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論文)ジベレリンによるストリゴラクトン生合成制御

2017-07-18 06:01:34 | 読んだ論文備忘録

Regulation of Strigolactone Biosynthesis by Gibberellin Signaling
Ito et al. Plant Physiology (2017) 174:1250-1259.

doi:10.1104/pp.17.00301

東京大学浅見らは、ストリゴラクトン(SL)の生合成を制御する新規物質を見出すことを目的に、リン欠乏条件下にあるイネ幼苗を様々な化学物質で処理し、根から浸出するイネ内生SLである2'-epi-5-デオキシストリオール(epi-5DS)量の変化を調査した。その結果、生物活性のあるジベレリン(GA)は浸出するepi-5DS量を減少させることを見出した。また、イネ幼苗をGA生合成の阻害剤(ウニコナゾール-P、パクロブトラゾール)処理をすることで浸出epi-5DS量が増加した。GAは添加する濃度に応じて根のepi-5DS量も減少させた。さらに、GA処理はミヤコグサ根培養細胞のepi-5DS量も減少させた。これらの結果から、生物活性のあるGAはSL生産を減少させることが示唆される。イネのGA生合成変異体である「短銀坊主」は、半矮性の表現型を示し、根および根浸出液のepi-5DS量が高く、GA処理をすることでepi-5DS量は減少した。GA非感受性変異体のgid1-3 およびgid2-2 はGA処理をしてもepi-5DS量の変化は見られなかった。また、gid2-2 変異体は野生型よりもepi-5DS量が高くなっていた。イネにおけるGAシグナル伝達抑制因子SLR1の機能喪失変異体slr1-5 は恒常的にGA応答を示し、根および根浸出液からepi-5DSは検出されなかった。したがって、GAによるSL生産の制御は、GID-DELLAシグナル伝達経路によってなされていることが示唆される。SL生合成は、内生SL量による負のフィードバックによってカロテノイド酸化開裂酵素(CCD)をコードするD10D17 の発現を制御することで調節されている。SLシグナル伝達の機能喪失変異体(d3-1d14-1 )のepi-5DS量は野生型よりも高いが、GA処理をすることで根および根浸出液のepi-5DS量が減少した。したがって、SL生合成のGAによる制御経路は、D3D14 のシグナル伝達経路とは異なることが示唆される。GA処理により根におけるSL生合成酵素(OsD27、OsD10、OsD17、Os0900、Os1400)遺伝子の転写産物量は減少した。よって、GAはSL生合成遺伝子の発現量を制御することでSL生産を抑制していることが示唆される。GAによるSL生合成酵素遺伝子の発現抑制はタンパク質生合成阻害剤シクロヘキシミド(CHX)処理をすることで消失することから、この制御は新規タンパク質合成を介してなされていると思われる。「短銀坊主」は野生型(「銀坊主」)よりも矮性で分けつ数は多いが、二次分けつの芽の長さに差は見られない。「銀坊主」を合成SLのGR24で処理すると二次分けつの芽の伸長が抑制されるが、「短銀坊主」では伸長抑制は起こらなかった。GR24処理は植物体の草丈には「銀坊主」も「短銀坊主」も影響を受けなかった。よって、GAはSLによる分けつの芽の成長制御に関与していることが示唆される。GA処理をした幼苗からの根浸出液は、対照と比べてストライガ種子の発芽刺激活性が低く、GA処理をした幼苗周辺でのストライガ種子の発芽は対照の周辺よりも低くなり、ストライガとの寄生の程度も低下した。ストリゴロールで発芽を誘導したストライガとGA処理をしたイネとの間では正常に寄生が起こることから、GA処理はストライガの寄生過程には影響していないと考えられる。以上の結果から、ジベレリンはストリゴラクトン生合成遺伝子の発現を制御することでストリゴラクトン生合成を負に制御していることがわかった。さらに、ジベレリン処理はイネのストライガ感染を低減させるうることが示唆される。

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