Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2017年度刑法Ⅰ(第15回)基本レジュメ

2017-07-17 | 日記
 第15回 罪数論――罪数と量刑
(1)罪数と量刑
1犯罪の規定形式の一般的特徴
 他人の財物の窃取→1年以上10年以下の懲役又は1万円以上50万円以下1万円以上の罰金

 犯罪行為の特徴 財物に対する他人の占有を侵害し、それを自己の支配領域内に移転する
 法定刑の特徴  懲役刑か罰金かの選択刑→懲役が相当であれば、……。罰金が相当であれば……。

 ある場所で、一定の時間帯において、特定の被害者に財物窃取にあたる行為を1回行った場合

 単一の場所で、同じ時間帯において、同一の被害者に財物窃取にあたる行為を複数回行なった場合?



2成立する犯罪の個数の計算方法
 個数に応じて刑罰の量が増加(法定刑を基礎→その加重を経て→処断刑の枠を割り出す)



(2)一罪
1単純一罪
 1個の行為によって、1個の犯罪が行われた場合

 事実発生 XはAの上着のポケットから財布を取った
 事実認定 財物窃取にあたる行為が1回行われた
 法的評価 窃盗罪にあたる1個の行為が行われた→窃盗罪の法定刑で処断する



2包括一罪
 外形的には数個の行為によって、特定の被害者に対して、数個の犯罪が行われたが、それらを包括して1個の犯罪として認定される場合


・接続犯
 同一の数個の行為が時間的・場所的に接続して行われた場合

 事実 Xは同一の場所・時間帯においてA所有の倉庫から商品を3回に分けて取った
 認定 財物窃取にあたる行為が3回行われた
 評価 窃盗罪にあたる1個の行為が行われた→窃盗罪の法定刑で処断する
    同種の行為が、近接・接続した時間的・場所的な関係において、単一の被害者に行われた

【99】接続犯 単一の被害者に対して、同じ場所で、同じ時間帯に、同一の行為を3回行った



・吸収一罪
 異なる数個の行為が、特定の被害者に対して、時間的・場所的に近接して行われ、それぞれが異なる法益を侵害し、その結果として重い犯罪と軽い犯罪が行われたが、軽い犯罪が重い犯罪に吸収して認定され、1個の重い犯罪のみ成立する場合

 事実 XがメガネをかけたAの顔面を数回殴打した。顔は傷つき、メガネは破損した。
 認定 Xは傷害罪と器物損壊罪にあたる行為を行った。
 評価 傷害罪にあたる1個の行為が行われた(軽い罪の器物損壊罪は重い罪の傷害罪に吸収される)
    →傷害罪の法定刑で処断する



・その他の形態
 大阪市等の路上などで不特定・多数の通行人から街頭募金の名目で金銭を詐取した
 複数の被害者に対して、異なる場所・時間帯において、詐欺罪にあたる行為を複数回行われた

 時間的・場所的に異なる複数の行為が、異なる被害者に対して行われ、複数の犯罪が行われたが、成立する犯罪としては同一である場合

【101】街頭募金詐欺
 一定の期間にわたって、異なる場所で、不特定・多数の被害者に対して、同種の行為を行った


(2)科刑上一罪
1観念的競合
 刑法54前段 1個の行為が複数の罪にあたる場合

 Xは米国大使館が掲揚する国旗を破った→器物損壊罪(261)と外国国章損壊罪(189)
 →その最も重い刑により処断する(刑54)
  器物損壊罪   (1月以上)3年以下の懲役又は(1万円以上)30万円以下の罰金
  外国国章損壊罪 (1月以上)2年以下の懲役又は(1万円以上)20万円以下の懲役


【103】観念的競合ではなく、併合罪と認定された事案
 酒気帯び運転中に事故を起こし(酒気帯び運転罪)、歩行者を負傷させた(過失運転致傷罪)


【104】併合罪ではなく、観念的競合と認定された事案
 交通事故後、救護せずに走り去り(不救護)、警察にも事故を報告しなかった(不報告)


【105】「かすがい」理論
 他人の住居に侵入し(1個の住居侵入行為)、その場で3人を殺害した(3個の殺人罪)
 住居侵入罪と3個の殺人罪は、牽連犯の関係
 3個の殺人罪は、それ自体として併合罪の関係にあるが、
 それらが1個の住居侵入と牽連犯の関係にある場合、
 3個の殺人罪は観念的競合の関係にあると解される。



2牽連犯
 刑法54後段 犯罪の手段もしくは結果である行為が他の罪にあたる場合

 Xは人が看守する墓地に侵入し、Aのお墓を破壊→建造物侵入罪(130)と墳墓発掘罪(189)
 →その最も重い刑により処断する(刑54)
  建造物侵入罪 (1月以上)3年以下の懲役又は(1万円以上)10万円以下の罰金
  墳墓発掘罪  (1月以上)2年以下の懲役


【102】牽連犯ではなく、併合罪と認定された事案
 監禁(監禁致傷)と恐喝の関係


3処断刑
 その最も重い罪
 法定刑の懲役刑の長期と短期、罰金刑の多額と寡額を比較する



(3)併合罪
1刑法45条前段 同時的併合罪
 確定裁判を経ていない2個以上の犯罪


・有期刑の罪の場合
 X1は1月に京都で詐欺(A1事件)を、5月に大阪で遺失物横領罪(B1事件)を行い、逮捕。 京都の詐欺は京都地裁で、大阪の遺失物横領罪は大阪地裁で?


