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論文)アブシジン酸による根毛成長抑制

2017-04-05 22:42:02 | 読んだ論文備忘録

ABA Suppresses Root Hair Growth via the OBP4 Transcriptional Regulator
Rymen et al. Plant Physiology (2017) 173:1750-1762.

doi:10.1104/pp.16.01945

理化学研究所 環境資源科学研究センター杉本らは、シロイヌナズナの細胞増殖を制御する新規転写因子を単離することを目的に、葉と根の両方の成長過程において発現量が増加する遺伝子に着目、DNA BINDING WITH ONE FINGER(DOF)-タイプ転写因子のATDOF3/DOF5.4/OBF BINDING PROTEIN4(OBP4)について詳細な解析を行なった。OBP4は根分裂組織の細胞増殖領域の表皮細胞で発現してしており、他にも根毛や根冠で発現していた。OBP4とグルココルチコイド受容体(GR)との融合タンパク質を用いてOBP4を異所的に活性化させる解析から、OBP4は植物の成長を著しく抑制することがわかった。これは、異所的なOBP4の活性化が細胞増殖を早期に停止させ、最終的な細胞のサイズが小さくなっていることによって引き起こされており、実際に根毛細胞や成熟葉の表皮細胞は細胞が小さくなっていた。OBP4-GRを活性化させた芽生えの根端では、活性誘導12時間後で640遺伝子、24時間後で1132遺伝子の発現に変化が見られた。12時間後に発現量が変化している遺伝子の80%以上は発現が抑制されていたが、24時間後では発現が誘導された遺伝子と抑制された遺伝子がほぼ同数であった。12時間後に発現が抑制さていた遺伝子は、水輸送、根毛分化、外部刺激応答に関連するものであった。24時間後に発現抑制されていた遺伝子も12時間後と同様の遺伝子オントロジーものもが含まれており、さらに細胞壁修飾/形成、二次代謝関連のものが見出された。一方で、一部の二次代謝経路やストレス応答に関与する遺伝子はOBP4の活性化によって発現が誘導された。根毛に関するデータベースiRootHairで提示されている138の遺伝子のうち、29の根毛遺伝子の発現がOBP4-GRの活性化によって変化し、これらのうちの90%は発現が抑制されていた。OBP4によって発現が抑制された根毛遺伝子は、根毛のパターン形成や誘導といった初期過程を制御するものよりも先端成長を制御する遺伝子といった根毛形成の後期課程に関与しているものが多く含まれていた。bHLH型転写因子のROOT HAIR DEFECTIVE6(RHD6)とそのホモログのRHD6-LIKE1(RSL1)~RLS5は根毛形成の制御に関与していることが知られている。OBP4-GRの活性化は、新規タンパク質合成なしにRSL2RSL3 の発現を抑制し、OBP4はRSL2 遺伝子プロモーター領域の開始コドン300 bp上流付近に結合することが確認された。よって、OBP4は直接RSL2 プロモーターに結合して発現を制御していることが示唆される。根毛の成長はアブシジン酸(ABA)によって阻害されることが知られているが、ABA処理によってOBP4が蓄積することが顕微鏡観察によって確認された。ABA処理による根毛伸長の阻害は、OBP4-GRを活性化することによってABAの効果が見られなくなることから、OBP4はABAによる根毛伸長制御に大きく貢献していると考えられる。RSL2RSL3 の発現はABA処理によって大きく減少した。rsl2 変異体は野生型よりも根毛が短く、ABAを添加しても根毛伸長の抑制効果が殆ど見られなかった。一方、rsl3 変異体は野生型と同等のABA応答を示した。rsl4 変異体も根毛が短い表現型を示すが、根毛伸長がABA処理によって強く阻害された。したがって、ABAによる根毛成長の抑制は、大部分がRSL2 の発現抑制によるものであることが示唆される。RSL2 の発現は野生型とobp4 変異体との間で差は見られず、ABA処理による発現量の減少も同じように見られた。以上の結果から、シロイヌナズナにおけるアブシジン酸による根毛成長阻害は、OBP4を介したRSL2 の転写抑制によるものであることが示唆される。

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