午前9時前に親父が出ていく。どうやら迎えに来てもらうのに家の前の細い路地まで入るのは申し訳ないと広い道まで出て行ったのだ。仕方なく俺も後をついていく。二人で待つがなかなか来ない。奥さんがやって来て、寒いから家で待ってるほうがといいと親父を説得している。俺は一足お先に家に戻り再び英文を読み始める。
「支度に時間がかかる人や、癇癪起こして突然行くの嫌やて言い出すような大阪のお父ちゃんのような人もいるんやし、時間通りには来れないとちがうの。ただでさえ今日は寒いんだから風邪でもひいたら大変、あなたがお義父さんに家で待つように言ってよね」 奥さんのプチ小言を聞き流していると車が止まる気配。
ともあれ月曜日に引き続いて2回目のデイサービスに出発である。
洗濯を終え、デイサービスの事務所に提出する医師の診断書を書いてもらいにタナハシ医院に行ったところにれい(18期生・某高校情報科講師)から連絡。今日は高校の授業もなくひまだそうで、いっしょに昼食を食べることに決まる。俺なんかより頻繁に実家で親父の世話をしてくれている娘に昼食ぐらい奢らなくっちゃな。
ということでれいのリクエストで『藤が丘食堂』 ここ最近、工事車両が入っていたようだったが外装に変わりはなかった・・・いや、看板がメリハリついてるけど。
でも座敷に座って驚く、これかいな。
内装・・・テーブルが一新されている。清潔感が『藤が丘』らしくなく、なんとも落ち着かないが・・・。
食後に親父がいるデイサービスを覗きに行く。
ちょうど食事の最中のようで、俺たち3人は隠れて親父の様子をうかがう。
前田(6期生・北里大学講師)のブログのなかに、「自分よりもかなり年上の恩師が身体に鞭打って仕事をされている姿をブログで見ると、自分も頑張らねばと思う」とある。
こりゃ俺のことかもしれない・・・分かればいい。カリスマ性がないぶん、身体を削らなきゃ生徒はついて来ないのだ。俺よりもカリスマ性に欠けるきらいのある前田だ、ここは性根を据えてシンプルな実力で勝負していただきたい。決して3階から酔っぱらって落ちるなんぞというアングルはつくらないことだ。知の最前線で地道に積み上げてきたものをいつの日にか、「かかってきなさい」と生徒たちを睥睨する日が来ることを願っている。
まあ、年を食って下の世代に伝えるものは「今」しかない。俺がアキラの親父のブログ・・・3年間ほどにも渡る両親の介護の日々を毎夜眺めては、いつかは俺もと覚悟をした。それと同じだ。今の俺が塾生に伝えられることは「今」の俺・・・お袋が入院、亡くなるまでを綴ったことや忘れっぽくなった今の親父と過ごす日常をここになるべく正直に描き出すことで、これを読む塾生一人ひとりに覚悟を求めているつもり。その覚悟とともに、塾生たちがその時に至った時、何がしかの参考になればと俺のブログを再読してくれるような内容にして残しておきたいのだ。