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論文)ブラシノステロイドによる温度上昇に応答した根の伸長促進

2017-10-10 05:30:38 | 読んだ論文備忘録

Brassinosteroid signaling-dependent root responses to prolonged elevated ambient temperature
Martins et al. Nature Communications (2017) 8:309.

DOI: 10.1038/s41467-017-00355-4

温度は、植物の発芽、成長、花成、ホルモン応答、病害耐性等の様々な過程に影響を及ぼしている。フランス 先端細胞生物学第2研究所(I2BC)Vert らは、長期間温度上昇条件に晒された際の根への影響を調査した。シロイヌナズナ芽生えを21℃もしくは26℃で育成し、一次根の成長を観察したところ、26℃で育成した芽生えの根長は21℃で育成した芽生えよりも40%程度長くなっていた。この根の伸長は、細胞数の増加によるものではなく、細胞の伸長によるものであった。胚軸では、PHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4(PIF4)が直接オーキシン生合成遺伝子YUC8 やTAA1 を活性化してオーキシン量を増加させることで温度上昇による伸長を促進している。そこで、pif4yuc8taa1 の各変異体の一次根の伸長を見たところ、全ての変異体が温度上昇条件で根の伸長促進を示した。したがって、長期温度上昇条件での根の伸長にはPIF4、YUC8、TAA1によるオーキシン生合成は関与していないことが示唆される。長期温度上昇は、根でのオーキシンレポーターDR5::GFP の発現に影響を及ぼさなかった。また、オーキシン受容体の変異体であるtir1tir1/afb2 においても長期温度上昇による根の伸長が観察された。これらの結果から、長期温度上昇条件での根の伸長促進は、胚軸で観察される伸長促進とは異なるものであり、オーキシンに依存していないと考えられる。21℃と26℃で育成した芽生えの根のトランスクリプトームを比較すると、温度上昇によって2681遺伝子の発現が上昇し、2114遺伝子の発現が低下していた。発現上昇する遺伝子には生物ストレスや病害・虫害応答に関連したものが多く、発現低下した遺伝子には酸化ストレスや金属イオン応答に関するものが含まれていた。しかしながら、オーキシンに関連した遺伝子は含まれていなかった。幾つかの最近の研究で、根の成長とブラシノステロイド(BR)が関連していることが示されている。そこで、根において温度上昇で発現制御を受ける遺伝子とBRによる制御を受ける遺伝子を比較したところ、温度上昇で発現量変化する遺伝子のうちの1911はBRによっても発現制御を受けていた。また、BRシグナル伝達の下流に位置する転写因子BRASSINAZOLE RESISTANT 1(BZR1)の直接のターゲットとなっている遺伝子が1302含まれていた。BRは根の分化した細胞の伸長と分裂組織の大きさを調節することで根の成長を制御している。BR生合成が機能喪失した変異体のdet2dwf4 の芽生えは、21℃で育成すると野生型よりも根が短くなるが、温度上昇条件では野生型と同等の根の伸長促進を示した。BR受容体BRASSINOSTEROID INSENSITIVE 1(BRI1)の変異体であるbri1 も、21℃で育成すると野生型よりも根が短いが、温度上昇条件では根が通常条件の2倍近く伸長した。このbri1 変異体の根の伸長促進は、細胞伸長と細胞分裂の両方が促進されてもたらされたものであった。恒常的にBR応答を示すbes1-D 変異体は温度上昇による根の伸長促進が見られなくなっていた。同様に、恒常的にBR応答性を示すbzr1-D 変異体も温度上昇に応答した根の伸長促進が低下していた。BRシグナル伝達を負に制御しているGSK3の3重機能喪失変異体bin2/Atsk2-2/Atsk2-3 も温度上昇による根の伸長促進が低下していた。これらの結果から、BRシグナルは長期温度上昇条件に対する根の応答に負に作用していると考えられる。根の伸長は、短期間の高温処理によっても促進されるが、BRシグナルは、この伸長促進に対しても負の制御を示した。温度上昇条件で育成した植物では、BRシグナル伝達の正の制御因子であるBES1の不活性型であるリン酸化型(P-BES1)の割合が高くなっていた。また、BRシグナルの負のフィードバック制御を受けているBR生合成遺伝子のSTE1/DWF7CPD の発現量が高くなっていた。一方、BRの代謝に関与しているBAS1SOB7 の発現量は減少していた。したがって、温度上昇はBRシグナル伝達を低下させることで根の伸長を促進していることが示唆される。RNA-seq解析では、BRシグナル伝達に関与する主要な因子(BRI1BAK1BES1BZR1 )の温度上昇による転写産物量の変化は観察されなかった。そこで、BRI1タンパク質量を見たところ、温度上昇によって根でのBRI1タンパク質蓄積量が低下しており、この低下は温度上昇条件に移行した12時間後には観察された。BRI1タンパク質はポリユビキチン化されるとエンドサイトーシスによって液胞へ運ばれて分解される。ユビキチン化されない変異型BRI1タンパク質は、温度上昇条件での減少が見られず、変異型BR1を発現させたbri1 変異体は、正常なBRI1を発現させたbri1 変異体よりも温度上昇による根の伸長促進が低下した。以上の結果から、温度上昇はブラシノステロイドシグナル伝達を低下させ、このことが根の伸長促進に関与してると考えられる。

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