 まだ裁判にかかっていない複数の罪については、一か所の裁判所で併合審理(同時審判)する
 そのように併合審理される複数の罪を「併合罪」という
 大阪地裁 詐欺罪と遺失物横領罪の2罪からなる併合罪につき、主文で1個の刑を言い渡す。
 刑法47 重い罪の法定刑の長期に、その二分の一を加えた者が処断刑の長期になる
      ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない
 詐欺罪(245)    (1月以上)10年以下の懲役
 遺失物横領罪(254) (1月以上)1年以下の懲役又は(1万円以上)10万円以下の罰金
              若しくは科料(千円以上、1万円未満)
 →処断刑は?




 X2は1月に京都で傷害致死(A2事件)を行い、5月に大阪で傷害罪(B2事件)を行った。
 傷害致死罪(205) 3年以上(20年以下)の有期懲役(1月以上)10年以下の懲役
 傷害罪(204)  (1年以上)15年以下の懲役又は(1万円以上)50万円以下の罰金

 有期懲役の法定刑の上限20年(12)、有期懲役を併合加重した処断刑の最上限30年(14②)

 →処断刑は?



・死刑・無期刑の場合
 X3は1月に京都で強盗殺人(A3事件)を行い、5月に大阪で傷害致死(B3事件)を行った。
 強盗殺人罪(240) 死刑または無期懲役
 傷害致死罪(205) 3年以上(20年以下)の有期懲役(1月以上)10年以下の懲役


 X4は1月に京都で強盗致傷(A4事件)を行い、5月に大阪で傷害致死(B4事件)を行った。
 強盗致傷罪(240) 無期または6年以上(20年以下)の懲役
 傷害致死罪(205) 3年以上(20年以下)の有期懲役(1月以上)10年以下の懲役


 刑法47条? 併合罪の各罪の刑の長期が有期懲役の場合の加重方法を定めている
 併合罪のうちの重い罪の刑が死刑・無期懲役の場合は?→刑法46条



2刑法45条後段 事後的併合罪
 確定裁判を経た罪と確定裁判を経ていない罪があり、確定裁判を経ていない罪が確定裁判を経た罪の裁判の前に行なわれていた場合、この二つの罪は併合罪として扱われる。そして、確定裁判を経ていない罪については、さらに処断される。


 Xは上記のようにA罪とB罪を行った。そしてB罪で逮捕され、裁判にかけられ、有期懲役が確定。
 その後、受刑中にA罪で逮捕、起訴された。


 刑法50条 併合罪(A事件とB事件)のうち確定裁判を経ていない余罪(A事件)をさらに処断。


 余罪(A事件)の処断方法 追加刑主義
 A事件とB事件を同時審判した場合の「統一刑」を想定し、それと同一または同等になるように、
 確定裁判を経たB事件の刑にA事件の刑を追加する方法


【100】包括一罪ではなく、併合罪と認定された事案
 窃盗の常習性に起因する複数の異なる行為(日時も場所も異なる)の関係


【106】共犯と罪数
 1個の幇助行為を行ったところ、正犯が2個の行為を行った(A1罪とA2罪の併合罪)
 A1罪の幇助とA2罪の幇助は、併合罪の関係にある。


(4)数罪
 X5は1月に京都で傷害罪(A5事件)を行った。5月に大阪で窃盗罪(B5事件)を行った。B5事件で逮捕、起訴、有罪が確定した。釈放後に、12月に奈良で傷害致死罪(C5事件)を行い、逮捕された。

 A5事件、B5事件、C5事件の関係は?
 B5が行われた時点では、A5とB5は確定裁判を経ていないので併合罪。その後、B5だけ先に裁判にかかったので、A5はB5の事後的併合罪になる。C5は、B5の確定裁判後の犯罪なので、B5と併合罪の関係はない。従って、A5とC5は、併合罪の関係にはない。


 A5とC5は、単一の裁判所で同時審判されるが、主文は各々の罪について書かれる(2個の主文)。そして、それぞれについて量刑判断され、併せて執行される。その場合、併合罪に適用される刑法47条の有期懲役の加重の上限(30年)は、併合罪ではないA5とC5には適用されない。したがって、30年を超えることが許される(A5は傷害罪の上限15年まで科刑可能。C5は傷害致死罪の上限20年まで科刑可能。合計して35年まで科刑可能)。
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