Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2017年度刑法Ⅰ(第11回)基本レジュメ

2017-06-19 | 日記
 第11回 共犯① 共同正犯(問題16)判例73、74、75、76、82、94、95、96
(1)正犯(単独正犯)
1犯罪とは、構成要件に該当する違法で、かつ有責な行為

 構成要件=法益侵害行為の類型化
 構成要件に該当する行為を行った人=正犯(正に〔まさに〕罪を犯した人)
 それ以外の行為を行って犯罪の実現に関与した人=共犯(教唆・幇助)

2正犯の認定基準
 構成要件該当行為を基準          客観的正犯論
 それ以外の行為を行って、犯罪の実現に関与 客観的共犯論

3間接正犯・離隔犯
 ある者が自分で行為を行い、構成要件を実現する→正犯

 ある者が他の者に行為を行わせて、構成要件を実現する→正犯? 教唆犯?
  XがYに銘じて、窃盗を行わせる→窃盗の(直接)正犯はY、その教唆犯はX
  父親Xが5才の子どもYに命じて、窃盗を行わせる→窃盗の(間接)正犯はX Yは?

 Xが宅配業者Yに依頼して、Aに毒入りウィスキーを届けさせてAを殺害した→殺人の正犯はX

4構成要件の形式的・事実的理解から実質的・規範的理解へ
 構成要件の形式的理解→それを実現する「行為」を行ったか否かの事実の有無
    その実質的理解→構成要件を実現したと判断されるか否かの評価の有無

【73】被害者の行為を利用した殺人
【74】間接正犯


(2)共同正犯
1「一部実行の全部責任」の原理
 刑法60条 2人以上の者が共同して犯罪を実行 共同正犯

 XとYは、他人の家の前に駐車してあった高級者を押して、運んび去った(窃盗)。
 Xがコンビニ店員Aを刃物で脅し、Yがその隙にレジから現金を奪った(強盗)。
 XとYは同時に発砲して、Aを殺害した。Aに命中した弾丸はXが発砲したものであった(殺人)。

 一部実行の全部責任

2共同正犯の成立要件
 共同実行の事実 構成要件該当行為の全部または一部の共同実行
 共同実行の意思 共同実行の事前または現場における意思連絡(明示的または黙示的)

 共同実行の事実の要件の緩和傾向 共謀共同正犯 承継的共同正犯 共犯関係の解消
 共同実行の意思の要件の緩和傾向 結果的加重犯の共同正犯、過失犯の共同正犯、片面的共同正犯

3共同実行の事実の緩和傾向
・共謀共同正犯
 X・Y・Zが、特定の犯罪(殺人)の実行を共謀(共同謀議)し、Y・Zがその犯罪を実行した
 Y・Zは殺人罪の共同正犯(実行共同正犯)
 Xもまた殺人罪の共同正犯(共謀共同正犯)

 組織的殺人の共謀罪 X・Y・Zが組織的殺人を共謀。Y・Zが準備行為を行う。
 X・Y・Z 組織的殺人の共謀罪(準備行為は処罰対象ではなく、処罰条件にすぎない)

【75】共謀共同正犯(練馬事件)
【76】共謀共同正犯(スワット事件)

・承継的共同正犯
 結合犯(強盗罪=暴行・脅迫→財物の奪取)の途中から関与
 XがAを殴打して気絶させた。それを見ていたYが財物の奪取にのみ関与した。
 XがAを殴打したことについて、XとYとの間には事前または現場での意思連絡なし

【82】承継的共同正犯

・共犯関係の解消(共犯からの離脱)
 X・Y・Zふぁ共同実行の意思に基づいて、共同実行を開始した後、Zが途中から離脱する
 X・Y・Zが強盗を共謀→強盗の予備行為→★強盗の実行の着手→強盗の既遂

 着手前の離脱
  ZがX・Yに離脱の意思を表示し、X・Yがそれを了承すれば、離脱。
  ただし、Zには強盗予備罪は成立(自己の意思により着手することを中止→刑43但書の準用)

 着手後の離脱
  ZがX・Yに離脱の意思を表示し、X・Yがそれを了承し、かつその後の犯行を断念した。
  3人に強盗未遂罪の共同正犯が成立
  X・Yが犯行を断念せず、継続し、既遂に至れば、Zも含めて強盗既遂罪の共同正犯

【94】共犯関係の解消1
【95】共犯関係の解消2
【96】共犯関係の解消3


(3)判例で問題になった事案(前掲判例番号参照)


(4)練習問題
 B第16問
 甲は、日頃から不仲であったAを殺害しようと決意し、Aを痛めつけるよう乙を強く説得して、ナイフを持たせて一緒にタクシーでA宅へ向かった。甲は、Aが乙に襲いかかってくるであろうと思い、乙の行為によってAが死亡すれば好都合だと考え、タクシー内で乙に対して「やられたらナイフを使え」と指示するなどし、A宅付近に到着後、乙をA宅の玄関付近に行かせ、少し離れた場所で待機していた。乙は、Aに対してみずから進んで暴行をするつもりはなかったが、対応に出たAがいきなり金属バットで殴りかかってきたため、Aの攻撃を防ぐため、とっさにナイフを取り出し、Aに重傷を負わせてもやむを得ないと思いつつ、Aの行為を阻止しようとナイフを突き出したところ、たまたまナイフが急所に刺さったため、Aは死亡した。
 甲および乙の罪責を論ぜよ。

 伊藤塾の答案構成
 論点 共謀共同正犯 共同正犯内の錯誤 共同正犯と正当防衛

 1乙の罪責
・構成要件該当性
 重傷を負わせる認識により、Aを刺殺
 傷害致死罪の構成要件該当性

・ 違法性阻却の可能性
 刑法36条の正当防衛の可能性
 急迫不正の侵害           対応に出たAがいきなり金属バットで殴りかかってきた
 自己の権利を守るため(防衛の意思) Aの攻撃を防いで、身を守るため
 やむを得ずにした行為  傷害の故意でナイフを突き出した
                   ナイフが、たまたまAの急所に刺さり、死亡した
  防衛行為の相当性あり →傷害致死罪の違法性阻却(違法ではない)
  防衛の程度を超えていた→傷害致死罪に過剰防衛(刑36②)を適用(違法性・有責性が減少)

 2甲の罪責
・甲 乙との共謀共同正犯の成立可能性
 タクシー内での「やられたらナイフを使え」と指示 事前の明示的な共謀あり
 甲 Aの死亡を予見(期待) 殺人の故意で乙と共謀 殺人罪の共同正犯

 甲と乙は共同正犯であるが、甲には殺人の故意があり、乙には傷害の故意しかない
 部分的犯罪共同説(次週以降に解説)
 甲と乙は傷害致死罪の範囲で共同正犯が成立し、
 甲には単独で殺人罪が成立(傷害致死罪と殺人罪は観念的競合の関係)

・違法性阻却の可能性 甲はAが乙に襲いかかるのを予見
 予期された不正の侵害に対して「積極的加害意思」に基づき反撃した→急迫性の否定
 刑法36は適用されない。違法性は阻却されない。

 甲の行為は違法、乙の行為は適法ないし違法性減少
 違法性とは行為の評価であり、それは各行為者の意思などとの関係で決まる相対的な概念
 甲にとって違法であっても、乙には適法である場合もある。

3結論
 甲と乙 傷害致死罪の共同正犯(刑60、205)
 乙   正当防衛による違法性阻却(刑36①)ないし過剰防衛(刑36②)
 甲   違法性阻却なし。さらに殺人罪の成立(刑199)
     傷害致死罪と殺人罪は観念的競合(刑54)
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