「小倉さん、これは平成の恵川版尾上縫ですよ」坂本の開口一番の話である。
「尾上縫?って個人での負債総額が日本最高金額となったあの事件の主人公かい」「そうです。松島美紀が平成の尾上だと言うのです」「誰が?」「M&Aの譲受企業です」「一流料亭が美容チェーンに置き換えているだけか」「そうなんです。証書偽造したのが信用金庫とこれまた同じですね」「松島社長はどうなるんだ」「おそらく逮捕でしょうね。そんな噂が広まっているそうですよ」「俺はどうなるのかな」「小倉さん関係があるのですか」「うん2度ほど」「2度?何を言ってるんですか。大丈夫ですか」どうやら関係という言葉を肉体関係と勘違いしていたようだ。「悪い。東京検察庁の動きは俺たちではどうすることもできないな。審美の動揺を鎮めさせなければならないな。美紀に電話してみる」「美紀?そんな関係なんですか?破談の原因もそれっ!?」美紀に連絡を取った小倉はすぐに行動に移した。「坂本君、俺はこれから美紀に会いに言って来る。後は頼んだ」後とは何を意味しているのか理解できなかったが、ここの勘定を払わず出て行ってしまった小倉であった。「これかい!」坂本は呆気に取られていた。
「美紀どうなってるんだ」美紀に会うや小倉はこう切り出した。「あら副社長様何のこと」「お前逮捕されるかも知れないんだぞ」「私が逮捕?まさか」美紀はすぐさま信用金庫の支店長に電話を入れてみた。
「生憎支店長は退職いたしました」応対に出た女性が告げた。「美紀お前何も知らないのか。世間ではお前のことが大変な話題になっているんだぞ」「そうでしょうよ。私は話題の女よ」「どこまで能天気なんだ、お前は」「お前って呼んでくれるのね。嬉しいわ。そう私は貴女の女です」「話にならないな」こんな会話を繰り返していた所へ、検察庁が美紀への逮捕状を持参して入室してきた。「松島美紀だね。詐欺罪で逮捕する」さらに小倉まで事情聴取したいと検察に連行された。
この情報はすぐに神庫に入った。「中々連絡が来ないと思っていたらこんなことになっていたのか」ひとり呟く神庫であった。
松島美紀は美容室を開業するさいに融資の依頼を信用金庫にお願いした。窓口に現れた美紀は当時22歳でセクシーな魅力ある女性であり、応対に出た支店長は一ころで参っていた。次第に支店長と親密になり、関係を結ぶようになっていた。支店長は架空の預金を証明する証書を偽造し、他の金融機関から融資を引き出させた。これがトリガーとなり美紀は次々とこの手口でチェーンを拡大して行った。ついには株に手を出し、バブル環境もあり莫大な金を手にすると同時に個人では考えられないぐらいの負債も発生していた。美紀は持ち前の美貌を武器に、これと目をつけた男たちを次から次へと落とし、その数は3桁は下らないと言われていた。色仕掛けを駆使していたのだ。小倉もそのうちの一人だったのか、否、それはない、小倉に金を動かせる力はない。ではなぜに小倉が?
