利根川の基本高水は国交省の計算値よりも実際には20%低い
2012年01月28日
カテゴリー: 緑のダム
本年はじめての投稿になります。
多忙でブログを放置してしまい、まことに申し訳ございませんでした。
この間、八ッ場ダム住民訴訟に関連して、東京高裁に提出する意見書を執筆しておりました。先日、東京高裁に提出されましたので紹介させていただきます。
朝日新聞の群馬版が、この意見書を大きな記事にしてくださいました。群馬版の記事で、他県の方々は読むことができないため引用させていただきます。
****引用開始********
朝日新聞群馬版 2012年01月28日
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581201280001
「国の数値は過大」 学者の意見書提出
八ツ場ダムへの公金支出は違法として、建設負担金を出す都県を相手取った住民訴訟で、控訴審の論点を整理する進行協議が27日、東京高裁であった。原告側は、国土交通省が再検証の過程で明らかにした利根川水系の基本高水(洪水時の最大流量)について、「ダムを建設しようと過大に見積もった」と批判する学者の意見書を提出した。
利根川水系の基本高水をめぐっては、カスリーン台風(1947年)をもとに伊勢崎市八斗島で毎秒2万2千トンとされてきたが、2010年10月に根拠資料が国交省にないことが発覚。その後、同省は近年の雨量や流量を踏まえて2万1100トンと再計算し、日本学術会議が「妥当」とした。
原告は、昨年9月にも利根川の基本高水は「観測データに基づくと1万6663トン」とする関良基・拓殖大准教授の意見書を高裁に出している。今回の意見書は「1950年から2010年までに起きた10回の洪水でも流量は13・7%減っており、国交省の再計算はおかしい」などと主張している。
意見書は、河川工学や森林政策学の学者4人が中心になり国交省のデータなどを使って調べ、関准教授がまとめた。
関准教授によると、流量減少の要因は「森林保水力の向上」。カスリーン台風当時は戦争中の乱伐と戦後の燃料需要で、山に樹木がなかったが、その後は回復したとしている。
学術会議は「保水力は増加する方向で進んでいるが、洪水のピークにかかわる流出では、(回復に)長期の年月が必要」と認めなかった。
控訴審初となる弁論は5月にも開かれる予定。
****引用終わり********
朝日新聞の前橋支局の記者の方は、一生懸命に私の意見書を読んで記事にしてくださいました。大変にありがたいことでした。ただ、必ずしも正確に読めていない部分がありますので、ちょっと補足させていただきます。
200年に1度のカスリーン台風洪水の計算ピーク流量は国交省の計算値で2万1100トン/秒ですが、当方の計算値は1万6700トン/秒と20%ほど低い値になります。朝日新聞記事では「流量減少の要因は「森林保水力の向上」」と書いてありますが、計算流量が低くなる理由は森林保水力の向上のほかにもう一つあります。その点補足しておきます。
国交省は過去に観測事例のある中期模洪水から計算モデルを組み立て、それを観測事例のない大規模洪水にあてはめて流量計算しているのですが、中規模のモデルを大規模にあてはめて計算すると計算値が上方に乖離していくのです。国交省は、この計算上の乖離を利用して、全国各地で虚偽のダム建設根拠をねつ造しているのです。本意見書は、この乖離が発生する理由を詳しく解説してあります。
森林保水力の向上は実際の流量の減少をもたらし、国交省のモデルの誤りを是正することは計算上の流量の減少をもたらします。
東京高裁に出した意見書の現物は下記の通りです。今回提出した意見書は昨年9月に出したものの続編ですので、今回の意見書と合わせてお読みください。
意見書(2011年9月提出)「日本学術会議が明らかにした事実を反映すれば国交省の新モデルでもカスリーン台風の再来計算流量16,663m3/秒となる」
http://www.yamba.sakura.ne.jp/shiryo/tokyo_k/tokyo_k_g_iken_seki_110930.pdf
意見書(2012年1月提出)「最終流出率0.7モデルで過去10洪水も正しく再現でき、カスリーン台風の再来計算流量16,663m3/秒の妥当性が確認された」
http://www.yamba.sakura.ne.jp/shiryo/tokyo_k/tokyo_k_g_iken_seki_1201.pdf
多忙でブログを放置してしまい、まことに申し訳ございませんでした。
この間、八ッ場ダム住民訴訟に関連して、東京高裁に提出する意見書を執筆しておりました。先日、東京高裁に提出されましたので紹介させていただきます。
朝日新聞の群馬版が、この意見書を大きな記事にしてくださいました。群馬版の記事で、他県の方々は読むことができないため引用させていただきます。
****引用開始********
朝日新聞群馬版 2012年01月28日
