弁理士『三色眼鏡』の 業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】地域団体商標の先使用権 ~小田原かまぼこ~

2017年12月04日 08時09分18秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
少しずつ布団から抜け出るのがつらくなってきた今朝の湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(タウンニュースより引用)
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「小田原かまぼこ」商標訴訟
組合の請求棄却、控訴へ

『小田原かまぼこ』などの地域団体商標を保有する小田原蒲鉾協同組合が、商標権を侵害したとして食品加工業者2社に商標を使った商品の販売差し止めと損害賠償約5000万円を求めた訴訟の判決が11月24日に横浜地裁小田原支部であり、栗原洋三裁判長は訴えを棄却した。訴えられた2社の先使用権などが認められた。

小田原蒲鉾協同組合は昨年3月、かまぼこを製造する南足柄市の(有)佐藤修商店と、その関連会社で小田原市栢山の(株)小田原吉匠総本店を提訴。訴状などによると、2社は組合に加入していないが、組合が2010年4月に登録出願した『小田原かまぼこ』や『小田原蒲鉾』といった地域団体商標を商品に記し、都内や千葉、長野県などの展示会やスーパーで販売していたという。

今回の争点となったのは、地域団体商標制度において保護される「先使用」と「不正競争の目的」の有無について。判決では、2社が2001年頃からと04年頃から名称を利用していたとして、先使用権が認められた。さらに、佐藤修商店のある南足柄市は、自然や歴史的なつながりから小田原周辺と捉えることができ、地域のかまぼこの付加価値を高めようとしてきたことが考慮され、「不正競争の目的はない」と判断された。佐藤修商店の弁護士は「主張が認められ、当然の判決だと思う」とコメントした。

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(引用終わり)

裁判所HPではまだ判決文が確認できないのだけど、地域団体商標に関する「先使用権」が認められた例。

[「先使用権」とは?]
商標登録を受けると、権原のない第三者による登録商標の使用に対して商標権を行使することができます。
「先使用権」とは、他人の商標登録出願前から使用している場合に合って、特定の要件を満たしている場合に
主張し得る抗弁権です。

これは、もともと商標法が商標権者の業務上の信用という「私益」と競争秩序の維持による需要者の利益という「公益」の両面を保護法益とした法律ゆえの規定です。

そうは言っても先に使っていさえすればなんでも抗弁できるとなると、先願主義もへったくれもなくなってしまうので、
ある程度厳格に要件を定めることにより一定の線引きがなされています。

通常の商標権についての先使用権が認められるためには、以下の要件を満たすことが必要です。
1)他人の「出願」前から日本国内においてその商標を使用していること
 タイミングとしては、問題となる登録商標の出願より前から使用していることが必要です。
 相手方より先に使用していたとか、登録より前だった、といっても関係ありません。

2)「不正競争の目的でなく」使用していること
 ここでは、他人の信用を利用して不当な利益を得る目的でなく、という意味と捉えてよいです。
 いわゆる「フリーライド」なものは先使用は認めない、ということです。

3)継続して使用していること
 他人の出願前から現在まで、使い続けている必要があります。
 といっても、例えば「季節もの」のような場合でもフルシーズン使用していなければいけない、という意味ではなく、
 継続の意思が客観的に認められる限りは「継続して」にあたります。
 
4)使用の結果、現にその商標が「周知」になっていること
 どれくらい有名になっている必要があるか、というのは正直ケースバイケースでなかなか説明が難しいところですが、
 地域的な面で行けばその町で有名とかその県で有名とかでは足りず、
 隣接都府県まで広く知られていることが必要、というのが通説です。


[地域団体商標の先使用権]
今回の事案が目新しいのは、地域団体商標に関する先使用権の成立が争われたという点にあります。
地域団体商標においては、上述の先使用権の要件のうち「4)」が不要です。
これは、もともと「地名+普通名称」等、通常ならば登録にならない構成の商標につき
主体要件を生産組合等に限定し、かつ登録にあたって周知性が必要な特殊な制度の裏返しともいうべきものです。
(もし他人が使用しているそのマークが周知性を有しているならそもそも地域団体商標は登録になっていなかったはずなので。)

今回の事案では、被告側も地域のかまぼこの付加価値を高めようとしていた、として不正競争の目的は否定されました。
このあたり、生産組合に加入しなかった経緯も含め、判決文で事実関係を確認したいところです。

<所感>
地域団体商標にしろGI(地理的表示保護制度)にしろ、
結局のところ「遠くの他人」ではなく「近くの同業者」に対する対策、というのが実際のところなのですよね…。
なんとなく、昔ながらのムラ意識の延長線上、という気がしないでもないです。
もちろん、対外的なプレゼンスの向上、という側面は別であるのですが。

生産者それぞれに個性があるなか、各制度を地域としてひとまとまりになっていくためのツールとして使いこなせると大きな武器になるのですが、そうした意識が一枚岩になっている地域というのはむしろ稀な気がします。その統一感を出していくのに必要なのは、利益誘導なのか人の魅力なのか郷土愛なのか…。
個人的には、制度はたとえて言うならマラソンのペースメーカーのような存在であるべきで、
個々の生産者さんの個性は大事にしつつ、共通項で括れるところは括り、一定程度まで引っ張り上げたら最後は個の力が発揮できる仕組みにしないと、結果的には元気な地域の方々がスポイルされてしまうような気がします。
今の各制度は果たしてどうなのか…?新JAS法なんかも絡み、規格による品質保証と個性的な商品の魅力を両立させる仕組みの方が、結局需要者には指示される気がします。

ちょっと最後は脱線しましたが、なんにせよ地方に関心が高まることそれ自体はとても良いことだと思い、こんな記事を取り上げてみました。
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