婦ゲンカが始まりました。
でも、いつまでもケンカしているわけにはいきません。
巣ができないと、卵が産めないのですから。
気を取り直して、また一から巣を作り始めました。

今度はかなり急いで、お日さまが昇って沈むまで、がんばりました。
三分の二ほどできあがり、やれやれ、もう少しで完成だ、と、
カラス夫婦が電線でひと休みしていた時、
ヘルメットをかぶった人間が、現れました。

ヘルメットをかぶった人間は、電柱に登って来て、
作りかけのカラスの巣を壊し始めました。
そして、腰にぶらさげた袋の中に、
針金ハンガーやビニールひもを押しこみ、降りて行ったのです。
あとには、何も残っていません。

カラスの夫婦は、あっけにとられて、
ただ見ていることしかできませんでした。
 「なんで、オイラたちの巣を、壊すんだ?」
 「このままじゃ、アタシ、卵産めない! アンタ、何とかしてよ!」
 「ナントカって、言われても・・・」



翌日、カラスは、カササギ夫婦を訪ねました。
巣作りのベテランに、相談してみようと思ったのです。
 「カササギさん、どうしたら人間に壊されない巣が作れるんですカァ? 
  何かコツがあるんですカァ? 
  オイラたち、もう二回も壊されちまって・・・」
 「それはお気の毒に・・・。でも、これと言ったコツはないんだよ」
 「でも、オイラたちの巣は壊されて、カササギさんの巣は残っている。
  なんかコツがあるんでしょ?」
 「君たちカラスは、針金ハンガーなんかを使って、巣作りしているだろう? 
  あれが電線に触れると、停電したりするから、人間は嫌がるんだ」

カラスは、カササギの巣をチラッと見て、
 「でも・・・、オタクも、使ってますよね? その、青いのとか・・・」
 「いや、あの・・・、あれは、たまたま・・・」
そこへ、カササギの奥さんが助け舟を出します。
 「アナタ、別に隠す必要はないでしょ。
  カラスさん、実はアタクシたち、保護されていますのよ」
 「保護っすカァ?」
 「そう、アタクシたちカササギは、カラスさんたちと違って、
  数が少ない貴重な鳥だから、守られていますの、人間に。
  子供たちが巣立つまでは、巣が壊されることは、ありませんのよ」
その勝ち誇ったような言い方に、カラスは少しカチンと来ましたが、
一応お礼を言って帰ったのでした。

 「アタクシ、あの方嫌いですわ。
  人間が出したゴミをあさって、生活なさっているし、
  それに、まっ黒だし・・・」
 「おいおい、そんなことを言うもんじゃないよ。
  何を食べようと、どんな色をしていようと、
  私たちと同じ鳥じゃないか」
カササギのご主人は、小さくなるカラスのうしろ姿を見送りました。

さて、カラスは、カササギに相談したものの、
何の解決策も見い出せず、ガッカリです。
 (街の中じゃ、高い木がないから、電柱に巣を作るしかないし・・・。
  その材料になる木の枝すら、落ちちゃいない。
  でも、山に引っ越せば、食べ物を探すのに、不便だし・・・。
  困ったな。帰ったら、また文句言われるだろうな。
  いったい何のために、カササギさんとこ、行ったのよって・・・)

そんなこんなで、ため息をつきつき飛んでいたカラスでしたが、
ふと、街のペンキ屋さんが目にとまりました。
店先に、いろんな色のペンキの缶が並んでいます。
近づいてみると、白のペンキの缶のフタが開いています。
カラスは、いいことを思いつきました。

コッソリと白のペンキの缶に近づいて、
翼の先っちょだけ、缶の中につっこんでみました。
 (おっ、いい感じ!)
もう一度、缶の中に翼の先っちょを入れ、
たっぷりと白いペンキをつけると、
自分の胸にペタペタ、お腹にもペタペタ。
最後に、もう片一方の翼の先っちょも白くして、完成です。
 (やった~! これでオイラ、カササギだ! 
  誰が見たって、カササギだ!)

