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論文)林床植物の避陰反応抑制

2017-04-20 19:37:30 | 読んだ論文備忘録

Molecular Profiles of Contrasting Shade Response Strategies in Wild Plants: Differential Control of Immunity and Shoot Elongation
Gommers et al. Plant Cell (2017) 29:331-344.

doi:10.1105/tpc.16.00790

植物を高密度で育成すると、光を得るために避陰反応(SAS)と呼ばれるシュートの伸長が起こる。これは周囲の植物から反射する遠赤色光を受容したフィトクロムからのシグナルが伸長を活性化することによって引き起こされる。しかしながら、このような反応は森林の下層に生える植物では見られない。林床植物は、低R:FR比の光によって誘導される茎の伸長が抑制され、弱光での光合成に適応した葉の形態や生物/非生物ストレスに対する耐性といった日陰に対する耐性を進化させてきた。しかし、避陰反応が誘導されるような光条件で日陰耐性植物はどのようにして反応を阻害しているのかは明らかではない。オランダ ユトレヒト大学Pierik らは、生息環境の異なる2種のフウロソウ属植物、ピレネーフウロ(Geranium pyrenaicum )とヒメフウロ(Geranium robertianum )の光応答を比較した。ピレネーフウロは典型的な避陰反応を示し、低R:FR光条件で葉柄が伸長するが、ヒメフウロはそのような応答を示さない。葉柄伸長の日変化を見ると、低R:FR光照射初期は両種とも葉柄の伸長が促進されるが、ヒメフウロでは低R:FR光照射を開始する時間帯に関係なく夕方~夜間になるにつれて低R:FR光照射による葉柄伸長が低下した。一方、ピレネーフウロでは、17:30および20:00に低R:FR光の照射を開始した際に夜間の葉柄伸長が抑制されたが、それ以外は時間帯に関係なく低R:FR光によって急速に葉柄伸長が誘導された。この結果をもとに、低R:FR光および対照としての白色光の照射開始2時間後と11.5時間後の葉柄先端部のトランスクリプトーム解析を行ない、成長の違いに関与する遺伝子について調査した。ピレネーフウロでは、低R:FR光照射2時間後で533のOMCL(シロイヌナズナ遺伝子のオーソログと推測される転写産物)グループが異なる制御を受け、11.5時間後では6357に増加していた。ヒメフウロでは、2時間後は1482、11.5時間後は1396の発現の異なるOMCLグループが見られた。両種間では、SASに関与すると思われる遺伝子(R/FR光シグナル伝達、R/FR光応答、避陰)の発現に差異が見られ、特に、11.5時間後の差異が顕著であった。ピレネーフウロでは、食稙者や病原体に対するジャスモン酸(JA)を介した防御において機能するOMCLグループの多くが低R:FR光照射11.5時間後に発現量を減少させていた。しかしながら、ヒメフウロでは、そのような変化は見られないか、僅かに見られるだけであった。JA処理によって発現誘導されるJASMONIC ACID RESPONSIVE3JR3 )、TRANSPARENT TESTA7TT7 )、PRODUCTION OF ANTHOCYANIN PIGMENT1PAP1 )は、同時に低R:FR光処理をすることで発現誘導が抑制されることがシロイヌナズナにおいて示されており、同様の現象がピレネーフウロにおいても観察されたが、ヒメフウロではそのような発現量変化は見られなかった。ピレネーフウロは、低R:FR光照射下で灰色かび病菌(Botrytis cinerea )に対する罹病性が高くなったが、ヒメフウロでは罹病性が低下した。したがって、両種の低R:FR光応答性の違いは病害抵抗性の差異にまで及んでいることが示唆される。低R:FR光による両種の成長の差異に関与するOMCLグループとして、ピレネーフウロでは低R:FR光照射2時間後も11.5時間後も発現量が増加しているが、ヒメフウロでは2時間後のみ発現量が増加するグループを探索した。その結果、31のOMCLグループが見出され、その中にはGIBBERELLIC ACID 20 OXIDASE2GA20OX2 )、XYLOGULUCAN ENDOTRANSGLUCOSYLASE/HYDROLASE9XTH9 )、幾つかのSMALL AUXIN REGULATED RNASAUR )といったSASに関与すると考えられる遺伝子が含まれていた。そして発現量変化する遺伝子の中からbHLH転写因子をコードするKIDARIKDR )とCatharanthus roseus receptor-like kinase(CrRLKs)ファミリーのTHESEUS1THE1 )とFERONIAFER )についてさらに解析を行った。ピレネーフウロにおいて、KDR の発現量は低R:FR光照射によって急速に大きく増加し、夜間に減少した。THE1FER の低R:FRによる発現誘導はKDR よりも遅く、増加量も少なく、夜の初めに最大となった。ヒメフウロでは、これら3遺伝子の低R:FR光照射による発現量の変化は殆ど見られなかった。KDRTHE1FER がSASの制御に関与しているかを調査するために、シロイヌナズナにおけるそれぞれの遺伝子の変異体を解析したところ、それらの変異体芽生えは低R:FR光照射下での胚軸伸長促進が低下していた。またこれらの遺伝子のアクティベーションタグ系統や過剰発現系統では低R:FR光照射に対する感受性が高くなっていた。シロイヌナズナ葉柄においてKDR は、SASのマーカー遺伝子のIAA19ATHB2 と同様に、低R:FR光照射によって発現が誘導された。以上の結果から、低R:FR光条件の異なる環境に生育する植物の成長や病害抵抗性の差異は、避陰反応を制御する転写因子の発現誘導の違いによってもたらされていると考えられる。

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