Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2017年度刑法Ⅰ(第14回)基本レジュメ

2017-07-11 | 日記
 第14回 共犯④ 共犯(問題21 22)判例 91、92、93、97、98、81
(1)身分犯と共犯
1刑法の役割と犯罪の一般的形態
 刑法→犯罪と刑罰に関する法律
    犯罪に対して刑罰を科すことで、
    犯罪から個人・社会・国家の利益(法益)を保護する

 犯罪→客観的に存在する法益を侵害したこと(構成要件該当の違法行為)
    その行為を行ったことの責任(有責性)

 誰もが被害者になりうる。また誰もが加害者にもなりうる。

2犯罪の特殊的形態――身分犯
・一定の特徴や属性を備えている行為者にしか侵害できない法益がある
 収賄罪 公務員が職務に関して金銭などの利益を受け取る行為
  「公務の中立性」が歪められているのではないかと一般国民が疑念を抱くおそれがある
 非公務員が職務に関連して利益を収受→それが公務ではない以上、公務の中立性に影響は及ばない
 →構成的身分犯=真正身分犯

・誰によっても侵害可能な法益を、一定の特徴や属性を備えている行為者が侵害した場合、
 その刑罰が加重・減軽される(とくに加重類型が多い)
 単純遺棄罪(刑217・基本類型)と保護責任者遺棄罪(刑218:加重類型)
 →加重的身分犯(減軽的身分犯)=不真正身分犯

・身分性
 男女の性別、内外国人の別、親族の関係、公務員・医師・弁護士などの資格
 総じて一定の犯罪行為に関する行為者の人的関係である特殊的な地位または状態

 営利目的麻薬輸入罪における「営利の目的」

3身分犯の共犯
・刑法65条1身分犯への非身分者の加功(関与)→非身分者もその罪の共同正犯・共犯
      2身分による刑の軽重→非身分には刑が加重・減軽される前の「通常の刑」が科され

・1項と2項の関係
 1項 構成的身分犯・加減的身分犯への非身分者の加功→すべて共同正犯・共犯が成立
 2項 身分による刑の軽重→非身分者には加重・減軽する前の「通常の刑」を科する
 例 公務員Xと非公務員YがXの職務に関連して共同して金銭を収受
   非公務員Yが公務員Xを教唆・幇助し、Xはその職務に関連して金銭を収受
   X・Yに刑法65条1項を適用

 例 保護責任者Xと非保護責任者YがXの実子Aを遺棄した
   非保護責任者Yが保護責任者Xを教唆・幇助し、Xが実子Aを遺棄した
   X・Yに刑法65条1項を適用し、その後Yに65条2項を適用

 以上の解釈は旧判例の立場。現在は、通説・判例ともに、
 1項 構成的身分犯への加功→すべて共同正犯・共犯が成立
 2項 加減的身分犯への加功→身分者には加重された刑を、非身分者には「通常の刑」を科す

【91】共犯と身分 営利目的麻薬輸入罪(加重的身分犯)に営利目的を持たない者が加功
          営利目的のような行為者の主観的・心理的な事情は「身分」か?

【92】共犯と身分 業務者と非業務者による公金の横領(旧判例の立場からの判断)
          業務上横領罪と単純横領罪の関係は?
          さらに遺失物横領罪との関係は?

【93】共犯と身分 窃盗犯による被害者への暴行と暴行への加功
    事後強盗罪は身分犯であるという前提→構成的身分犯か、それとも加重的身分犯か?


(2)共犯と中止犯
1未遂犯
 障碍未遂(刑43条本文)刑の任意的減軽
 中止未遂(刑43条但書)未遂犯としては障碍未遂と同じ→政策的に刑の必要的減軽・任意的免除

2既遂犯・未遂犯の共同正犯
 X・Yが強盗を共謀し、被害者に暴行を加え、金銭を強取した→強盗既遂罪の共同正犯
 X・Yが強盗を共謀し、被害者に暴行を加え、金銭を強取しなかった→強盗未遂罪の共同正犯

 暴行開始後(強盗の実行に着手した後)、財物の強取が未遂に終わった理由は?
 Xが自己の意思により、Yの財物強取を中止した→Xに43条但書の適用可能性あり

【97】共犯と中止犯


(3)必要的共犯
1犯罪の一般的形態――単独正犯と共同正犯
 犯罪構成要件に該当する行為を1人で実行する   単独正犯の形式
 犯罪構成要件に該当する行為を2人以上で実行する 共同正犯の形式(刑60)

2犯罪の特殊的形態――必要的共犯
 2人以上で実行することを前提にした犯罪構成要件
 集団犯  内乱罪(刑77)、騒擾罪(106)、凶器準備集合罪(208の2)
 これらの犯罪には共犯規定の適用は不要(集団内部で刑種と刑量に差がある)

 対向犯1 重婚罪(184)、賭博罪(185)
 これらの犯罪は相手の存在を前提としているので、共犯規定の適用は不要

 対向犯2 収賄罪(197)と贈賄罪(198)
 この犯罪は相手の存在を前提としているが、異なる犯罪が成立するので共犯規定は適用されない
 業者Xが公務員Yを唆して、わいろを提供 Y収賄罪、X贈賄罪(Y収賄の教唆は贈賄の一環)

3対向犯の一方のみが処罰され、他方は処罰されない
 わいせつ文書頒布(175) わいせつ文書を頒布・配布した人を処罰する
 わいせつ文書を受け取った人は?
 X1がY1に働きかけ、わいせつ文書を頒布させた。Y1わいせつ文書頒布罪。X1はその教唆?

