Light Inhibits COP1-Mediated Degradation of ICE Transcription Factors to Induce Stomatal Development in Arabidopsis
Lee et al. Plant Cell (2017) 29:2817-2830.
doi:10.1105/tpc.17.00371
シロイヌナズナbHLH型転写因子のInducer of CBF Expression(ICE)1/SCREAM(SCRM)とSCRM2は、気孔の発生過程全体を統御する因子として機能している。気孔の発生は、光、温度、湿度といった環境要因による影響を受けていることから、韓国 ソウル大学校のPark らは、光シグナルとICEによる気孔発生制御との関係を解析した。その結果、光はICE 遺伝子の転写には関与しないが、葉の背軸側表皮細胞でのICE1タンパク質の蓄積を促進することがわかった。光による気孔発生の誘導に対して抑制的に作用する光形態形成抑制因子のE3ユビキチンリガーゼCONSTITUTIVE PHOTOMORPHOGENIC1(COP1)は細胞内でICE1と相互作用をして、ICE1をユビキチン化することが確認された。ICEタンパク質は、植物体を暗所で育成すると減少するが、プロテアソーム阻害剤のMG132処理をすることで減少が抑制された。また、cop1 変異体ではICEタンパク質の分解が抑制された。よって、COP1はICEタンパク質のユビキチン/プロテアソーム系を介した分解に関与していると考えられる。光はCOP1によるICEタンパク質の分解を阻害した。ICE1 を過剰発現させた芽生えは、弱光条件下で気孔数が野生型よりも増加した。ice1 scrm2 二重変異体の芽生え子葉では背軸側表皮細胞での気孔発生が見られず、この二重変異はcop1 変異体の暗所での恒常的気孔発生を抑制した。MAPKKキナーゼのYODA(YDA)はCOP1の下流で作用して気孔発生を抑制しており、yda 変異体は暗所において気孔が発生する。しかし、yda 変異体は明所で気孔数が増加し、ICE1タンパク質の蓄積の光応答性も見られた。よって、YDAは気孔発生においてICEによるシグナルとは独立して機能していることが示唆される。以上の結果から、暗所においてはCOP1がICEタンパク質をユビキチン/プロテアソーム系で分解することで、気孔の発生が阻害され、明所ではCOP1によるICEタンパク質の分解が抑制されるので気孔発生が誘導されると考えられる。