代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

アメリカ国民の多数は自由貿易が大嫌い

2011年10月16日 | 自由貿易批判
 私の愛読する孫崎享氏(元外務省の国際情報局長、元防衛大学校教授)のツイッターで展開されているTPP批判は核心を突いていると思う。同氏の下記ツイッターから少し引用させていただく。

 http://twitter.com/#!/magosaki_ukeru

***引用開始***

 TPP;TPP論議の時、これに乗らないと米国が怒るという論理。しかし、米国国民がどの程度自由貿易に支持をしているか。2010年11月PEWの世論調査「自由貿易協定は米国に良いか悪いか」で良いが35%、悪いが44%、PEW2011年10月で「自由貿易は米国に+かーか」は+48.

 自由貿易推進評価は米国内で不定、時に-。この中、オバマ大統領が特に熱心かは不明。熱心なのは安全保障と同じく日本を隷属化させようとするグループ。米国では対日関心は低く、一部の「日本屋」に丸投げ。対日政策ではオバマは単にこれにのっているだけ。怒るのは「日本屋」

***引用終わり***

 オバマもTPPなどにそれほど熱心とは思えない。ヒラリーなど元来からアンチ自由貿易論者である。失業問題に対するアメリカ人の怒りは今のところ「強欲なウォール街」に向けられているが、アメリカの今日の惨状を生み出した原因は「貿易自由化」と「金融自由化」の二本柱にある。アメリカ人の怒りは潜在的に自由貿易システムに向けられているといえるだろう。

 世論調査を見れば明らかである。孫崎氏が紹介しているPEW Reserch Centerは、アメリカ国民を対象に、定期的に自由貿易に関する世論調査をしている。昨年の米国での自由貿易世論調査の中からいくつか紹介してみよう。
 
2010年11月7日の調査より

「自由貿易協定は、アメリカに雇用を生むと思いますか、それとも雇用の喪失につながると思いますか?」
http://www.people-press.org/question-search/?qid=1773687&pid=51&ccid=51
 雇用を生む    ・・・・8%
 雇用喪失につながる・・・・55%
 変化はない   ・・・・・24%
 わからない・無回答 ・・・12%

「自由貿易協定はアメリカ人の賃金を上げると思いますか、それとも下げると思いますか、または変わらないと思いますか?」
http://www.people-press.org/question-search/?qid=1773686&pid=51&ccid=51 
 賃金を上げる・・・・・8%
 賃金を下げる・・・・・45%
 変わらない  ・・・・・34%
 わからない・無回答・・12%

「自由貿易協定はアメリカ経済を成長させると思いますか、それとも減速させると思いますか、変わらないと思いますか?」
http://www.people-press.org/question-search/?qid=1773688&pid=51&ccid=50
 成長させる ・・・・・19%
 減速させる ・・・・・43%
 変わらない  ・・・・・24% 
 わからない・無回答・・13%
 
「自由貿易協定は途上国の人々にとって良いと思いますか、それとも悪いと思いますか?」
http://www.people-press.org/question-search/?qid=1773689&pid=51&ccid=51
 良い   ・・・・・・54%
 悪い   ・・・・・・9%
 大差なし ・・・・・・23%
 わからない・無回答・・11%

「全体的に見てNAFTAやWTOなどの自由貿易協定はアメリカにとって良いことと思いますか、それとも悪いことと思いますか?」
http://www.people-press.org/question-search/?qid=1773683&pid=51&ccid=51
 良い  ・・・・・・・35% 
 悪い  ・・・・・・・44%
 わからない・無回答・・21%


 アメリカ世論がもはや多国間であれ二国間であれ「自由貿易」全般を志向しなくなっているのに、「アメリカ」の要求に乗る以外の選択はないかのように煽る日本の政治家・マスコミはマゾなのだろうか。彼らの言う「アメリカ」とは何なのだろう?

 TPPに日本を引きずりこもうとしているのは、孫崎氏の言うように日本を隷属化させようとする「ジャパン・ハンドラーズ」だけであろう。ジャパン・ハンドラーたちは、米国世論とは全く無関係な存在である。米国の「対日政策ムラ」に属し、パトロンであるウォール街や軍需産業や穀物メジャーなどを喜ばせるような方向に日本の諸制度を「改革」し、それによって利権をあさる偏狭なロビイストにすぎない。
 そのウォール街がまさに世論によって包囲されているのであり、日本が堂々とTPPを拒絶することは、アメリカ国民に喜ばれこそすれ、アメリカとの関係を壊すということはない。ジャパン・ハンドラーたちとの関係など壊れることは喜ぶべきことである。

 米国のマジョリティを味方につければ、あんな連中はひとひねりだろう。ちょろいもんだ。あの連中に恐懼している日本外交とはいったいなんなのだろう? 反ウォール街の米国世論を味方につけて外堀を埋め、ジャパン・ハンドラーズを孤立化させて叩くぐらいの外交戦略がなぜ立てられないのだろう? 


