Arabidopsis and Tobacco SUPERMAN regulate hormone signalling and mediate cell proliferation and differentiation
Nibau et al. J Exp Bot (2011) 62:949-961.
doi: 10.1093/jxb/erq325
SUPERMAN(SUP)はzinc fingerモチーフを有する転写抑制因子で、花の発達過程において雄ずいと心皮の細胞増殖を制御している。シロイヌナズナsup 変異体の花は心皮が失われて雄ずいが増える。しかしながら、SUPによって引き起こされる細胞分裂・分化機構の詳細は明らかとなっていない。米国 マサチューセッツ大学アマースト校のCheung らは、SUP を35Sプロモーターで過剰発現させた形質転換タバコを作出し、SUP の発現量に応じて様々な形態異常を示す個体を得た。最も激しい異常を示すSUP Badは、シュートや根の成長が悪く、極端にわい化した個体となった。SUP の発現が中程度のSUP Curlyは、葉が上向きに巻き、根が太くかつ長くなって分岐が増え、草丈が低く、頂芽優勢が喪失して茂ったようになった。このような形態異常は、オーキシン量が増加した変異体のものと類似しており、SUP 過剰発現個体ではオーキシン応答プロモーターDR5 によるレポーター遺伝子GUS の発現量が増加していた。よって、SUPの作用はオーキシンシグナル伝達と関連していると考えられる。一方、SUP 過剰発現個体は、頂芽優勢が喪失したり、花序が短くなる、芽生えから複数のシュートが形成される、暗所育成芽生えの脱黄化、葉からの分裂組織の形成、若い葉が黄化するといったサイトカイニン量もしくはシグナル伝達の変化によると思われる表現型を示す。野生型タバコ芽生えを高濃度サイトカイニン条件下で育成すると根やシュートの成長が悪くなるが、これはSUP Bad芽生えの形態と類似している。SUP 過剰発現個体ではサイトカイニン誘導プロモーターARR5 によるGUS の発現がサイトカイニン処理をしない状態でも高くなっていることから、SUPはサイトカイニンに関連する過程にも関与していると考えられる。SUP Curlyの葉切片はホルモン無添加の培地に置床してもシュートと根が分化し、SUP Curlyの根組織由来の培養細胞は野生型由来の細胞よりも増殖が速かった。よって、SUP活性は細胞分裂を促進する作用があると考えられる。ただし、SUP Badの葉切片では再分化が起こらないことから、SUP活性が閾値を超えると成長が阻害されると考えられる。SUP 過剰発現個体の花は、がくや花冠が融合していなかったり、がく片が花弁化したといった異常が見られることがあった。また、2つ以上の心皮で構成された雌ずい、雄ずいのわい化や柱頭化した葯などといった雌性化した形態変化を示していた。野生型タバコにおいてもサイトカイニン処理によってがく片の花弁化を引き起こすことができることから、SUP 過剰発現はサイトカイニンに関連する過程に影響していると考えられる。以上の結果から、SUPはオーキシンとサイトカイニンによって制御されている過程を介して細胞分裂や雌性組織分化の制御を行なっていると考えられる。