コンビニの近くの電柱で待っていたカラスの奥さん、
ただでさえ丸い目をさらに丸くして、
 「アンタ、なんなのそれ? いったい、なんの真似?」
 「なんの真似って、カササギの真似だよ!」
カラスは、カササギになりすまして、
子育てを乗り切ろう、という作戦を立てたのです。
すぐに、奥さんも、ペンキ屋さんへと飛んで行きました。

それから、カササギになりすましたカラスの夫婦は、
巣を完成させ、卵を産み、やがて無事ヒナが誕生しました。
カラスの、カササギなりすまし作戦は、とりあえずうまくいったようです。
 
 

そんなある日、カラスは、噂好きのスズメたちの話を耳にしました。 
 「ねぇ、知ってる? 小学校の所の電柱の話」
 「あ~、知ってる、知ってる! カラスの巣でしょ。
  ヒナごと、人間に持って行かれちゃったんですってね」
 「そう、そう、かわいそうにね」
 「カラスたちって、巣にヒナがいると、凶暴になるからって、
  人間たち、カラスの巣壊しちゃうんだって。
  ヒナがいても、お構いなしらしいわよ」
それを聞いたカラスは、青くなりました。
 (大変だ! 大変だ! 
  人間に見つかったら、子供たちが危ない! 
  カササギじゃないって、ばれたら一大事だ!)
 
カラスの体の白いペンキもほとんどはげ落ちて、
もとのまっ黒になりかけています。
あわててペンキ屋さんに飛んで行きましたが、
白いペンキの缶のフタは、そう都合良く開いてはいませんでした。

巣に戻ったカラスは、いつも以上に警戒して、
電柱の下を通る人間を、攻撃するようになりました。
 「アンタ、いい加減にしときなさいよ! 
  アンタが人間を襲えば、ここにカラスの巣があるよって、
  言ってるようなもんじゃない!」
確かに、奥さんの言う通りです。



カラスは後悔しました。
食べ物探しに便利な街での生活を選んだばっかりに、
子供たちを失うかもしれない。
そんなことなら、山で暮せば良かった、と・・・。
 
その頃、カラスよりも一足早く子育ても終わり、
のんびり暮らしていたカササギ夫婦の耳にも、
スズメたちの噂話は入っていました。
 「あのカラス君の所は、大丈夫かな?」
 「あら、別にアタクシたちが、心配することはないでしょう? 
  関係ありませんわ」



カササギの奥さんは、プイッと飛んで行ってしまいました。
やって来たのは小学校のそばの電柱です。
 (ここにあったカラスの巣が、なくなっちゃったのね。
  子供たちまで、持って行かれるなんて・・・)
少し、胸の奥がズキンとしました。
その時、何気なく見下ろした小学校の校庭での出来事に、
目が釘付けになりました。
 (これ、使えるかも!?)

急いで巣に帰ると、
 「アナタ、早く! 早く、いらして!」
 「どうしたんだい? そんなにあわてて」
 「いいから早く! 説明はあとで!」
 
小学校の校庭では、子供たちが風船を手にしています。
願いごとを書いた紙を風船に付けて、今からいっせいに飛ばすのです。
さっき、カササギの奥さんが見たのは、
その中の一人がうっかり手を放してしまって、
フワフワと飛んで行った風船でした。
 
ピーと笛が鳴り、子供たちが空に向かって風船を放ちます。
色とりどりのたくさんの風船が、フワフワ、フワフワと、
空めがけて登って行きます。

 

 「アナタ、早く捕まえて! できるだけたくさん!」
 
七つの風船を捕まえて、カササギ夫婦はカラスの所へやって来ました。
巣の中には小さなヒナたちと、ママカラスがいました。
 「あ、ママさんはそのまま、じっとしてらしてね」
カササギの奥さん、カラスの巣に、
七つの風船を次々にくくり付けていきます。
 「奥さん、いったい何やってんですカァ?」
 「カラスさん、アナタたちは、子供たちを守るために、山へ引っ越すの! 
  アナタたちには、それしか方法はないのよ!」
 「引っ越すったって・・・、どうやって?」
 「さあ、できたわ! ママさん、ゆっくり巣から出てくださいな」
ママカラスが、おそるおそる外へ出ると、
七つの風船が付いた巣が、フワフワッと宙に浮き上がったのです。
 「さあ、カラスさん、出発しますわよ!」
 
七つの風船が付いたカラスの巣は、まるでゆりかごのようです。
四羽の鳥たちは、そのゆりかごを囲んで飛び立ちました。
カラスは、万が一に備えてゆりかごの下。
ママカラスは、ゆりかごの横で子供たちを見守りながら。
カササギ夫婦は、ゆりかごの前後についています。
なにぶん、風まかせの引っ越しです。
何が起こるかわかりません。
 
はじめ遠くに見えていた山が、だんだん近づいて来ました。
その時、うしろにいたカササギの奥さんが、
上空をクルクルと旋回する黒い影に気がつきました。

 
 