おそらく人の良さそうなこの男なら老体化した美紀でも、満足するであろうと踏み、小銭入手手段として利用しようとしていたに違いない、というのが検察の見解だった。取調べを受けた小倉は観念し、正直に事実を告げた。検察は神庫にも連絡をいれ、検察庁に参考人として呼び出された。神庫は小倉から聞きだそうと思っていたことを検察からすべて聞いた。
神庫は小倉の処置をどうすべきか、考えを巡らせていた。こういう事件に関与はしていなかったとは言え、金を受け取っている事実はある。さらに審美への移籍も考えていた帰来もある。小倉はまだまだこれからの男ではあるが、ケジメは着けさせなければならない。検察から解放された小倉を事務所に呼び、結論を出すことにした。
「小倉君大変だったね。しかし君の行動は決して誉められたものではないし、当社に対する背任行為と取られても仕方ないことだよ。君の考えを聞きたい」やや口調が強くなっていた神庫であった。「自分がとった行動は責められるべきだと思います。私は先生のところでさらに研鑽を重ね、事業再生家としていい仕事をして行きたいと思います」「小倉君、ケジメとして君には退職してもらいます。君も言いたい事は沢山あると思うが、辞めてもらいます」神庫は致し方ない処置であると思っていた。神庫は全スタッフに連絡を入れ、全体ミーティングを開く旨を伝えた。
「ご苦労様。知らせておかなかくてはならないことがあります。今日この場にいない小倉君のことですが、昨日付けで退社してもらいました。原因は色々ありますが、詮索はしないで欲しい。彼の仕事は坂本君に負担してもらいたいと考えています。すぐにスタッフの補充はしたいと思います」スタッフに動揺が走っていた。
神庫はこれも教育の一環であると自分に言い聞かせていた。
神庫はスタッフ補充のため懇意にしている弁護士に相談を持ちかけた。弁護士から紹介されたのは、母校の中央大学出身の木村という男であった。東大ではなかったが、中大出と言うだけでなぜか愛着が沸いて来ていた。早速面接をすると、希望銀行出身だという。法学部を出ていて、銀行では不良債権処理を担当していたという。話を聞き、採用することにした。年齢は37歳で独身であった。
木村はめきめき頭角を現していった。期待の人材である。
新聞各社は審美の松島美紀を記事にした。女性週刊誌にいたっては、松島美紀の男関係を面白おかしく書きたて、販売部数の増大を狙っているのがみえみえであった。落ち着くまでには半年はかかりそうな喧騒であった。木村は蕎麦屋の新規開店の担当に付いていた。新社長も木村を気に入ったらしく逆に神庫はそれが心配になっていた。
三浦との中はいつも通りであった。三浦の夜の行動はここのところかなりの激しさがあった。今までやったことのない行為、昔なら恥ずかしがって手で顔を覆うような行為も今では平然とやって退けていた。
また新たな案件が舞い込んできた。木村を呼びつけた神庫は「木村君、君に担当してもらいたい仕事があるんだ。デイケアサービスだ。サブとして津嘉山さんと三浦さんをつける。頼みますね」「私がですか?」「資料は後で渡します。良く目を通しておいてください。訪問は明後日10時です」
「尾上縫?って個人での負債総額が日本最高金額となったあの事件の主人公かい」「そうです。松島美紀が平成の尾上だと言うのです」「誰が?」「M&Aの譲受企業です」「一流料亭が美容チェーンに置き換えているだけか」「そうなんです。証書偽造したのが信用金庫とこれまた同じですね」「松島社長はどうなるんだ」「おそらく逮捕でしょうね。そんな噂が広まっているそうですよ」「俺はどうなるのかな」「小倉さん関係があるのですか」「うん2度ほど」「2度?何を言ってるんですか。大丈夫ですか」どうやら関係という言葉を肉体関係と勘違いしていたようだ。「悪い。東京検察庁の動きは俺たちではどうすることもできないな。審美の動揺を鎮めさせなければならないな。美紀に電話してみる」「美紀?そんな関係なんですか?破談の原因もそれっ!?」美紀に連絡を取った小倉はすぐに行動に移した。「坂本君、俺はこれから美紀に会いに言って来る。後は頼んだ」後とは何を意味しているのか理解できなかったが、ここの勘定を払わず出て行ってしまった小倉であった。「これかい!」坂本は呆気に取られていた。
「美紀どうなってるんだ」美紀に会うや小倉はこう切り出した。「あら副社長様何のこと」「お前逮捕されるかも知れないんだぞ」「私が逮捕?まさか」美紀はすぐさま信用金庫の支店長に電話を入れてみた。
「生憎支店長は退職いたしました」応対に出た女性が告げた。「美紀お前何も知らないのか。世間ではお前のことが大変な話題になっているんだぞ」「そうでしょうよ。私は話題の女よ」「どこまで能天気なんだ、お前は」「お前って呼んでくれるのね。嬉しいわ。そう私は貴女の女です」「話にならないな」こんな会話を繰り返していた所へ、検察庁が美紀への逮捕状を持参して入室してきた。「松島美紀だね。詐欺罪で逮捕する」さらに小倉まで事情聴取したいと検察に連行された。
この情報はすぐに神庫に入った。「中々連絡が来ないと思っていたらこんなことになっていたのか」ひとり呟く神庫であった。
松島美紀は美容室を開業するさいに融資の依頼を信用金庫にお願いした。窓口に現れた美紀は当時22歳でセクシーな魅力ある女性であり、応対に出た支店長は一ころで参っていた。次第に支店長と親密になり、関係を結ぶようになっていた。支店長は架空の預金を証明する証書を偽造し、他の金融機関から融資を引き出させた。これがトリガーとなり美紀は次々とこの手口でチェーンを拡大して行った。ついには株に手を出し、バブル環境もあり莫大な金を手にすると同時に個人では考えられないぐらいの負債も発生していた。美紀は持ち前の美貌を武器に、これと目をつけた男たちを次から次へと落とし、その数は3桁は下らないと言われていた。色仕掛けを駆使していたのだ。小倉もそのうちの一人だったのか、否、それはない、小倉に金を動かせる力はない。ではなぜに小倉が?
