Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)不定根形成の分子機構

2017-10-25 21:51:37 | 読んだ論文備忘録

Non-canonical WOX11-mediated root branching contributes to plasticity in Arabidopsis root system architecture
Sheng et al. Development (2017) 144:3126-3133.

doi:10.1242/dev.152132

植物の根系は、成長中の根から出現する側根と根以外の器官から形成される不定根から成り立っている。中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所Xu らは、以前に、シロイヌナズナ葉切片からの不定根形成にWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX11WOX11 )が関与していることを明らかにしており、今回、WOX11 による不定根形成の誘導機構について調査した。WOX11 を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナでは、葉切片、茎切片、胚軸から不定根形成が野生型よりも促進され、SRDXリプレッションドメインを付加したWOX11WOX11-SRDX )を発現させた植物では不定根形成が阻害された。WOX11 プロモーター制御下でGUSを発現する形質転換体(WOX11pro・GUS )を用いてWOX11 の発現を解析したところ、葉切片培養2日目には不定根の始原細胞での発現誘導が見られ、不定根原基(ARP)の発達につれて発現が減少していった。一方、側根形成過程ではWOX11 の発現は検出されなかった。また、この形質転換体を土壌栽培したところ、GUSシグナルが根系の多くの領域で検出された。さらに、土壌栽培したWOX11-SRDX 発現系統は、根系の二次、三次、四次根数が減少した。また、土壌栽培したWOX11 過剰発現系統は、三次、四次根数が増加していた。したがって、土壌栽培条件ではWOX11 を介した根の形成が起こっており、これは土壌からの環境シグナルに応答したものであると思われる。培地上で育成しているWOX11pro・GUS 芽生えの一次根を中程で切断すると、1日後には切断部位でGUS発現が検出された。したがって、WOX11 による根の誘導は一次根の切断によって引き起こされていると思われる。側根形成に関与しているARF7ARF19 が機能喪失したarf7 arf19 二重変異体芽生えの一次根を中程で切断すると、切断部位近傍から多くの根が形成され、切断1日目に切断部位近傍でオーキシンの蓄積およびWOX11 の発現が見られた。また、WOX11-SRDX を発現させたarf7 arf19 変異体では切断傷害による根の形成が見られなかった。したがって、一次根の切断傷害による根の誘導は、ARF7/19 を介した側根形成経路ではなく、WOX11 を介した経路によって引き起こされていることが示唆される。arf7 arf19 変異体芽生えの地上部を切断した一次根では、切断傷害による根の形成が観察されず、オーキシンの蓄積やWOX11 の発現も見られなかった。しかし、地上部切断部位からオーキシンを供給することで切断傷害による根の形成が部分的に回復した。arf7 arf19 変異体を土壌栽培すると一次根から多くの根が形成され、これにはWOX11 が関与していた。arf7 arf19 変異体は乾燥条件での一次根からの根の形成が促進され、この時にはWOX11 の発現も誘導されていた。ARF7とARF19によるLBD16 の活性化は、側根原基形成における重要なステップとなっていることが知られている。lbd16-2 機能喪失変異体は、不定根形成能力が低下しており、側根形成能力も幾分低下していた。したがって、LBD16WOX11 を介した根の形成とWOX11 を介さない根の形成の両方に関与していることが示唆される。LBD16 遺伝子のプロモーター領域にはWOX結合シスエレメント(TTAATGG)が2つ含まれており、クロマチン免疫沈降(ChIP)解析からWOX11タンパク質がLBD16 遺伝子プロモーター領域に結合することが確認された。また、WOX11はLBD16 の発現を活性化した。LBD16-GUS融合タンパク質をLBD16 プロモーター制御下で発現するコンストラクト(LBD16pro・LBD16-GUS )および2つのWOX結合部位が変異したLBD16 プロモーター制御下で発現するコンストラクト(mLBD16pro・LBD16-GUS )を導入した形質転換体の葉切片でのGUS発現を見ると、LBD16pro・LBD16-GUS 導入個体では不定根原基の形成とともにGUS活性が誘導されたが、mLBD16pro・LBD16-GUS 導入個体ではGUS活性は殆ど検出されなかった。また、LBD16pro・LBD16-GUS 導入個体でWOX11-SRDX を過剰発現させるとGUS活性は検出されなくなった。これらの結果から、WOX11は不定根原基の形成過程においてLBD16 の転写活性化因子として作用していると考えられる。一方、培地上での一次根からの側根形成過程において、LBD16pro・LBD16-GUS 導入個体、mLBD16pro・LBD16-GUS 導入個体、WOX11-SRDX を過剰発現させたLBD16pro・LBD16-GUS 導入個体ともに側根原基形成時にGUS活性が検出された。したがって、WOX11は側根形成過程においてはLBD16 の発現を制御していないことが示唆される。以上の結果から、不定根形成においてはWOX11が、側根形成においてはARF7/19がそれぞれの始原細胞でのLBD16 の発現を活性化し、原基の発達を誘導していると考えられる。したがって、不定根形成と側根形成は最初の発達過程が違っており、WOX11 は2つの根形成タイプを区別する分子マーカーとなりうると考えられる。

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 論文)フィトクロム相互作用... | トップ | 論文)イネのストリゴラクト... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

読んだ論文備忘録」カテゴリの最新記事