Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

無期懲役刑が確定した罪と併合罪の関係に立つ余罪に対する死刑の可否

2017-07-17 | 旅行
 事実の概要
 被告人は、B及びCと強盗を共謀し、平成10年6月28日午後4時30分頃V₁宅に侵入し、在宅のV₂に対して暴行を加え、さらにB・Cが殺意を持ってV₂を殺害し、同人所有の現金6万円を奪い、その後V₁の帰宅を待ち、帰宅したV₁に対して被告人が単独またはB・Cと共にV₁を殺害し、同人所有の金庫1個等を奪った(強盗殺人・甲事件)。また、被告人は、Bと強盗を共謀し、平成18年7月20日午後零時20分頃V₃方に侵入し、単独で、又はBと共謀して、殺意をもってV₃を殺害し、同人所有の現金2万5千円等を強取し、加療56日を要する傷害を負わせた(強盗殺人未遂・乙事件)。さらに被告人は、平成19年8月24日、2名の共犯者と共謀し被害者1名を殺害し、金員を強取した(強盗殺人・丙事件〔闇サイト殺人事件〕)。丙事件は、平成24年7月18日、最高裁の上告棄却の決定により、無期懲役が確定した。甲・乙の2件の事件は、この確定裁判を経た丙事件の「事後的併合罪」(刑45後段)として起訴され、甲事件の刑種としては死刑が、乙事件の刑種としては無期懲役が選択され、甲事件の刑である死刑が被告人に言い渡された(刑46①)。

 被告人が控訴したが、平成28年11月8日、名古屋高裁は控訴を棄却した。その後、被告人が上告。
[名古屋地判平成27・12・15判時2327号107頁(有罪・控訴・控訴棄却・上告)] 

 争点
 無期懲役刑が確定した犯罪と併合罪の関係に立つ余罪に対する死刑の可否。

 裁判所の判断
 各事件を総合すると、特に、2名の生命を奪い、1名の生命を脅かしたという結果が極めて重大である上、いずれも、殺害の計画性こそ認められないものの、偶発的にではなく、強盗を遂行するために冷徹に各殺害行為に及んだといえるのであって、これらを繰り返した点で被告人の生命軽視の態度は甚だしい。本件各犯行の犯情は誠に重く、特に酌量すべき事情がない限り、死刑を選択することも止むを得ないというべきである。

 被告人は、甲・乙の事件について事実を否認し、客観的事実に反する不合理な弁解をし、いまだに自身の罪に向き合わず、反省は深まっていない。……また、現在受刑中の刑による作業報奨金として得た合計3万円や今後得られる作業報奨金を被害弁償金に充てると述べており、被害者らに対し謝罪の念を持ち始めたことがうかがわれるが、上記の反省の程度に鑑みれば、そのことを評価するにも限度があり、ましてやその責任の重大さからすれば、この点が刑の選択に影響するとは到底考えられない。そのほか、本件犯行までに前科がなかったことなどを入れても、死刑の選択をためらわせる特に酌量すべき事情はない。

 解説
 確定裁判を経ていない2個以上の罪は、併合罪とされ(刑45前段)、この併合罪のうちの1個の罪について死刑に処するときは、他の刑は科されない(刑46①)。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り併合罪となり(刑45後段)、併合罪のうち、まだ確定裁判を経ていない余罪については、更に処断される(刑50)。その処断方法を定めた明確な規定はないが、併合罪を構成する全ての罪がかりに同時審判されていたならば判断されたであろう刑(統一刑)を念頭に置きながら、確定裁判の罪の刑との合計が統一刑と同一または同等になるように、余罪の量刑を判断する追加刑主義がとられている。

 本件の甲および乙の事件は、いずれも確定裁判を経ていないので併合罪の関係に立つ。甲事件と乙事件を比較して、犯情の重い方の甲事件について死刑に処すときは、乙事件の無期懲役は科されない。ただし、甲・乙の事件は、無期懲役刑が確定した丙事件と併合罪の関係に立つので、その量刑は追加刑主義に基づいて判断されることになる。同時審判を想定した場合、どのような統一刑が念頭に置かれるかは断定できないが、かりに死刑が想定される場合、丙事件に対する無期懲役刑が確定し、執行中に、余罪である甲・乙の事件に対して死刑を選択できるかどうかは明らかではない。ただし、判例は一般的にそれを肯定している(最3小決平24・12・17裁判集刑事309号213頁)。

 併合罪について2個以上の裁判があったときは、その刑は併せて執行される(刑51①)。確定裁判の執行中の刑が有期刑であり、余罪の刑も有期刑であるならば、その執行の調整方法について問題はない(刑52②)。しかし、確定裁判の刑が無期刑であり、余罪の刑が有期刑、無期刑、死刑の場合、問題が生ずる。余罪の刑が有期刑または無期刑であるならば、その執行を除外し、すでに確定している無期刑を執行するだけでよいが(刑51①但書)、余罪の刑が死刑の場合、執行すべきは無期刑ではなく、死刑になる。そうすると、無期刑の執行を停止して、死刑の執行手続に入ることになる。しかし、そのような死刑の執行は、本件のように無期懲役刑が3年間執行されている事案では、同時審判を想定した場合の死刑を超えてしまう。それが追加刑主義の趣旨に合致するか、疑問である。
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