 
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関さんを招いてTPPの学習会 (たんさいぼう影の会長)
2011-10-16 23:05:24
 私が所属する酒飲みサークル「おいしい水研究会」では、本ブログを主宰する関さんを招いて以下の通りTPPの学習会を行います。
 本ブログの愛読者の皆様!関さんの話をじかに聞き、質問したり討論したりする絶好のチャンスです。特に東京周辺にお住まいの方は、ぜひともご参加ください。

TPPって何か知ってますか?
震災復興、原発問題の一方、日本がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参加するかどうかの議論が再開しています。特に財界や米国からの猛プッシュがあるようです。TPPとは、簡単に言うと米国をはじめ環太平洋地域で自由貿易圏を作ろうという構想です。よく話題になる農作物だけでなく、医療、金融、電気通信などのサービス、投資など幅広い分野が対象になってます。
農作物の輸入自由化が進めば自給率の一層の低下ももたらしますし、地域経済、雇用など、私達の生活や社会、もちろん環境にも大きな影響が出るため参加の可否について政治、経済の分野では議論になっていますが、どうも私達一般市民の関心は高くありません。
そもそも、TPPとは何か、何が問題ががよく分かりません。
それなのに、野田政権は11月にもTPP参加の可否を決めようとしてます。
そこで「おいしい水研究会」では、講師をお招きし、TPPとその問題点について学習会を開催します。
昼間の学習会だけでなく、夜は水研らしく講師と飲みながら議論を深めていきます。
「TPPって何?日常生活に悪影響があるの?いまいちよく分からないなぁ」
という方、ぜひご参加ください。

日時:2011年10月29日(土) 14:30会場、15:00開始(17:00まで)
  (学習会終了後、近所で懇親会開催。日本酒の美味しい店を予定)

場所:環境パートナーシップオフィス (EPO)ミーティングスペース
(東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F)
http://www.geoc.jp/facilities/meeting

講師:関良基さん(拓殖大学政経学部准教授)

費用:500円(懇親会費用は別途精算)

申込方法:
参加申し込みは以下のメールアドレスに氏名、メールアドレス、学習会と懇親会の出欠を送ってください。確認後、当方から返信いたします。
参加の理由や学習会への意見、プロフィールなども添えていただけると幸いです。
mizuken_org@yahoo.co.jp

学習会要旨(関さん作成):
 学習会では、農業をはじめとする社会的共通資本が市場原理を通した分配に適さない理由を考えていきたい。社会的共通資本とは宇沢弘文が概念化したものであるが、農産物を生産する農村の他に、自然環境、社会インフラ、医療制度、教育制度、金融制度などが含まれ、これらはいずれもTPPによって脅かされることが懸念されている部門ばかりである。TPPとは、市場原理になじまないとされてきた社会的共通資本部門を全面的に私有化・商品化し、全面的に市場原理に委ねようとする試みであると言って過言ではないだろう。社会的共通資本が私的資本に転換されていくと、需給ギャップ拡大という市場的不均衡ならびに貧困層の増大という社会的不安定性が生み出される。私的資本部門からは関税を含む課税をし、もって社会的共通資本の形成と維持管理を行って有効需要を喚起し、両部門のバランスを保つことによって、はじめて市場的均衡と社会的安定性を取り戻すことが可能になる。

たんさいぼう影の会長さま (関)
2011-10-18 15:26:26
 ご案内ありがとうございました。
 TPP交渉内容のテクニカルな話題にはあまり踏み込めないと思います。商品化・市場化して良いもの、悪いものの違いを考えます。その上で、それらを一律に市場化するとマクロ経済にどのような歪みが生じるのかということを考えていきたいと思います。
勉強会 (まさたか)
2011-10-31 13:46:42
なんとなく分かっていたつもりになっていたTPPの論点が、関さんのおかげで広い繋がりの一部として見えてきました。
なるほど、アメリカのサブプライムローンに端を発したように見える不景気は、自由貿易拡大の結果でもあったのですね。

ジャパンハンドラーについては不勉強ですが、そういうロビー活動がお金を持っているわけですね。

次は地域とTPPの問題を学ぶ全国大会ですが、関さんと曽我村長のセッションが見てみたくて仕方ありません。

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