おそらく人の良さそうなこの男なら老体化した美紀でも、満足するであろうと踏み、小銭入手手段として利用しようとしていたに違いない、というのが検察の見解だった。取調べを受けた小倉は観念し、正直に事実を告げた。検察は神庫にも連絡をいれ、検察庁に参考人として呼び出された。神庫は小倉から聞きだそうと思っていたことを検察からすべて聞いた。
神庫は小倉の処置をどうすべきか、考えを巡らせていた。こういう事件に関与はしていなかったとは言え、金を受け取っている事実はある。さらに審美への移籍も考えていた帰来もある。小倉はまだまだこれからの男ではあるが、ケジメは着けさせなければならない。検察から解放された小倉を事務所に呼び、結論を出すことにした。
「小倉君大変だったね。しかし君の行動は決して誉められたものではないし、当社に対する背任行為と取られても仕方ないことだよ。君の考えを聞きたい」やや口調が強くなっていた神庫であった。「自分がとった行動は責められるべきだと思います。私は先生のところでさらに研鑽を重ね、事業再生家としていい仕事をして行きたいと思います」「小倉君、ケジメとして君には退職してもらいます。君も言いたい事は沢山あると思うが、辞めてもらいます」神庫は致し方ない処置であると思っていた。神庫は全スタッフに連絡を入れ、全体ミーティングを開く旨を伝えた。
「ご苦労様。知らせておかなかくてはならないことがあります。今日この場にいない小倉君のことですが、昨日付けで退社してもらいました。原因は色々ありますが、詮索はしないで欲しい。彼の仕事は坂本君に負担してもらいたいと考えています。すぐにスタッフの補充はしたいと思います」スタッフに動揺が走っていた。
神庫はこれも教育の一環であると自分に言い聞かせていた。
神庫はスタッフ補充のため懇意にしている弁護士に相談を持ちかけた。弁護士から紹介されたのは、母校の中央大学出身の木村という男であった。東大ではなかったが、中大出と言うだけでなぜか愛着が沸いて来ていた。早速面接をすると、希望銀行出身だという。法学部を出ていて、銀行では不良債権処理を担当していたという。話を聞き、採用することにした。年齢は37歳で独身であった。
木村はめきめき頭角を現していった。期待の人材である。
新聞各社は審美の松島美紀を記事にした。女性週刊誌にいたっては、松島美紀の男関係を面白おかしく書きたて、販売部数の増大を狙っているのがみえみえであった。落ち着くまでには半年はかかりそうな喧騒であった。木村は蕎麦屋の新規開店の担当に付いていた。新社長も木村を気に入ったらしく逆に神庫はそれが心配になっていた。
三浦との中はいつも通りであった。三浦の夜の行動はここのところかなりの激しさがあった。今までやったことのない行為、昔なら恥ずかしがって手で顔を覆うような行為も今では平然とやって退けていた。
また新たな案件が舞い込んできた。木村を呼びつけた神庫は「木村君、君に担当してもらいたい仕事があるんだ。デイケアサービスだ。サブとして津嘉山さんと三浦さんをつける。頼みますね」「私がですか?」「資料は後で渡します。良く目を通しておいてください。訪問は明後日10時です」
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