 自殺関与罪・同意殺人罪(202)
 自殺希望者X2が自殺用の薬物の調達をY2に依頼した。
 X2はY2から薬物を受け取り、それを用いて自殺したが、未遂に終わった。
 Y2は自殺未遂の幇助罪。X2は?自殺未遂幇助罪の教唆罪?

 X1・X2がY1・Y2と同じ行為を(自分自身)に行なっても、
 犯罪にはならない。その行為には法益侵害性はない。
 従って、X1・X2がY1・Y2にそれを行わせても、犯罪には問われない。

 X1がY1に働きかけ、Z1にわいせつ文書を頒布させた。Y1文書頒布罪。X1はその教唆。

 X2がY2に自殺用の薬物を自殺希望者Z2に与えるよう教唆した。Z2はY2から受け取った薬物を用いて自殺したが、未遂に終わった。Y2は自殺未遂の幇助罪。X2は自殺未遂幇助罪の教唆。

【98】必要的共犯
 弁護士資格のない者Xの弁護士業務は非弁行為として処罰される。業務を依頼したYは、その教唆?


(4)予備罪の共同正犯
1予備罪
 刑法201 殺人予備罪
 Y・ZがAを殺害するために、Y・Zがその準備を行う→X殺人予備罪
 自己予備罪(自己の目的の実現のための予備罪)

 では、他人の殺人目的を実現するための予備は?
 Y・ZにはA殺害目的あり、Xにはなし。XとY・Zが共同して準備を行う→殺人予備の共同正犯?
 殺人予備罪は自己予備罪に限る。目的のないXには殺人予備罪の正犯は不成立。
 ただし、Y・Zの殺人予備罪も1個の犯罪であり、刑法62条の「正犯」であるので、
 Xは「Y・Zの殺人予備罪の共同正犯」の幇助にあたる。

 しかし、殺人予備罪にも、殺人既遂罪・殺人未遂罪と同じように構成要件が観念可能
 従って、Y・Zが殺人目的を持っていることをXが認識している場合には、
 たとえXに目的がなくても殺人予備罪の共同正犯が成立すると考えることもできる。

2刑法43条の「犯罪の実行に着手し」と刑法60条の「共同して犯罪を実行し」
 43条 実行の着手が想定されている「犯罪」は既遂類型
     着手前の(殺人)予備罪は可罰的行為であるが、43条の意味における「犯罪」ではない

 60条の「犯罪」も43条の「犯罪」と同じ意味であるならば、
 殺人予備罪の共同正犯はありえない。
 61条の「犯罪」も同じ意味ならば、教唆して殺人の予備をさせても、殺人予備罪の教唆ではない。 また、60条の「正犯」とは「犯罪」を実行した者であり、62条の「正犯」はこれと同じ意味であるなら、殺人予備財が「犯罪」でない以上、それを援助しても、殺人予備罪の幇助にはあたらない。

 ただし、殺人予備罪もまた処罰される行為、すなわち「犯罪」であり、その未遂が不処罰であっても、実行の着手を観念しうるならば、殺人予備罪の共同正犯、教唆犯、幇助犯の成立を肯定できる。

【81】殺人予備罪の共同正犯


(5)判例で問題になった事案(上記判例番号参照)


(6)練習問題
 A第21問
 暴力団組員甲は、同じ組の仲間である乙から「知り合いのAを殺したい。俺1人でやるが、心細いので協力してくれ。」と依頼された。甲は、最初は断っていたが、乙の執ような説得に根負けし、「手伝うだけならいい。」と述べ、これを承諾した。

 甲は、犯罪行為時の物音が外が漏れないように、乙が犯行現場として計画していた乙の自宅地下室の出入り口である戸の周囲に目張りをしたうえで、同地下室で待機していた。
 乙は、いざAを自宅の地下室に招きいれる段になると、地下室が汚れるのが嫌になり、その計画を変更して、訪ねてきたAを野外に連れ出して殺害した。

 後日、乙は、「知り合いのBを殺害したい。今度は俺1人では無理そうだから、一緒にやってほしい。」と甲に申し向けた。甲は、Bに恨みを持っていたので、乗り気になり、これを承諾した。
 甲および乙は、Bを巧みに誘い出し、乙の自家用車にBを乗せ、山林にたどりついた。乙は、甲にBを羽交い絞めにさせたうえで、Bを金属バットで殴打し始めた。甲は、そのせい惨な様子に驚き、にわかに恐怖心をもよおし、「それ以上はやめろ。」と乙に申し向け、Bに向かって「大丈夫か。」などと問いかけた。乙は、その態度に腹を立て、甲と口論となり、格闘の末、甲を殴打して失神せしめた。

