弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【商標_審査基準】系列会社での商標の共有

2017年01月24日 08時33分23秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
一段と冷え込んでいる今朝の湘南地方です。

さて、今日は先週末のこんな記事から。

(日経電子版1/21 より引用)
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商標 子会社と共有可能に 特許庁、系列で使いやすく

特許庁は企業が自社商品の商標を取りやすくする制度を整える。
子会社が親会社と同じ商標を取れるようにしたり、同じ商標をあとから別の商品にも使ったりする場合に商標権を管理しやすくする。

商標の審査基準を改め、4月から使えるようにする。
(中略)
審査基準の改定で、親会社が同じ商標を取ることを認める書類を特許庁に出せば、子会社も同じ商標を取得できるようになる。
審査基準を変更し、今持っている商標を他の種類の商品にも広げやすくする。1つの商品に対する商標を出願した際、あとで対象の商品を追加したい場合、1つ目と追加したものとまとめて申請できるようになる。

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(引用終わり)

書かれていることは2点。
1)親会社-子会社の関係であれば、同意書があれば11号の引例としてみない。
2)指定商品の追加が可能になる。

「4月から使えるようにする」→ホントに? と思って調べてみたら、
「1)」については確かに産構審の商標制度小委員会、審査基準WGで議論されてる(2016.12.21)。


新しい審査基準(案)は以下の通り(以下は「配布資料 1-2.」からの引用)。
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13. 商標権者と引用商標権者に支配関係がある場合の取り扱い
出願人から、出願人と引用商標権者が①又は②の関係にあることの主張に加え、
③の証拠の提出があったときは、本号に該当しないものとして取り扱う。

① 引用商標権者が出願人の支配下にあること
② 出願人が引用商標権者の支配下にあること
③ 出願に係る商標が登録を受けることについて引用商標権者が了承している旨の証拠
(①又は②に該当する例)

(ア) 出願人が引用商標権者の議決権の過半数を有する場合
(イ) (ア)の要件を満たさないが資本提携の関係があり、かつ、引用商標権者の会社の事業活動が事実上出願人の支配下にある場合
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海外にはコンセント制度(=類似関係にある後願であっても先行権利者の同意(consent)があれば
登録を認める制度)がある国もあるが、日本でも限定的な関係に限って導入する、という趣旨で良いのかな。
確かにここまで固まってれば、パブコメを経て4月から施行、は普通にあり得る。

問題は「2)」。
これ、実務的には結構な大転換になる(本当ならばですが)。
出願後に指定商品/役務を修正したい場合、補正によることになるのだが、
補正には「要旨変更にならないこと」という縛りがある。
「要旨変更」は色々審査基準にも記載があるのだけど、要は権利の拡張、変更になる補正は認めない、
ということ。
先願主義=優劣が原則出願の先後で判断される、という原則とワンセットなもの。
それが、指定商品の追加が可能となるとすれば、調査実務も含めて結構ややこしいことになる。
記事の書き方から、「出願中のものに補正で追加する」なのか「既に登録を受けているものの指定商品を拡張する」なのかが
もう一つ判らないけど、いずれにしても一つの出願/権利の優先日が複数生じることになる(しないと不整合が生じる)。
特許でいうところの「国内優先権」のイメージ??

ただ、この「2)」についてのソースが、どうもハッキリしない。
審査基準WGでは特に議論されている様子は見受けられないし。。。
この辺についての情報、もう少々調べて改めてこのブログで取り上げたいと思います。

コメント
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