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581201280001
「国の数値は過大」 学者の意見書提出
八ツ場ダムへの公金支出は違法として、建設負担金を出す都県を相手取った住民訴訟で、控訴審の論点を整理する進行協議が27日、東京高裁であった。原告側は、国土交通省が再検証の過程で明らかにした利根川水系の基本高水(洪水時の最大流量)について、「ダムを建設しようと過大に見積もった」と批判する学者の意見書を提出した。
利根川水系の基本高水をめぐっては、カスリーン台風(1947年)をもとに伊勢崎市八斗島で毎秒2万2千トンとされてきたが、2010年10月に根拠資料が国交省にないことが発覚。その後、同省は近年の雨量や流量を踏まえて2万1100トンと再計算し、日本学術会議が「妥当」とした。
原告は、昨年9月にも利根川の基本高水は「観測データに基づくと1万6663トン」とする関良基・拓殖大准教授の意見書を高裁に出している。今回の意見書は「1950年から2010年までに起きた10回の洪水でも流量は13・7%減っており、国交省の再計算はおかしい」などと主張している。
意見書は、河川工学や森林政策学の学者4人が中心になり国交省のデータなどを使って調べ、関准教授がまとめた。
関准教授によると、流量減少の要因は「森林保水力の向上」。カスリーン台風当時は戦争中の乱伐と戦後の燃料需要で、山に樹木がなかったが、その後は回復したとしている。
学術会議は「保水力は増加する方向で進んでいるが、洪水のピークにかかわる流出では、(回復に)長期の年月が必要」と認めなかった。
控訴審初となる弁論は5月にも開かれる予定。
****引用終わり********
朝日新聞の前橋支局の記者の方は、一生懸命に私の意見書を読んで記事にしてくださいました。大変にありがたいことでした。ただ、必ずしも正確に読めていない部分がありますので、ちょっと補足させていただきます。
200年に1度のカスリーン台風洪水の計算ピーク流量は国交省の計算値で2万1100トン/秒ですが、当方の計算値は1万6700トン/秒と20%ほど低い値になります。朝日新聞記事では「流量減少の要因は「森林保水力の向上」」と書いてありますが、計算流量が低くなる理由は森林保水力の向上のほかにもう一つあります。その点補足しておきます。
国交省は過去に観測事例のある中期模洪水から計算モデルを組み立て、それを観測事例のない大規模洪水にあてはめて流量計算しているのですが、中規模のモデルを大規模にあてはめて計算すると計算値が上方に乖離していくのです。国交省は、この計算上の乖離を利用して、全国各地で虚偽のダム建設根拠をねつ造しているのです。本意見書は、この乖離が発生する理由を詳しく解説してあります。
森林保水力の向上は実際の流量の減少をもたらし、国交省のモデルの誤りを是正することは計算上の流量の減少をもたらします。
東京高裁に出した意見書の現物は下記の通りです。今回提出した意見書は昨年9月に出したものの続編ですので、今回の意見書と合わせてお読みください。
意見書(2011年9月提出)「日本学術会議が明らかにした事実を反映すれば国交省の新モデルでもカスリーン台風の再来計算流量16,663m3/秒となる」
http://www.yamba.sakura.ne.jp/shiryo/tokyo_k/tokyo_k_g_iken_seki_110930.pdf
意見書(2012年1月提出)「最終流出率0.7モデルで過去10洪水も正しく再現でき、カスリーン台風の再来計算流量16,663m3/秒の妥当性が確認された」
http://www.yamba.sakura.ne.jp/shiryo/tokyo_k/tokyo_k_g_iken_seki_1201.pdf






お久しぶりです。
今を去ること20年以上前、鴨川にダム計画がもちあがったときに、その計算の杜撰さを指摘したことがあります。このときは合理式法による計算で、流出計数0.9(実績値は戦中戦後の山が荒れていた時でも0.6程度)、洪水到達時間を実績値より2割近く短く見積もるというやりかたでした。大学3年生程度向けの教科書を読んでいればすぐに見破れる、トリックともいえないレベルのものでした(実際に私は大学3年生で、しかも全く別の専門だった)。
ダム推進派の洪水流出に関するロジックも少しは巧妙になったかと思いきや、(いや、少しは巧妙になったのかもしれませんが)相変わらず杜撰ですね。
私たちはこれに対し、森林や水田など、河川流域にすでにある環境の洪水貯留機能に注目し、現在の機能を十分に測定するとともに、森林や水田を営む人が洪水貯留機能の強化を自ら進められるような、農山村振興を基礎とした制度設計を考えていくことが必要でしょう。
広葉樹の割合を増やすとか、杉の植林なら大径木の山に育てるとか、水田なら畔を高めで強いものにするとか、ちょっとした対策で(いずれも現状の山村では人手不足、後継者不足で容易には実行できませんが)保水力はかなり上がり、多くのダムが不要になるはずです。