 その後、乙は、甲を放置したまま、Bをさらに殴打し、ぐったりしたのを見届けて、現場を立ち去った。Bは、一連の暴行が原因で死亡したが、死因となった傷害が、甲の失神の前後のいずれの暴行によるものかは不明である。

 甲および乙の罪責を論ぜよ。

1乙の罪責
 Aに対する殺人罪(刑199)、Bに対する殺人罪(刑60、199)、甲に対する傷害罪(刑204)
 3つの罪の併合罪(刑45前段)


2甲の罪責
・1人では心細くて殺人を実行できない乙の申し出に応えて、殺人を手伝うと返事をし、
 犯行予定場所の物音が漏れないよう目張りをした


 乙は犯行場所を変更し、Aを屋外で殺害したので、目張り行為には幇助の物理的因果性なし
 しかし、乙の申し出に応えたことは、乙の殺人の決意を強化・維持したと評価できる
 殺人の幇助の心理的因果性あり→殺人罪の幇助犯(刑62、199))



・甲がBを羽交い絞めにした後、その凄惨さに恐怖心をいだき、中止を提案。
 しかし、乙は甲と口論になり、甲を失神させた。

 殺人の実行の着手後の共犯からの離脱の要件
 離脱を申し出て、それを共犯者が承諾すること
 共犯者の犯行の継続を阻止すること

 甲はこの2つの要件を満たしていない→離脱は認められない→殺人罪の共同正犯(刑60、199)

 *甲は乙によって失神させられた。阻止する機会を奪われた
  →乙が継続した殺人罪の犯行は、甲と共謀した殺人罪とは異なるもの→離脱を肯定できる





 A第22問
 市立病院の医師甲は、折り合いの悪い義理の母Aが入院してきたので、この機会にAを殺害しようと考えた。

 同病院では、医師が看護師長に治療計画を指示し、それを受けた看護師長が各担当の看護師にこれをそのまま伝達するという仕組みが採用されていた。

 甲は、看護師長乙に、毒入りであることを秘して注射器を渡し、Aに注射するよう指示した。乙は、当日気が付かなかったが、長年の経験から毒入りであることに気が付いた。

 ところが、乙は、日ごろのAのごう慢な態度から、Aに恨みをもっていたため、よい機会だと考え、Aの担当であった新米看護師Bに事情を秘して注射器を手渡し、Aに注射するよう指示した。Bは、Aの病室に向かい、乙の指示どおりに注射針をAの腕に刺し、薬剤を注入し始めた。

 ところが、ちょうど見舞いに来ていたAの夫で医師である丙は、Aの容態が急変したことから、毒入りであることに気付き、慌ててBを突き飛ばし、全治2か月の重傷を負わせた。Aは、すでに致死量に達する毒薬を注入されており、間もなく死亡した。

 甲、乙および丙の罪責について論ぜよ。

1乙の罪責
 乙 事情を知らない新米看護師Bを利用して、Aを殺害した。
 殺人罪の間接正犯にあたるか

 間接正犯の成立要件
 被利用者が利用者の命令に従って行動する「道具」のような存在
 被利用者には殺人などの犯罪の意思がない

 →乙 殺人罪(刑199)



2丙の罪責
 丙 Bに全治2か月の重傷を負わせた
 傷害罪の構成要件に該当(刑204)

 しかし、乙に使用されたBの行為からAの生命を救助するために行なった行為

 正当防衛の成立要件
 急迫不正の侵害    Bを利用した乙の行為はAの生命に対して侵害性
 他人の権利を守るため Aの生命を守るため
 やむを得ずにした行為 Bを突き飛ばす行為は防衛行為として相当である

 傷害罪の違法性が阻却され、無罪(刑36)


3甲の罪責
 甲 主観的に、事情を知らない乙を利用してAを殺害する殺人罪の間接正犯のつもりで、
   客観的に、甲の着手後に、乙にAの殺害を決意させ、それを実行させた殺人罪の教唆
        殺人未遂罪(間接正犯の未遂)
        殺人罪の教唆(殺人罪の間接正犯と殺人罪の教唆の構成要件の重なる範囲)
   殺人未遂と殺人罪の教唆は観念的競合の関係(刑54)


 甲 主観的に、事情を知らない乙を利用してAを殺害する殺人罪の間接正犯のつもりで、
   客観的に、甲の着手前に、乙にAの殺害を決意させ、それを実行させた殺人罪の教唆
        殺人罪の予備
        殺人罪の教唆(殺人罪の間接正犯と殺人罪の教唆の構成要件の重なる範囲)
   殺人予備罪と殺人罪の教唆は観念的競合の関係(刑54)
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