 「アナタ! 上!」
 「あぁ、まずいな」
黒い影はトンビでした。
このあたりでは、乱暴者だと言われているトンビです。
それが、こちらに向かって急降下して来たのです。

 「オマエたち、何やってんだ?」
 「あら、トンビさん、こんにちは。
  今ちょうど引っ越しの最中なんですのよ」
 「へぇ~、引っ越しね。ま、オレには関係ないけどな。
  ところで、その赤や黄色の丸いヤツはなんなんだ? 
  オレにもひとつくれよ」
 「トンビさん、ごめんなさいね。
  これは借り物だから、アナタに差し上げることはできませんのよ」
カササギの奥さんは、トンビを怒らせないように、慎重に答えます。
 「借り物? いいじゃないか、たくさんあるんだからひとつぐらい」
トンビは、今にも風船につかみかかりそうです。
あの鋭い爪で、風船をつかまれたらひとたまりもありません。
 「あ、あ、あ、ト、トンビさん! 
  引っ越しが終わったら、ひとつ差し上げますから!」
言い終わらないうちに、トンビは何色がいいかなと、物色し始めました。

それまで、黙って様子を見ていたカササギのご主人とカラスのお父さん、
トンビと風船の間に割って入ります。
 「トンビさん、いいかげんにしてくれないカァ! 
  オイラたち急いでんだ」
 「だまれ、カラス! オレは何色がいいか、選んでいるんだ。
  なんだったら、全部もらってもいいんだぜ」

カラスは、カササギに目をやりました。
カササギが、うなずきます。
二羽は、トンビを挟み撃ちにするつもりのようです。
両側から体当たりしようとしたのですが、それよりも早く、
トンビは風船を、その鋭い爪でわしづかみにしてしまいました。

 「パーン!」
 
カササギ夫婦も、カラス夫婦も、
そして小さなカラスのヒナたちも、驚きました。
でも一番驚いたのは、トンビでした。
たしかにつかんだはずなのに、大きな音とともに消えてしまった風船。
おまけに割れた風船の破片が、トンビの顔めがけて飛んで来たのです。
何が何やらわからず、トンビは逃げるように飛んで行ってしまいました。

 「やれやれ、みんなだいじょうぶか?」
 「オイラたちは、平気っすよ」
 「よし、急ごう。日が暮れないうちに、山にたどりつかないと」

西の空が、ほんのりアカネ色に染まりだした頃、
やっと山にたどり着きました。
パパカラスは、急いで新居にふさわしい木を探します。
ちょうどいい木を見つけ、ママカラスが巣の中に入って、無事に着地です。
 
カラスが、巣にくくりつけられていた風船を、くちばしで割ろうとしました。
 「割っちゃだめよ! これは、お借りしただけなんですから」
カササギの奥さんが、風船をていねいに巣からはずします。
割れずに残った六つの風船は、ひとつ、またひとつと、
夕焼けの空へ吸い込まれて行きました。

 「カラス君、これからいろいろと大変だろう。
  しかし、ここにいれば、少なくとも人間におびえながら、
  暮らすことはないんだから」
 「カササギさん、ほんとに、本当に、ありがとうございます」
 「いや、これは全部、妻の発案だから・・・」
 「奥さん、ありがとうございます! 
  こんなオイラたちのこと心配してくれて、
  なんとお礼を言ったらいいのか・・・」
 「いえ、別にアタクシ、心配なんかしてませんわよ。
  あまりにヒマでしたからね。
  あっ、アナタ、早く帰らないと、まっ暗になってしまいますわ。
  急ぎましょ」
 
カササギの奥さんは、ご主人をせかして、アカネ色の空に飛び立ちました。
カラスの夫婦は、遠ざかるカササギたちが見えなくなるまで、
いつまでも、いつまでも見送っていました。



家々に明かりが灯り始めた頃、
カササギの夫婦は、郵便局のそばの電柱にやっと帰り着きました。
カササギの奥さん、何かをしっかりとにぎりしめています。
あの割れてしまった風船に付けられていた手紙でした。
 「ごめんなさいね」
カササギの奥さん、そう言いながら、
その手紙を赤い郵便ポストの中へ入れました。
いったいどんな願いごとが、書かれていたのでしょう。

夜の闇に包まれて、カササギの夫婦は仲良く寄り添っています。
カササギが、奥さんにささやきました。
 「今日の君は、世界中で一番すてきだったよ」

 
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